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読書記録『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』

何年か前に友人に「阿佐ヶ谷姉妹のエッセイが面白い」とお薦めされ、そのときはなぜか「阿佐ヶ谷姉妹のエッセイが面白いわけない」と思ってスルーしていました。

時を経て先日たまたま本屋で阿佐ヶ谷姉妹のエッセイを見つけ、なぜか「阿佐ヶ谷姉妹のエッセイが面白くないわけがない」と唐突に思い、読んでみました。


結果、面白かった。悔しいくらい面白かった。

阿佐ヶ谷のアパートに二人暮らしをする40代のお笑い芸人阿佐ヶ谷姉妹。姉のエリコさんと妹のミホさんの(実の姉妹ではないのですが)、タイトル通りのほほんとした、特に何も起こらない日常を綴ったエッセイです。

何が面白かったかと。
基本的にのほほんとした文体の中に、ちょいちょいのほほんから程遠い表現が出てきます。
「近所の和菓子屋のおじさんがアウトレイジに出てくる塩見三省氏に似ている」とか。
物件探しで入った部屋の天井が低くて「拷問部屋の天井みたいにどんどん下がってきているのかしら?」とか。

のほほんとした見た目と、のほほんとした性格。それらに内包されつつも隠しきれずちょこちょこ出てしまう毒。こういう人種が一番面白い。

ちなみにエッセイの前半からお部屋探しのくだりが出てきます。阿佐ヶ谷のアパートから引っ越そうとするのですがなかなか良いお部屋が見つからない。お部屋探しエッセイと呼んでも良いくらい、そこがベースになっています。果たして良い物件は見つかるのか、みたいな。

今住んでいるお部屋がとても良いので物件探しも諦めようという雰囲気の中、エッセイのラストでは、二人が同居している隣の部屋の大学生が引っ越します。空き部屋になったその物件にエリコさんだけ移り住むという、ある意味衝撃のラストを迎えます。
完全にボケてます。エッセイ全体使ってボケてます。

ちなみにこの本の中には、エリコさんが書いた謎のオリジナル短編小説も収録されています。有馬温泉で働く女性スタッフと中年湯守さんの恋物語。読んでいる途中何度も「これは今何を読まされているんだ?」という感覚に陥りますが、とても面白かったです。

夜寝る前に読むべきエッセイ、個人的No. 1本です。

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