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二六のガマを詠み。それを読み。そして詠む

雨晴れて南山春の雲を吐く(愚陀仏)

つい今しがた雨が上がりまして。昨日大寒でしたから、春まだ遠い氷雨でございました。只今寒うございます。春が待ち遠しいです。
うそうそ、全然待ち遠しくない。来んなって感じです。花粉症なんで。

さて、雨上がりって言ったらアレ。雨後の風物詩、カエルです。カエル、ご存じですよね? 雨後に道路で見かけるアレ、臓物を打ち撒けて、血生臭い、紙みたいに薄っぺらい生物、アレね。アレがカエルです。

雲を吐く口つきしたり蟇(一茶「おらが春」)

人に十人十色あるように、カエルにも色々あります。一茶のこの句はヒキガエルを詠んだものです。てことで今回ヒキガエル(ガマガエル)です。

「芥川龍之介は人間が河童の世界へ行く小説を書いたが、河鹿の世界というものは案外手近にあるものだ。」(梶井基次郎「交尾 その二」)

今の時代、カジカガエルに会える機会は稀だ。その代わりよく見かけるのがヒキガエルだろう。
「最近またヒキガエルが出るんだよ。」
知人宅の庭にはヒキガエルが住み着いている。その知人が「また」と言うのも、この知人宅には昔小さな池があって、その頃カエルに住み着かれて辟易したと言う。やれ、毎年卵塊の駆除が難儀でとか、石だと思って蹴り飛ばしたらヒキガエルで腰を抜かしたとか、まあ、そんなヒキガエルに対する恨み辛みを聞かされました。池を潰して、それから見なくなって安心していたが、一体どこから湧いてきたのかと不思議がっていました。
ゴメンナサイ。実はそのカエル、私が放しました。それも10年ほど前から度々、コソッと。偶々知人宅周辺で見かけたヒキガエルを、見かける度に捉まえて。だから増えてるんです。申し訳ない。

「カエルだけに帰って来たんですね」と言っておきました。白を切りましたよ勿論、はい。実際ヒキガエルは帰巣します。居なくなったなと思ったら、またある日いつの間にか戻ってます。今では3つに増えた洞穴の住処のいずれかに戻って、その中でジッとしてます。こんなかわいいのに邪険にするなんて。当然それぞれの洞穴にはそれぞれ別のヒキガエルが住んでいます。
その知人宅を訪ねるのは、知人に会うためじゃなく、ヒキガエルに会うためだから、最早。ホントかわいいんだ。情が湧いた。興が乗ってきたので一句。

雨晴れて南無三腹の腸(わた)を吐く(御陀仏)

グロ注意、始めに言えていう話でした。腸(わた)を吐く くっ付き死体 ヒキガエル、とも。

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