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マークの大冒険 フランス革命編 | ロベスピエールとの最終決戦

前回までのあらすじ

ウェスタからアムラシュリング・オチデンタルを借りたマークとホルスは、黄金の果実を取り戻すべくロベスピエールに再び決戦を挑む。だが、果実の力は未知そのもので、戦いの勝敗は完全に賭けだった。


ロベスピエールによって日々処刑が行われていたコンコルド広場で、最終決戦が始まった。

「抜刀!」

マークが雅・改を鞘から抜いた。

マークが所有する日本刀「雅」は一度、古代ローマ編でのウェスタとの決戦で刃が折れた。雅・改は、より強度を増した状態で再び打ち直したもの。

「お前が剣を抜いたのは初めて見るな」

「2対のアムラシュリングが揃った時、黄金の果実は弱体化するというが、どうやらそれでも手加減できそうな相手じゃない。行こう、ホルス」

マークとホルスのアムラシュリングは、キラリと輝いた。すると、二人の周囲には幾つもの剣と盾が展開されていく。それぞれの剣は、ロベスピエールを目掛けて勢い良く飛んで行った。そして、次の瞬間、空間からマークとホルスの姿が消えた。飛んでいった剣とマークたちの位置が入れ替わり、二人はロベスピエールに急進する。

ロベスピエールは黄金の果実を左手に乗せ、右手で果実を撫でるように触った。黄金の果実の中から閃光を放った剣が出現し、柄を握ったロベスピエールが反撃する。マークとホルスはロベスピエールに剣を振りかざすが、全て巧みに弾かれてしまう。二人の周囲を回る剣もロベスピエールを刺突しようと飛んでいくが、まるで予知されているかのように弾かれていく。

「おそらく黄金の果実は、これまでの所有者の記憶を保存している。歴代の英雄や戦士たちが習得した剣術をコピーして使えているんだ」

「そいつは面倒だな」

「ホルス、一度離れよう!」

マークたちは後退し、ロベスピエールから距離を取った。マークは、重力の指輪で地割れを起こす。飛び散った砂が煙幕のようになった。

「今だ!」

マークは叫んで、ロベスピエールに急進する。だが、ロベスピエールから物凄い勢いの風が発せられ、マークたちは吹き飛ばされる。


「マジかよ、お見通しってわけか。弱体化しても尚、この威力。やっぱり剣術では圧倒的に不利だ!ホルス、ちょいと手荒だが、重力の指輪でこの広場にある物をありったけ飛ばして彼にぶつけよう。できれば、街を壊したくなかったが、仕方ない」

「分かった!」

マークとホルスは広場の彫刻やら石畳やら、あらゆるものを重力の指輪で引き剥がしてロベスピエールの方に飛ばしていった。四方八方から飛び交う破片がロベスピエールを襲う。破片は次々にロベスピエールの方に飛んでいき、固まって巨大な丸い塊ができた。

「やったか!」

マークは期待感のこもった声を上げ、しばし様子を見ていた。だが、直後に塊が弾け、その残骸がマークたちの方へ勢い良く飛んできた。


「やばい!!」

マークがそう言って目を瞑った瞬間だった。ホルスはマークを抱えながら、拳で地面に巨大な穴空けて瞬時に塹壕を造り、破片の衝突を間一髪で凌いだ。一瞬の出来事だった。地面の溝は数百メートルに及ぶ、ホルスの破壊的な力を思わせるものだった。

