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報われる写真 〜『愛がなんだ』レビュー 〜

観に行こうとずっと思っていたけど、時間が作れなくて先送りになっていた映画

ついに観ることができた。

観る前からSNSや友人から「めっちゃ良かったよ」との感想が溢れ、「何も響かなかったらどうしよう…」と、少しだけ焦りもありながら観に行ったのだが、全くの杞憂だった。

最高だった。

※ここから先は若干のネタバレを含みます。

成田凌(マモル)がクズ男すぎるとか、テルちゃん尽くしすぎとか、こういう恋愛あるよね~…とかレビューは数多くあるが。

私は誰より、カメラマン 仲原青を推したい。

ーーー

彼の登場シーンは、ベッドからだった。
想い人に都合よく呼び出され、更けていく夜。

隣で人が動く気配がする。
起きてみると、隣にいたはずの女性が電話片手に窓の外を見ていた。

月夜に照らされる横顔に、見蕩れること数秒。

思い出したかのように足元のフィルムカメラを構える。

シャッターを切るたびに巻かなければならないフィルムが、やけにもどかしい。

ファインダー越しの視線に気づいたのか、振り返った彼女の口元からは笑みが零れた。

「仲原、ビール買ってきて。」

…はいっ。

ーーー

葉子にいいように使われる便利男。
「自分は今のままでいいんです」と、自信なさそうに目を落とす男。

「葉子さんの隣に居られるなら、それでいい。」

痛いほどの、自己犠牲。

自分に誇れるものが何も無いから、
自分があの人の唯一になれるわけがない。

彼の気持ちが、痛いほど伝わってきた。

”自分”が持てなかったからこそ、何も知らない第三者に、関係の歪さを伝えられた時、彼は揺れた。

「僕、葉子さんのこと好きでいるのやめようと思うんです。」

この言葉を口に出すまでに、どれほどの葛藤があったのだろう。

好きでも、言えない。
好きなのに、伝えられない。

彼が取った選択は、想い人から離れることだった。

仲原が初めて見せた"自分"の意思。

ーーー
時は流れ、彼の写真展『一瞬の夢』が開かれた。

名の通り、過去の思い出を夢として、整理するつもりだったのだろうか。

「仲原青で検索したら出てきたから。」
良い夢だったと忘れるつもりだった彼女が、目の前に現れた時の衝撃は、想像にかたくない。

キャンプで撮ったのだろう、
友人達との思い出が何枚も並ぶ中、

隅に、1枚だけ、見覚えのある部屋の写真があった。

夢として昇華するはずだった一夜を、来ると思っていなかった想い人に見つかる恥ずかしさ。

そして何より、自分の瞳の中にはいつも貴女が居たのだと。
口下手な仲原にかわって、写真は雄弁に語っていた。

葉子は、あの時と同じように笑顔で振り向く。
彼女の口からは、何が語られたのだろう。

ーーー

自分が、あの時、何を思ってあの場に居たのか。
幸か不幸か、写真は全てを残してくれる。

写真と愛が溶け合うと、こんなにも美しいんだなと。そう思った。

「愛がなんだ」制作スタッフのみなさん、
仲原青というカメラマンを生み出してくれて、本当にありがとう。

これからも、写真を撮り続けます。
彼のように、全てを捧げたいと思える一瞬のために。

…幸せになりたいっすね。

(バナー 挿絵はパンフレットから引用させて頂きました。)

サポート代は全額写真の勉強代に当てさせてもらいます…!