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2017年7月の記事一覧

日日

日日

わたしが両手いっぱいにのせている

その小さい水晶のようなものは

ひとつひとついびつだがどうにか丸さを保っている

このひとつひとつにわたしを吹き込むのだ

ふきこんだそれは透明からさまざまな色に変わり

手からこぼれ落ちて道をつくる

点々と落ちるにじいろのそれは

わたしが歩んだ場所を色あざやかに飾るのだ

しかし

色づいたそれを見ることはできなかった

色づいてこぼれ落ちるその瞬間は

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不安の種

不安の種

不安の種を食べた

苦くて甘いいびつな形

駅の階段を上っているときか

14階の屋上から右折する車を見たときか

発芽に最適な36度

チカチカひかって種が萌え

規則的な鼓動のリズムが

母親が子供の背中を優しく叩くように

細くて長い白い根を育ててく

心をしっかりにぎりしめ

じわじわじわじわ侵していく

優しく優しく締め上げて

たっぷり栄養吸い上げる

不安の種は結実し

不安の種を撒

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赤潮

死臭が吹く

プランクトンの死の臭い

腐ったそれらは深く沈み

分解され

海から酸素が奪われる

死臭が吹く

よく知る不快なその香り

海に浮かぶ死体が沈む

死臭が吹く

顔を背けるその匂い

それは

死の臭いだからか

もし死が甘いものなら

この風も甘く感じるだろうか

らいちょう

らいちょう

雪を撫で冷気をはらんだ風が吹く

足首をなで項をなでて

頭上高くに抜けてゆく

風の隙間を見つけたら

すぐさま差し込む強い日が

冷気に喜ぶ項を焼く

じりじりと

じりじりと

四肢で感じる温度差が

ここがどこかを教えている

ハイマツの影にらいちょう

頭上を気にして

ちいさい影と

共に歩む

また飽きずに一人旅に行ってきました。
らいちょうが見たかったなあという詩。
へたくそな上に

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理想のおうどん

描けずに迎える午前三時

黒鉛は擦りきれ進まない

こんな時間の来訪者

久々の友 食欲だ

おうどん食べたい

おうどんが

土鍋でクツクツ煮えている

箸で持ち上げると汁を跳ね上げ

くったりと出汁に沈んでいくような

とろとろにとろけた白ネギと

ほんのすこしの豚肉のかけら

ほんのり甘い出汁が

ふわふわと湯気を押し上げる

おうどんが食べたい

ああ食べたい

卵をひとつ落とそうか

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紫陽花

紫陽花

ざあざあと雨ばかりを運んだ

季節外れの台風が去り

おおみず飲みの紫陽花が

最後とばかりにみずを飲む

雨にとけだす地面のいろを吸い上げて

アスファルトに覆われた

地面のいろを暴露する

じつはね

地面はほとんどみどりいろ

植物たちが吸い上げた

色素をふくんだみずが

葉を茎を染め上げる

あちらの地面はむらさきいろ

こちらはももいろあおいろと

おおみず飲みの紫陽花は

地面のい

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