「また借りができちまった」

マークが呟いた。

「お前、今のは死んでたぞ」

「ああ、マジで危なかった。助かった」

マークは、ホルスが造った簡易的な塹壕からロベスピエールの方を覗いた。あれだけの破片が飛んできたというのにロベスピエールは無傷だった。

「全くの無傷」

マークがぼやいた。

「無傷?クソが!」

マークが無傷と言ったのを聞いたホルスは、塹壕の地面に横たわる石を握り締め、後ろ向きで座ったまま苛立って闇雲に放り投げた。

「おい!アホ!石を投げたら、ボクらが隠れてる位置がバレるだろ!」

「ああ?」

ホルスが苛立って放り投げた石のひとつがロベスピエールの肩に当たった。

「あれ?当たった!?なぜ今のを避けなかったんだ」

「そこにいたのか、マーク」

ロベスピエールは、不適な笑みを浮かべながらマークたちが隠れる塹壕にゆっくりと近づいてきた。

マークはホルスを真似て、ロベスピエールを目掛けて石を投げた。

「交わした」

マークはそう呟き、次は後ろを向いて砂利を投げ、投げた後にロベスピエールの方を見た。

「当たった!砂利の幾つかが当たってる」

「何こんな時に遊んでんだお前。気でも狂ったか?」

ホルスは、マークの奇怪な行動にさらに苛立った。

「そうか、そういうことか!分かったぞ!!やっぱりだ、こんなところに黄金の果実の抜け道があったとは!!ロベスピエールは少し先の未来を読んでいるのではなく、少し先の相手の思考を読んでいるんだ。最初の近接戦闘の感じでは、黄金の果実の力で少し先の未来が読めているのだと思っていた。でも、それなら石や砂利も予知して交わせていたはず。だからさっきホルスが当てるつもりがなく、苛立って投げた石のような思考外のものは先が読めず交わせなかった。一方、思考が読めるから相手がどこを狙っているのかが分かる。だから全て確実にボクらの打撃を退けた。重力の指輪でぶつけようとした破片も、ボクらが彼の身体に当てようと思考していたから対策を打てていた。黄金の果実は、おそらく少し先の相手の思考を読んでいる。そして、相手の思考外のものは予測できない穴がある」

「そういうことか。上出来じゃねえか、マーク」

「賭けになるが、眼を瞑ってデタラメに剣を振るったら?それは当てようと思考していない上、偶発的な攻撃となる。失敗したら、もちろんお陀仏だが、アムラシュリングの盾たちがボクらの身を守ってくれると信じるしかない」

「俺は死なない。関係ないな」

「キミらしいな」

「やってやるぜ。間違えてお前をぶった切っちまったら、すまんな」

「冗談がキツいぜ」

そうしてマークとホルスは息を合わせて塹壕から勢い良く飛び出し、アムラシュリングの力で飛ばした剣と入れ替わり、ロベスピエールに急接近した。そして、両手に剣を握り、目を瞑りながら、デタラメに勢い良く剣を振った。ロベスピエールも剣で応戦するが、先ほどのような先が読めているようなキレがなかった。すると、マークが剣先がロベスピエールの手の甲にまぐれでかすった。

