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自分の感情が動かなければ相手に物を言わない

相談の仕事をしていると、受け身の姿勢でただ相談者の話を聴いているだけではいけません。
受け入れられにくいことでも、相談者のためと思って言うべき時があります。
 
でもこれは、受け入れる相手にとってもそれを言う自分にとっても、エネルギーが必要です。
 
相談の仕事に限らず、様々な人間関係でこのことは言えると思います。
相手にとって重いのでなかなか言えずに躊躇する。
あるいは、安易に言ってしまい、相手が受け止められずに関係を悪くする。
 
このことについて、私には「今が相手に言うべき時だ」という基準があります。
その基準を見誤らなければ、相手や自分にとって良いタイミングで物を伝え、心に届きやすく、関係も悪くしません。
 
それはどのような基準なのかという話をします。




その基準は、「相手のためだと思って自分の感情が動くかどうか」です。
 
自分の感情が動かないと、本心から自分の言葉が出てこないものです。
そうでなければ、相手の心に響かない。
 
これは、相手のことを思って自分の感情が動く時です。
見返りを求めたり、優位に立ったり、気分が良くなったりという、自分のためではありません。
 
 
先日、職場の飲み会でこんな話がありました。
私たちの仕事は相談業務なのですが、職場の同僚からこんな質問をされたのです。
 
「小林さんって、相談では傾聴や寄り添いの姿勢ですよね。その姿勢を取り続けるんですか?」
 
以前に私が相談者と面談をしているときに何度か同席してもらったスタッフからの質問でした。
話を聴き続けるだけがダメと言っているのではなく、そのような姿勢を通している私に対するリスペクト的な意味合いで言ってくださったと解釈しています。
 
その回答として、実際には傾聴だけではなく、ここぞという時には自分の意見を相談者に伝えているという話をしました。
 
時には、それは違うと相談者に言ったり、背中を押すような言動をしたりする必要があるからです。
 
そのスタッフは継続しているセッションの一場面に同席しただけなので、私が相談者に物を言う場面は見ていないのです。
 
「それじゃあ、どういう時に言うんですか?」
とさらに聞かれました。
 
そこで「相手のことを思って自分の感情が動いた時ですよ」、という話をしたのです。
感情が動いて本心から自然に出た自分の言葉ではないと相手に響かないのです。
 
 
大事なのは、その状態になるために何をするのかということです。
 
自分の感情が動くためには、相手にコミットしなければいけません。
相手に対して自分の感情が動くような関係を作ること。
 
そのためにしていることが、私にとっては、傾聴や寄り添いなのです。
まずは相手のことを十分理解するために、話を聴いて受け止めて、関係性というベースを作ります。
相手に関心を持って、状況が良い時も悪い時も、寄り添ってつき合う。
 
その過程がとても重要です。
情が湧くまでやる。
だから1回や2回の面談では無理なのです。
 
 
一般的には、カウンセリングにおいてクライエントに感情移入しすぎないという指導を受けます。
ですので、これはあくまで私のやり方です。
 
なぜそんなことをしているのかというと、私は淡々としていて感情の起伏がないタイプだからです。
積極的に相手に関与して意見を言うタイプの人間ではありません。
 
そのような状態、相談者との距離感で何かを言っても響きにくいのです。
 
それを自覚しているので、相談の仕事をしている以上、意図的に相談者へ感情的に関与できている状態を作る必要があるのです。
 
 
私は、ひきこもりの相談業務をしていまして、親御さんからの相談も多く受けています。
親が子どもに思いや考えを言えなくなっている事例がよくあります。
 
様々な事情がありますが、1つには親が子どもに思いや考えを言えるには不十分な関係、ということがあります。
 
親として話をしなければと思っても、関係が不十分だとそれが難しい。
 
話をしたとしても、どこかから借りてきたような表面的な言葉になってしまいます。
子どもはそういうのを敏感に感じ取って見抜くものです。
本当に自分のことを思って言っているのではない、何かが伴っていないと。
 
親は子どものためを思って、感情が動き、自分の言葉で語らなければいけません。
そのためには、子どもの話を聴き、感情的に関与できている状態を作っておかなければならないのです。
 
 
自分の思いや考えを届けて相手の心を動かすには、相手のことを思って自分の感情が自然に動かなければいけません。
そのための準備は、相手に関わること。
 
 
 
今回は、自分の感情が動かなければ相手に物を言わない、という話でした。
 
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
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小林いさむ|公認心理師

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