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桜色の本棚

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私が出会った素敵な本のこと、読書のことを綴った記事をまとめました。読者の方と本との橋渡しができたら嬉しいです。
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記事一覧

宮部みゆきさん『ソロモンの偽証』/誰かの真実、ひとつの事実。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、宮部みゆきさんの『ソロモンの偽証』を読破しました。 『ソロモンの偽証』は、たびたび映画化・ドラマ化もされている、本好きなら絶対タイトルは知っているくらい大人気の作品。 私自身、小学生の頃に文庫本発売のポスターが書店に大きく掲げられているのを見てから、「いつか読んでみたい」とずっと思っていた憧れのシリーズでした。 一步引いちゃうくらい分厚い単行本で3冊、文庫本だと6冊の超長編ですが、あえて言わせてください。 もしパラレルワールドが

人工知能の限界は~東野圭吾さん『魔女と過ごした七日間』~

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、東野圭吾さんの『魔女と過ごした七日間』を読み終えました。 元見当たり捜査員の父親を殺された中学3年生の陸真が、「魔女」を自称する不思議な女性と出会うことから、物語は始まります。 父親が隠していた秘密に驚く陸真ですが、彼女と協力して犯人を追うことに。 「魔女」こと羽原円華は、自身がもつ特異な能力と大胆な行動力を活かして、どんどん真相に近づいていきます。 「人工知能」と「DNA鑑定」について深く考えさせられる一冊です。 個人的に久

今年出会えてよかった本 5冊〜2023年〜

こんにちは。桜小路いをりです。 今日の記事は、今年出会えてよかった本たちについて。 小説や新書など、合計5冊、ぜひ最後までお付き合いください。 住野よる『腹を割ったら血が出るだけさ』 今年のはじめにご紹介した、住野よるさんの小説。 ドキッとするタイトルで避けてしまうのはもったいない……! このタイトルに嫌悪感を懐いた方にこそ、手に取っていただきたいと思う作品です。 私の愛読書のひとつである『また、同じ夢を見ていた』と地続きの世界観になっていて、痛いほど切実なストーリ

磨いていく、少しずつ。~『感性のある人が習慣にしていること』~

こんにちは。桜小路いをりです。 感性がある人って素敵だな、と思うことがよくあります。 季節の移り変わりや人の感情、身の周りの物事に敏感で、その時々で自分らしさを貫いて行動できる人。 私もそんなふうになりたい……! という想いから、とある本を手に取りました。 それが、『感性のある人が習慣にしていること』です。 この本では、「感性を養う5つの習慣」として、「観察する習慣」「整える習慣」「視点を変える習慣」「好奇心を持つ習慣」「決める習慣」の5つが紹介されています。 著

胸キュン必至の「異種恋愛マンガ」おすすめ3選

こんにちは。桜小路いをりです。 今日の記事は、私が悶え苦しむほど胸キュンした「異種恋愛マンガ」のご紹介です。 ざっくり言うと、「人間と人ならざる存在の恋物語って、キュンキュンしますよね……」という記事になっています。 どの作品も、読んでいるとキュンキュン、ニヤニヤが止まらないので、おうちで読むことをおすすめします。 ぜひ最後までお付き合いください。 *雪女の末裔と人間* 「氷属性男子とクールな同僚女子」 以前、こちらの記事でアニメをご紹介した「氷属性男子とクールな

光と影で描くもの~朝井まかてさん『眩』と「吉原格子先之図」~

こんにちは。桜小路いをりです。 私は、絵を見ることがとても好きです。 まだまだ知識は浅いので、これから美術史なども、もっと勉強してみたいなと思っています。 私が美術に興味をもつようになったきっかけ。 それは、この作品でした。 葛飾北斎の娘・葛飾応為の作品である「吉原格子先之図」。 こちらは、版画ではなく肉筆画で、光と陰を使って巧みに吉原の見世先を描いています。西洋画のような陰影を際立たせた表現が、私はとても好きです。 先日、この作品が原宿の太田記念美術館で久しぶりに

つながりゆく心の温かさ〜瀬尾まいこ『掬えば手には』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、瀬尾まいこさんの『掬えば手には』を読み終えました。 この物語の主人公の梨木くんは、勉強も運動も真ん中の順位で、「普通であること」がコンプレックスな大学1年生。 しかし、彼は中学・高校でのとある出来事から、「自分は人の心が読める能力をもっているのではないか」と感じています。 でも、その能力は、取り立てて「超能力」というほどはっきりとしたものではなく、「偶然」とか「ちょっと鋭いだけ」と言われたらそれまでのもの。 でも、そんな力を時た

