栄養のバランスが取れると必要なカロリーは減る?

「摂取カロリー」考。
男性だと1日に2600kcal、女性で2000kcal程度は必要とされる。しかし昨今の日本人は1850kcal程度しかとれていない。これは戦後の食糧難の時代、1946年の1903kcalより少ない。飢餓に陥っても不思議ではないはずなのに、太り過ぎを気にする時代。これはいったいどういうことか?

結婚する前の一人暮らしのとき、おかずは少しでご飯は3杯飯を食べていたが、太るということはなかった。ところが結婚してからはご飯一杯しか食べないのにブクブク太った。今はご飯減らし目にしてようやく体重の増減がストップ。恐らく結婚してからの摂取カロリーは大幅に減っているのに。

結婚した途端に代謝が落ちるというのも考えにくい。おそらくは、栄養バランスが取れた結果、必要なカロリー量が減ったのではないか、と考えている。
これと似たような話が自然界にある。偏食の生き物は大食漢が多いということだ。

パンダは竹ばかり食べる偏食家。そして1日に20~30kgも竹を食べる。昆虫も「これしか食べない」偏食タイプは、1日に大量に食べる傾向があるようだ。1種類しか食べない場合、必要な栄養素をとるには、大量に食べないといけなくなるからではないか。

植物の肥料でも同様のことが。成長に必須な養分がどれか1つでも不足すれば、他の養分がたっぷり与えられていてもその不足成分に合わせた成長しかしない、という「リービッヒの最小率の法則」というのがある。もしかしたら我々動物も、最小率の法則が成り立つのかもしれない。

日本人は長らく、コメ(雑穀含む)のようなデンプン質のものを大量に食べ、おかずはちょっぴり、という食生活が主流だった。この食生活だと、もしかしたら「最小率の法則」が成立してしまい、コメから不足がちな栄養素もとらなければならない場合、大量に食べないといけなかったのではないか。

男性2600kcal、女性2000kcalという数値は、まだまだコメ中心でおかずが少なかった時代に算出した数字なのかもしれない。しかし現代人はコメをあまり食べなくなった代わり、肉をたくさん食べるようになり、脂もたくさん摂取するようになった。
https://flour-net.com/health/tour/entry-26.html

ご飯は少なめ、おかずは多めの食生活になったことで、必要な摂取カロリーが減ったのかもしれない。もちろん、昔は肉体労働が中心で、今はデスクワークが中心。昔は若い世代が多かったが、今は少子高齢化。それらが原因で、社会全体として必要なカロリーが減っているというのも事実。ただ。

戦前の、飢餓線上と言われた1946年の1903kcalよりも摂取カロリーが少ないのにほとんどの人が十分な栄養をとれているということは、やはり「様々な食材で栄養のバランスが取れると、必要なカロリーが減るのでは?」という仮説が浮上してくる。

もしこの仮説がある程度妥当な場合、食料安全保障をカロリーだけで考えるのは危険だということになる。タンパク質や脂質、野菜などから得るビタミンなどをバランスよく食べられることで、生命維持に必要なカロリー総量を減らせる可能性がある。

世界第一次大戦のドイツでは、「カブラの冬」と呼ばれる飢餓が発生し、大勢の飢え死にを招いた。このとき、家畜である豚に与えるエサがもったいない、その分を人間の食料に回し、豚は殺して食ってしまえ、となったことがある。すると。

当時は冷蔵技術もろくになかったのに一気に豚を大量に肉にしてしまったので肉の大半が腐ってしまい、無駄にしてしまった上に、人間の食事はカロリーを稼げるデンプンなどの糖質ばかりでタンパク質が不足し、栄養失調に陥り、飢餓がますます深刻化したという。

食料安全保障を考える場合、「カロリー至上主義」に陥ると危険。カロリーを稼ぐだけでなく、いかに栄養バランスを整えるか、ということが大切になる。栄養バランスさえとれれば、カロリーは少し少なめでも何とかしのげる可能性がある。

酪農や畜産が生み出しだしてくれるタンパク質源をどう確保するか、課題となる。ここで厄介なのは、現在の畜産では、穀物であるトウモロコシをエサで与えていること。牛肉1kg作るのにトウモロコシ11kg、豚肉だと6kg、鶏肉で4kgだと言われている。肉を作りだすのに、大量の穀物を消費することになる。

では、肉を食べる代わりにトウモロコシを食べたらよいのか?それで栄養バランスはとれるのか?そこは栄養学的にきちんと考えてみる必要がある。肉1kg(1400kcal程度)と穀物1kg(3700kcal程度)だと、含まれるカロリーは穀物が倍以上あって、穀物を直接食べたほうがカロリーは稼げる。ただ。

肉を食べるようになった現代日本人の方が、栄養バランスをとりやすく、必要なカロリー量も減るのだとしたら、穀物で育てた肉も必ずしも否定してよいのか、どうか。食料安全保障を考えるには、栄養バランスをどうとるか、という丁寧な視点も加える必要があるだろう。

江戸時代以前の人は1日に6合のごはん(3000kcal超)を食べていたらしい。肉体労働だったにしろ、かなりの摂取カロリー。でもそれは、栄養のバランスが悪かったことも一因にあるのかも。
https://note.com/mototchen/n/n07857537a70f

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