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おもに七月堂書籍から詩の紹介をしていきます。
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記事一覧

「花をささげる」(髙塚謙太郎著『sound&color』より)

庭のひろがりをゆびでひろげて みえてくる束をなぞるゆびをひらき いちめんのにおいやかなこえ…

「はじまり」(峯澤典子著『ひかりの途上で』より)

ときに火を焚き ときに花を流し 空にいる肉親に声を送る 地球という かなしい水辺に 降り立つ…

「#MeToo」(山田亮太著『誕生祭』より)

私も 自分のずるさを隠すために 見ないふりをしたことがある 私も 支配したいという思いにか…

「一本の声」より(永澤康太著『誰もいない』より)

一本の声に戻ってゆきたい あなたであり、ぼくでもあるような きみであり、きみでさえないよう…

「帰り道」(菊石朋著『ラララフラワー』より)

猫が小さく鳴いていて きっと町中のひとが その声に 耳をすましている 今は大きな音を たて…

「身体を流れる」より(海老名絢著『あかるい身体で』より)

雨が揺れる街で ビニール傘越しにビルの光が滲む 唐突な水たまりは 影の向こうに 夜景を映す …

「クリーム」(西尾勝彦著『なんだか眠いのです』より)

奈良には しかびと が います 二足歩行する 鹿のような人です もしくは 四足歩行できない 人のような鹿です わたしは今まで 数回お会いしました 一緒に お茶したこともあります  めるる  めぎゅ? と ほがらかに しゃべっていました ほんとう と うその あいだに ちょっとした 原っぱがあるように 現実 と 非現実の あいだには やわらかくて 甘い クリームが はさまっています あなたの町に クリーミーな人は いますか 西尾勝彦『なんだか眠いのです』収録 発行:七月堂

「一日」(尾形亀之助著、西尾勝彦編『カステーラのような明るい夜』より)

君は何か用が出来て来なかったのか 俺は一日中待っていた そして 夕方になったが それでも …

「水の旅」より(峯澤典子『あのとき冬の子どもたち』)

もう二度と会えないひとも 生まれてから一度もめぐり会えないひとも 同じ花の気配に変わる街ま…

「ぬりえの時間」より(神泉薫『エッセイ集 光の小箱』)

 ぬりえには、精神安定やリラックス効果があると言われているが、無心に色をぬっていると、確…

「冬のひかり」より(海老名絢『あかるい身体で』)

日の出前、午前五時五十五分 寒さに身体が縮こまると わたしの質量も減る気もする カーテンを…

「息継ぎ」より(川窪亜都『鋏と三つ編み』)

サンタクロースが当たり前になって勘違いしてはいけない 飽和したやさしさはのどを締めつけた…

無人駅(秋山洋一『忘れ潮』より)

なにを願っていたんだか よく鳴くときはよく透けた 残された虫いる無人駅 椅子の上の逆さの小…

空洞(栁川碧斗『ひかりのような』より)

いつか目を覚まし瞳には虚空があり衣が剥が れぽつねんと悲歎のみがひろがる朝靄を手繰 る肢体と辺りに留まる地面とコンクリートだ けが関係を持ち同心円状に影響を及ぼすとき の音が揺らした空気を棉に取り込んだことば はふわりふくよかに自由になりやがて総身の 肌は圧迫されたすぼんで両手に散らばるなに かを凝視するだけのことばなどが詩に呼ばれ てふたたび意味をむすぶと信じる野鳥のさえ ずりを都会にたたずむひとりの身体はかろや かに裏切りそこにある空洞を抱えしぼみゆく 接触感覚にわたしの