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唐突な自分語り


私は今、とある企業の社内教育に携わっています。

社内でのリーダーシップやスキルアップに関する研修を企画して、実際に講師として人前に立ちます。

それは奇跡のようなことです。

私は人前に立つのも、人前でしゃべるのも、意見を言うのも嫌いだったのですから。

逃げ続けた3年間

接客は好きです。
言うべき言葉・あるべき振る舞いがある程度決まっているので。

でも、講師は参加者にぶつかっていかなきゃいけません。

その場で臨機応変に参加者の質問に答えなきゃいけません。

質問に答えられなかったら、焦ります。

思っていたことと違う回答が返ってきたら、焦ります。

私は焦るのが怖く、
「なんだ、講師のくせにこんなものか」と思われるのが怖かった。

なので、人材育成の部署に来ても、のらりくらりと人前に立つのをかわし、3年ほど裏方に徹しました。

喋りたくない、人事担当者

私のポジションは人材育成ですが、

毎年採用活動の忙しい時期になると、人事担当者と一緒に就活生向けの企業説明セミナーに参加します。

そこで、複数人の就活生相手に自社の説明をしなければいけません。

自分の仕事からは全力で逃げますが、人からの協力のお願いは断れないタチなので、しぶしぶながら参加していました。

時には答えられない質問も飛んできましたし、あからさまに自社に興味が無い学生もいました。

あからさまに興味の無い学生がいることが、一番辛いです。

興味を持ってもらおうと一生懸命話しても、違う方向を見ている。
話している内容と違う資料をパラパラ見ている。

もう、パニックです。笑

でも、逃げられません。
毎回、説明会前に憂鬱になり、説明会後に凹んでいました。

そんな憂鬱サイクルを2回、2年ほど経験したときに、あることに気づきました。

喋ることがスラスラと出てくるな~

当たり前ですが、2年間も他人に自社の説明をしていたら、それなりにしゃべれるようになっていました。

そこから、
しゃべる「間」とか、
相手と視線を合わせるとか、
相手が理解していなさそうだから、もう一度繰り返そうかな、とか
興味を持っていそうだから、情報多めで話そうかな、とか

考える余裕が出てきました。

そうすると、聞き手の態度、食いつきも違います。

そこから、しゃべるのがちょっと楽しくなりました。

転機のビジネスマナー研修

今年の4月1日、入社式。
総勢50人の新入社員を前に、
初めて「ビジネスマナーの講師」を行うことになりました。

講師は私一人です。

たった5人の就活生相手にガチガチになっていた私が、その10倍の人数を相手に、しかも4時間もの研修です。

でも、講師の依頼を受けたときは、不思議と嫌な気はしませんでした。

「できるかも」と思いました。

実際リハーサルをしてみると、しゃべる言葉は出てこないわ、フラフラと動きまわるわ、カンペを読みっぱなしになるわ、さんざんでした。

なんで、できないのか?

答えは思いのほかすぐに出ました。

「前に立って、しゃべっている自分」にフォーカスが当たっているから。

私がやるべきことは、
「私を見て、聞いている参加者」にフォーカスを当てること。

かっこよく言うと、
参加者の頭の中が真っ白なキャンバスだとすると、
「伝えたいことを描いていく」イメージでした。

私が就活生相手にうまくしゃべれるようになったのは、

喋る内容を覚えたから、というのはもちろんですが、

喋る内容を覚えたことで、
「聞いている人」に意識が向くようになったから。
これが理由だと思います。

「聞き手の頭の中が今どんな状態か」に考えがいくようになると、
自然とこちらを向いてくれるようになるのです。

弱さを見せられれば、無敵

さて、実際のビジネスマナー研修では、

結果的に「弱さをみせる」研修になりました。

具体的には、読めない漢字に突っ込まれたり、

新入社員に答えを教えてもらったり…といった、ちょっと情けない結果です。

でも、みんな楽しそうでした。

入社式の初日から、みんなが私の名前を憶えて、慕ってくれたこと、すごくうれしかった。

そして、リハーサルに付き合ってもらったベテラン講師からは、

「弱さを見せる、さわやかな参加者の巻き込み」という嬉しい言葉をもらいました。

人前に立てなかった頃の、「質問に答えられなかったらどうしよう・・・」という恐怖は、無知な自分、弱い自分をさらけだしたく無かったから。

講師はしっかりしていなきゃ、という思い込みを持っていたから。

無意識的に、「弱さを見せてはいけない=聞き手は敵」と思っていました。

でも、相手がこちらを向いて一生懸命話を聞いてくれたら、
相手は「味方」です。

「わからないことは、わからない」と正直に言っていい。

「わからないことを質問してくれてありがとう」
「そんな質問が思いつくなんて、すごい」と思えるようになりました。

「弱さをみせていい」と気づいたら、急に肩の荷が降りました。

もちろん、私は社内での講師ですから、
社外講師とは、プレッシャーや心持ちは全く違うでしょう。

でも、その時でも、「相手」のことを考えた上で、しっかりやるか、ゆるめるか、決めればいいと思います。

自分の内側に目を向けていたら、いつまでも固く縮こまったままです。

言葉を届ける相手にフォーカスして、やるべきことをやる

これは自分への教訓です。


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