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書評:ラファエル・サバチニ『スカラムーシュ』

イタリア生まれの作家による復讐と冒険の活劇

今回は、私の読書史の中でも比較的珍しい、イタリア文学を取り上げる。
ラファエル・サバチニの『スカラムーシュ』という作品だ。

※厳密にはサバチニはイタリア生まれのイギリス作家だそうで、その辺のプロファイルは私の中で全くできておりません。あしからず・・。

本作は、フランス革命の胎動期を舞台とした、主人公アンドレ・ルイ・モローの冒険活劇である。根っからの道化の主人公ではあるのだが、自らの親友を殺害した上流階級の紳士への復讐を誓い、執念に燃えて活躍するという、いわゆる復讐劇でもある。

スピード感があり、展開が目紛しく、そして最後にはあっと驚かせる結末も待っており、ワクワク感と疾走感を備えた冒険譚として魅力的な作品だ。

(これを言っちゃあ蛇足なのだが、結末は中盤あたりで充分予想がつくもので、展開の驚き以上にその結末をどう登場人物達の心理に置いて折り合わせるか、ここが本作の妙なるところだと思うので、途中で興が醒める必要はないと保証する。)

私は作者のサバチニのことをほとんど知らなかったため、どのようなメッセージが本作品に込められているのかを深く読み取ることは難しかった。しかし、作者の意図に関わらず、不正に向かう高潔な精神が底流に読み取られる作品であることは間違いない。

アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』と近いものがあり、年とともに薄れ行く正義感を刺激させられる作品の1つとなっている。


さて、ここからは私の好きな読み方である「登場人物の特徴」に注目した感想を書いてみたい。

本作では、主人公のモローと仇敵のダジル伯爵が対照的な人物として描かれている。しかし私はむしろ、彼らの共通点に注目した。

自分の執念に対する忠実さ、欲しいものは絶対に手にせんとする行動力。皮肉なことにある側面においては彼らは非常に似通っているように思えるのだ。

人間の性格的特徴においても、その性格そのものに善悪があること以上に、その性格の働き方にこそ善悪が伴われることが多く見られるが、彼らの性格的親近性と振る舞いが伴う性質の対極性は、上記の恒例として見ることができ、本作品の登場人物には奥深い設定を見ることができた。

ごちゃごちゃ難しくない、痛快な冒険譚としてオススメだ。

読了難易度:★★☆☆☆
テンポの良さ:★★★★☆
痛快度:★★★★☆
トータルオススメ度:★★★☆☆

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