「勇気」を縫い合わせて、「ときめき」で飾って。~『なんでも魔女商会』シリーズ~

こんにちは。桜小路いをりです。 私は、小さい頃から「かわいいもの」が大好きです。 ふわふわのレース、ひらりと踊るリボン、キラキラしたビーズに、ふんわり広がるスカート。 今も昔もお洋服屋さんをのぞくのが好きだし、小学生の頃は「ファッションデザイナーになりたい」と言っているときもありました。 そんな私の原点になっている絵本があります。 あんびるやすこさんの『なんでも魔女商会』シリーズです。 昨年2023年に20周年を迎えた、ロングセラーシリーズ。 小学生の頃、図書館で

太宰治『女生徒』にもらった、想いの数々。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、プロフィールの記事に「愛読書」の項目をプラスしました。 (実は、少しずつアップデートされているプロフィール記事。時折のぞいていただけると嬉しいです。) 私が愛読書として必ず挙げる本のうちのひとつが、太宰治の『女生徒』です。 高校1年生のときに出会ってから、ずっと大好き。 今年の夏の角川文庫の「カドフェス」でピックアップされていて、ちゃっかり限定カバーもお迎えしました。 『女生徒』が表題になっていますが、太宰が得意とした女性の告

暑すぎる日は、アニメ「氷属性男子とクールな同僚女子」を見る。

こんにちは。桜小路いをりです。 連日溶けそうに暑いですが、皆さま、体調など崩されていないでしょうか? 少し前に炎天下にお出かけしていたとき、友達と「暑くて溶けそうとかじゃなく、もはや溶けたいほど暑い」と話していました。 こうも暑いと、なんだか涼しくなるお話に触れたくなります。 でも、私はホラー系は苦手なので、ちょっと悩みどころ。 そんなとき、「氷属性男子とクールな同僚女子」というアニメを見つけました。 雪女の末裔で、感情的になると雪や氷を出してしまう氷室くんは、クー

お天気雨の儚さが、背中を押してくれるとき。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、オンラインで注文した本をブックオフのお店に取りに行くべく、お天気雨の中をお散歩しました。 別名、狐の嫁入り。 太陽の光を弾いた雨の雫がキラキラと輝いていて、空から水晶の粒が降ってきているみたいで。 遠くには、はっとするような鮮やかな青空が広がっていて。 幻想的な光景を眺めながら、ちょっとウキウキした気持ちで歩くことができました。 私は、お天気雨や、雨が上がってすぐの晴れが、とても好きです。 水溜まりがキラキラと光っていて。 雨

愛すべきミステリー小説〜『名探偵のままでいて』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 「このミステリーがすごい!大賞」受賞作、小西マサテルさんの『名探偵のままでいて』を読み終えました。 語彙力をすっ飛ばして書くと、ほんっとうに(!)素敵な小説でした。 古典ミステリーへの愛、ミステリーそのものへの愛が随所に溢れていて、オマージュも散りばめられていて。 古典ミステリーがお好きな方にはもちろんのこと、あまり馴染みのない(私のような)方も、すごくすごく楽しめる1冊だと思います。 この物語の探偵役は、主人公の小学校教諭・楓の祖父

絶望で咲く「何か」もある。〜『絶望名人カフカの人生論』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、カフカの『変身』と、てにをはさん提供の「25時、ナイトコードで。」の楽曲「ザムザ」の考察記事を出しました。 あれから、カフカ自身の人生についてもとても興味が湧き、早速読んだ本があります。 それが、頭木弘樹さんの『絶望名人カフカの人生論』です。 今回の記事は、この本のご紹介になります。 最初に書いておくと、いつもの私の記事とは、少し趣向が違うかもしれません。 普段は「ネガティブなことは書かない」をモットーにしているのですが、なにぶ

宝石とお客様を繋ぐのは。〜マンガ『宝石商のメイド』シリーズ〜

こんにちは。桜小路いをりです。 最近、やませちかさんの『宝石商のメイド』という漫画のシリーズにハマっています。 宝石の買い集めのためにしょっちゅう店を空ける主人に代わって、宝石店を任されているメイドさんのお話。 そのお店には、石に目がない店主が集めた、数々の珍しい宝石が並んでいます。 磨かれた「宝石」だけでなく、まだ宝石になる前の鉱物も取り揃えられており、非常に珍しい宝石店です。 メイドさんは、店にやって来るお客様の話を聴き、その人の要望や悩みに合わせて、ぴったりの石