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令和のダークヒーロー“ちーちゃん”爆誕!!無意識って恐ろしい…「毒娘」現在上映中【ホラー映画を毎日観るナレーター】(489日目)

「毒娘」現在上映中(2024)
内藤瑛亮監督

◆あらすじ
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夫と娘の萌花と3人で中古の一軒家に越してきた萩乃。
家庭に恵まれなかった彼女にとって、夢に見た幸せな家庭。
しかし、ある日外出中の萩乃に萌花の悲痛な声で助けを求める電話がかかってくる。
「ショートケーキとコーラ、買ってきて」
慌てて帰宅した萩乃が目にしたのは、
荒れ果てた我が家と洋服をずたずたに切り裂かれた萌花、
そして萌花に馬乗りになって大きな鋏を握りしめた見知らぬ少女の姿だった。
その少女の名前は<ちーちゃん>。
かつてこの家に暮らしていたが、ある事件を起こして町を去ったはずだった。
彼女の存在が、一見幸せに見えた萩乃たち家族が押し隠そうとしていた「毒」を暴き出し、
悪夢のような日々の幕開けを告げる・・・。(公式より引用)
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公式サイト↓

「先生を流産させる会」や「ミスミソウ」等
その圧倒的な画の美しさや登場人物一人ひとりの繊細な心理描写、そして心にずしんとのしかかる陰鬱さで我々の心を掴んで離さない内藤瑛亮監督の最新作です。

今作のキーパーソン“ちーちゃん”のキャラクターデザインは「惡の華」等でおなじみの漫画家の押見修造先生が担当されており、今作の前日譚となる漫画『ちーちゃん』も全10話で連載されました。

現在、ヤンマガWebにて3話まで無料で公開されています↓

私はKindle版で購入させていただきました↓

こちらも言わずもがな最高でした!

もちろん読んでいなくても映画本編は十分楽しめます。なんだったら「映画が面白かったから漫画も読んでみようかな」という導入でも全然良いと思います。

鬱展開の映画や漫画が大好物な私にとって

内藤監督✕押見修造

が面白くならないわけがないと思っていたので無意識にハードルも爆上がりしておりました。しかしそのハードルを余裕で超えてくる最高の仕上がりで大満足の一作でした!

※今回は感想というよりも私が感じたことをつらつらと書いているため作り手側からしたら皆目見当違いだったりすることも大いに書いているかもしれません。
あくまで私個人の考えなので、「こいつはこういう風に感じとったんだなぁ」と思いながら読んでいただけると幸いです。

内藤監督作品は「ミスミソウ」の時のように

雪が降りしきる一面白の世界に飛び散る真っ赤な血

のように“白の中に現れる赤”が非常に美しく、この極上のコントラストが時には強引に塗りつぶしていくような美しい暴力性のようにも感じられて私は大好きです。

今作でも深瀬家の面々の関係性や人間性を表現するかのようなはっきりとしない淡い色のカーテンや壁紙、衣服などが“ちーちゃん”の赤に塗りつぶされていきます。

これが“浸食”や“覆う”という表現ともまた違っていて、やっぱり“塗りつぶす”というのが相応しいように思います。

家族、ひいては人間をあるべき姿に戻すための破壊からの再構築を表現しているのではと勝手に思っています。

そしてそれらを担っているのが“ちーちゃん”です。

伊礼姫奈さん演じる“ちーちゃん”

自分でカットしたのか前髪の一部がぱっつんになっているボサボサの長い髪、虫の死骸をアクセサリーのように身に着けた赤ジャージに赤コートを纏い、錆びた裁ちバサミを携える

という
センセーショナルなその出で立ちは確実に恐怖の対象として見られます。しかし一つ一つの行動が先述したようなスクラップアンドビルドに基づいているように感じられるため、我々視聴者は“ちーちゃん”のことを単純な悪や恐怖というよりも圧倒的な魅力とカリスマ性を兼ね備えたダークヒーローとして見ることになるのではないでしょうか。

歪な存在であるはずの“ちーちゃん”が歪みを暴力的に正していく中、私はこの作品で一番怖いものは“無意識”なのではないかと考えました。

それが一番顕著なのが萌花の父親•篤紘です。

表向きは爽やかハンサムな良き父親であり、家庭を第一に考え、萩乃の妊活にも協力的な良き夫

竹財輝之助さん演じる篤紘

しかし彼の人間性は冒頭から微妙な違和感として現れていきます。

決定権は全て自分、常に手料理を作ることを強要、妻も娘も自分の所有物、結局は暴力でねじ伏せることができると思っている等など

そして何が一番たちが悪いかって、これらを全て正当化している点です。“自分が正しい”とナチュラルに思っている人間であるため、上記のようなことも全て“無意識”でやっています。

つまりそれの何がおかしいのか理解できないんです。だから萩乃に図星をつかれると言葉ではなくすぐ手が出てしまいます。

そもそも萩乃の妊娠に関しても“自分の子どもが欲しいという恐ろしいまでの自分本位”で突き進んでいるため、萩乃に対する思いやりなど皆無です。排卵日前日には「明日は牡蠣が食べたい」とリクエストするくだりも本当に気持ち悪いです。

萌花がデザインしたセーターに関しても、何も考えてないくせに「黄色じゃなくて青の方が良い」と知った風な口を聞き、萩乃が絶対に自分に同意するとわかったうえで「青の方が良いよな」と尋ねるあたりもクソofクソです。

ご近所さんや会社の同僚たちを招待したホームパーティーでは萩乃に料理などその一切を押し付け、良いパパ感を出しながら萌花の頭をいきなり撫でたりと視聴者のヘイトは溜まっていく一方です。

個人的には、萩乃の手作りプリンをインスタ用の写真を取り終わった瞬間に雑に秒で平らげるシーンも殺意が湧くレベルでした。

これだけナチュラルなクズを演じられる竹財輝之助さんが凄すぎます。

クズっぷりを挙げだしたらきりがない篤紘ですが、そんな彼に萩乃も萌花も“無意識”に支配されています。

佐津川愛美さん演じる萩乃

家庭に恵まれなかった萩乃にとっては

衣装デザイナーの仕事は続けたい。でも自分の心に嘘をついて我慢さえすれば幸せな家庭を築けるし、子どもを産んだら家族の絆はより強固なものとなる…

と自分の本音には目を背け、無意識に篤紘に合わせにいっています。

植原星空さん演じる萌花(画像左)

そして萌花は過去の事故やトラウマが本当は篤紘によるものだと分かっているにも関わらず、その事実から目を背け、無意識に篤紘に恐怖を感じているため、偽りの家族を演じていきます。

見ていて本当に鬱々とするし、胸糞悪くなります。

しかしご安心ください!

それら全てを我らが“ちーちゃん”がぶっ壊してくれます!

こういう風に書いてみるとスカッとするお話でもあるのかもしれません。

衣装作りの最終確認でまち針が残ってないか専用の機械を用いて入念にチェックするシーンとか篤紘に頭を撫でられた時の萌花の表情とかラストシーンの“ちーちゃん”等など

全シーンの良かったところを書きたいくらいに激ハマりしました。私は確実にもう一回見に行くと思います。

ごちゃごちゃ書いてしまい大変恐縮ではありますが本当に素晴らしい映画だったので是非とも大きなスクリーンで令和のダークヒーロー“ちーちゃん”の活躍っぷりを目に焼き付けていただきたいです!!

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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