「当たった?」

マークは剣先が何かに触れた手応えから目を開いた。すると、ロベスピエールが痛みで黄金の果実を地面に落としているのが見えた。

「ホルス!今だ!」

ホルスはマークの声を聞くと、その隙をつき、ロベスピエールを後ろから羽交締めにした。だが、ほんの一瞬、ロベスピエールの方が黄金の果実を拾い上げるのが早かった。


「身体ごと粉々にしてやる。供養もできないぐらいに跡形もなくな」

「できるかな?」

ロベスピエールがそう言うと、黄金の果実は眩い光を放ち、その光が彼を包んでいく。

「クソ、なんだコイツ硬いぞ。なんて力だ......!俺の怪力に抵抗してる?しかもコイツ、めちゃくちゃ熱い!」

ロベスピエールは、全身を黄金色に輝かせてホルスに抵抗した。

「マーク、今だ!とどめをさせ!このままじゃ、俺の方が先に焼き切れちまう!!」

「とどめを刺さないと……」

「おい!何でぼーっと突っ立ってる?喉を掻っ切れ、そうすれば一発で終わる」

「……できない。ボクは人を殺したことがない、怖くてできない」

「は!?ふざけるな!今になって何言ってんだ?お前のせいで大勢の人間がこれから死ぬことになるぞ!!」

「.......」

「全部お前が撒いた種だろう!お前が決着を付けろ!!」

「ボクにはできない、ボクにはやっぱり人は殺せない……」

「おい、さっきまで殺す気で戦ってたんじゃないのかよ!」

「だけど、やっぱりここでボクらが彼を殺すのは間違ってる」

「何言ってやがんだ、このクソ野郎が!!」

ホルスはロベスピエールの力に屈し、振り解かれそうだった。そんな時、マークたちの戦いを怯えながら遠くの物陰で見ていた一人の青年憲兵がいた。反ロベスピエール派の彼はマークたちの戦いに加わろうとしていたが、戦闘の激しさに恐れをなし、ずっと尻込みしていた。そんな憲兵に後ろからそっと近づき、耳元で彼の名を囁く者がいた。

「メダ......」

すると彼から先ほどの怯えた表情が消え、マークたちの方へと勢い良く走っていった。憲兵メダは銃口をロベスピエールの方に向けた。そして、弾丸をロベスピエールの頭部を目掛けて発射する。弾丸はロベスピエールに命中し、彼は血しぶきを上げながら勢い良く倒れ、動かなくなった。

マークが驚いて後ろを振り向くと、呆然と立ち尽くすメダの姿があった。そして、メダの遠く先に誰かが立ち去るのが見えた。ほんの一瞬だけ見えたその長く輝く髪の毛の後ろ姿が誰なのか、マークにはすぐに分かった。再びマークがロベスピエールの方を見ると、彼はまだ息をしていた。ロベスピエールは顎を撃ち抜かれながらも生きており、弱い呻き声を上げていた。

「なるべく史実通りに軌道修正するよう顎を撃ち抜かせたのか?」

そう呟くと、マークはロベスピエールが落とした黄金の果実に駆け寄り回収し、背負っていたリュックに入れた。

ロベスピエールは処刑される前、顎に銃創がある状態で発見された。この傷の原因は今も謎に包まれている。自害の失敗、憲兵メダによる狙撃または別の者からの襲撃の3つの支持者に分かれている。

治療の担当医が傷の状態を記録しているものの、彼を極悪人や怪物と記しており、客観的な記録とは言い難い。ロベスピエールは治療中に意識があり、黙ってずっとこちらを見ていたという。黙っていたのは顎が砕けて話せない状態ないし治療のため顎にタオルが入れられていたのだろう。記録では黙って見ていたとだけあって状況説明はされていないが、医師が彼の顎に指を入れると砕けた骨の破片が確認できたという。

ロベスピエールは顎の傷で既に致命傷を負っていたが断頭台に送られた。彼はその日に処刑される逮捕者の最後に回された。彼を公開処刑のクライマックスとしたのである。彼に憎悪を抱く人々は残酷にもロベスピエールの最愛の弟で同志のオーギュスタンを彼の前に処刑して絶望を味合わせた後に刑に至った。

「ヘタレ野郎が、舐めやがって」

ホルスがマークに嫌味を言った。

「それで、誰だコイツは?」

ホルスは魂が抜けたように無表情で立ち尽くす憲兵メダを一瞥しながら言った。メダの周囲には、青い蝶たちが舞っていた。

「こんな偶然のタイミング、あり得ないだろう。支配の女神様とやらの仕業か?マーク、お前は本当に運が良いな。運だけで生きてるようなもんだ」

「ホルス、もう行こう。黄金の果実は無事に回収した。これでボクらの目的は果たされた。ロベスピエールにとどめを刺す必要はない。彼の処遇は、これからフランス国民たちが決める」

そう言いながらマークは、倒れたロベスピエールの顎の銃創部分にリュックから出した包帯を強く巻き、止血と応急処置を施した。

「どこまでお人好しなんだよ、お前は」

ホルスは不服そうだったが、マークに従い、倒れたロベスピエールを横目にコンコルド広場をあとにした。



To Be Continued…




Shelk🦋

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