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「山の神」吉野裕子

以前、吉野氏の「蛇」という本を紹介しました。本書は、その「蛇」=祖神、という考察をさらに発展させ、山の神としての属性と山の信仰について論じています。

冒頭で、倭建命を危地に陥れた山の神が、古事記と日本書紀でそれぞれ「猪」と「蛇」であることに着目し、それぞれの「山の神」としての性質を、祭祀事例と陰陽五行の理論から紐解いています。

「蛇」同様、豊富な事例と独創的な着眼によって論を展開しつつ、吉野氏の他の著作でも見られるように、陰陽五行の理論からそれらを照らしています。

トピックとして、「アラハバキの神」についても触れられています。東日流外三郡誌という偽書のせいでおかしな属性を与えられていますが、各地で実際に信仰のあった神で、著者はハハキ(箒)神を含めた、各地の信仰を収集し、その実態について考察しています。関心のある方には一読の価値のある章かと思います。


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