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予定調和



       【夫婦】

夫とはトータル20年の付き合い。
息子の女友達からは、実年齢よりも若く見えてイケメンと好評。
流石、和製トム・クルーズ顔。
私も夫の顔面偏差値のおかげで、15年ほどときめかせてもらった。

でも

長く一緒に居ると
好きとか嫌いとかを超越した存在になり、空気より空気で、居て当たり前。
たいくつで贅沢な倦怠感は、きっと誰もが通る道。


ここへ来て夫の態度が変わってきた。


        【夫】

キリンさんのように、穏やかで優しい目をした夫のハートは、日だまりのような穏やかさを佇ませているが、
面倒事を避けるという態度が私好みじゃない。 
それをハリボテと呼ぶんでしょ?
そう思ってきた。

でも

心臓を患っている犬のモシャの件で変化が見えた。


      【愛犬モシャ】

モシャが吠えずに、酸素ボックスで快適に過ごせるようにすることは、心臓への負担を軽くし、
モシャが苦しまないよう最後を迎えるための超絶重要な措置。
でも、酸素ボックスの湿度と温度管理がとても難しかった。

この件で家族の意見の相違が起きた時に、夫は問題解決案を提示、実行。
酸素濃度と湿度のバランスは保たれた。

酸素ボックスに入りたての頃は、私の姿が見えなくなると吠えていたけれど、そのうちに自分から酸素ボックスに入るようになった。
ここに入れば楽になると学んだ。

咳をしたり、呼吸が早くなったら
「酸素ボックスに入ろうか」と声をかけると、モシャは「うん。そうする」と目で訴える。

24時間付きっきりの介護。
深夜に吠える事もあった。
呼吸が楽になることよりも、私達の隣で寝る事を望んだ。
きっと不安だし、さみしくて側に居たかったのだろう。
その気持ちと、本当は酸素ボックスから出してはいけない現実の間で迷ったけど、モシャの願いを叶えた。

風が穏やかで暖かい日には、モシャをもこもこの洋服でくるみ、抱っこしてお散歩をした。
モシャは久しぶりの外の景色を一生懸命見たり、鼻をピクピクさせて季節の香りを嗅いでいた。

このまま過ごせるのかなと思っていたが
急激に寒くなったあの日
私のかわいいモシャは家族に見守られながら静かに自宅で息を引き取りました。

快適な環境とはいえ延命に過ぎないこの行為。
これをエゴと言う人もいるけれど飼い主としては
出来るだけ苦しまないように。と、願う。
それが彼にやってあげられる最後の愛だった。


        【私】

酸素ボックス内の湿度、温度、酸素濃度のバランスを保つ為に、酸素ボックスの構造を少し変えるという、夫の的確な判断を見て

なんだ。
自分以外のことできるんじゃん。
そう、思った。


       【予定調和】










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