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セミドキュメンタリーのような作品。それぞれの人物が陥ってしまった隘路の中で、自分自身と向き合うことで突破口を見いだしていく様はいたたまれないほど美しい…★劇評★【舞台=ハザカイキ(2024)】

 不寛容でサディスティックな今という時代をどうしようもないほど容赦なく露骨に描いているのに、ひりひりとした感触のその向こう側にある何ものをも超越した境地が垣間見える空恐ろしい作品だ。大昔から何でもありの世界だった芸能界、生き馬の目を抜くリアルな戦場にいま新たな主役としてワガモノ顔で登場してきたのが匿名という不気味な仮面をかぶったネット民たち。推しにエールを送る純粋なファンたちでも、したり顔で才能や人柄を揶揄する評論家気取りのマニアでもない。ある種無責任さと残酷さが武器の彼らに芸能界は振り回され続けているのだ。乱交パーティーの一夜を、じりじりした男と女の人間関係にフォーカスしながら赤裸々に描いた舞台そして映画の「愛の渦」などの作品で瞬く間に演劇界の若手の旗手として注目された演出家・劇作家の三浦大輔。野心的な翻訳劇でシアターコクーン初登場を果たした後、書き下ろし作第3弾となった舞台「ハザカイキ」は、芸能ゴシップを追う記者と芸能人が芸能界のスキャンダルが好きでサメのように口を開けて待っているネット民たちの海を間に挟みながら展開するセミドキュメンタリーのような作品。それぞれの人物が陥ってしまった隘路の中で、自分自身と向き合うことで突破口を見いだしていく様はいたたまれないほど美しい。(写真は舞台「ハザカイキ」とは関係ありません。単なるイメージです)。

 舞台「ハザカイキ」は2024年3月31日~4月22日に東京・新宿歌舞伎町のTHEATER MILANO-Za (東急歌舞伎町タワー6階)で、4月26日~5月6日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで上演される。
 
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★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含めた劇評の全体像は通常はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(通常は300円、本作は100円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。丸山隆平さん、勝地涼さん、恒松祐里さん、さとうほなみさん、横山由依さん、大空ゆうひさん、風間杜夫さんら俳優陣の演技あるいは身体表現についての批評、三浦大輔さんの戯曲や演出・舞台表現に対する評価などが掲載されています。場合によっては、特定のスタッフワークについて言及することもあります。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは原則として2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

 
★舞台「ハザカイキ」特集ページ(公式)

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