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欲望と闇が広がる時代に純粋に生きようとした人々の悲しくも美しい物語。目立つ浦井健治の充実ぶり…★劇評★【ミュージカル=笑う男(熊谷彩春出演回)(2022)】

 人間たちのただれた欲望と、それを取り巻く人々の心の闇が果てしなく広がる時代に、少しでも純粋に生きようとした人々の悲しくも美しい物語として2019年の日本初演から大きな評判を呼んだミュージカル「笑う男」が再演されている。大人たちに振り回されてきた主人公グウィンプレンを中止に、血のつながらない、純粋な心の絆で結びついた見世物小屋の仲間たちの物語は、あの「レ・ミゼラブル」や「ノートルダム・ド・パリ」を産み出したヴィクトル・ユゴーが階級闘争というテーゼも組み合わせて編み上げたことで、社会的にも広大なひろがりをもつ作品に結実しているが、単なる悲しみを乗り越えたグウィンプレンの自我の爆発によってひとりの人間の成長物語としても機能しており、そこを誰よりも巧みに表現している浦井健治の充実ぶりが目立つ公演となっている。Wキャストの一員としてヒロインのデアを演じた熊谷彩春もまた、目の不自由な人の繊細な動きを徹底して表現し、震えながらも確かに生きているデアの心の叫びを表現して秀逸な出来上り。浦井の演技力と溶け合う様はとても見応えがあった。演出は上田一豪。(画像はミュージカル「笑う男」とは関係ありません。イメージです)

 ミュージカル「笑う男」は2022年3月11~13日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで、3月18~28日に福岡市の博多座で上演される。それに先立ち、2月3~19日(新型コロナウイルスの陽性者が出たため初日からの一部中止期間あり)に東京・丸の内の帝国劇場で上演された東京公演はすべて終了しています。


★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも序文は無料で読めます。舞台写真はブログでのみ公開しております。

★ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。浦井健治さんや熊谷彩春さん、山口祐一郎さん、大塚千弘さん、石川禅さん、吉野圭吾さんら俳優陣の演技に対する批評、上田一豪さんの演出や舞台表現に対する批評などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

 なお、デア役がダブルキャスト、リトル・グウィンプレンがトリプルキャストであるため、さまざまな組み合わせが組まれていますが、取材機会の関係で劇評を掲載するのは、「笑う男(熊谷彩春出演回)」に限らせていただきます。また子役の方が映っている写真のご用意もございません。ご了承ください。

 この組み合わせではカバーできない「笑う男(真彩希帆出演回)」に出演されている真彩希帆さんのファンの皆さま方や関係者の方々には大変心苦しく感じております。また、リトル・グウィンプレンを演じる3人の子役のファンの方にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。人気公演のため取材機会も限られます。なにとぞご容赦ください。

 ただし、ブログのみに掲載する舞台写真に関しては、真彩さんの出演シーンの写真も掲載しています。文章では真彩さんに言及できませんが、ブログの写真でお楽しみください。


★ミュージカル「笑う男」公演情報

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