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お金について考える その2 「お客さんからお金をもらう意味」 | 小布施でカフェを始めるまでの話

2022年に前の記事を書いてから2年が経過し、すでにカフェをオープンしてしまいました。開業前の忙しなさは凄まじいものがあり、「ゆっくりのんびり喫茶店でも」という理想とは違い、とてつもない勢いで歳月が流れていきました。

その中でも変わらない、むしろ始めてみて、より実感する「お金をもらう意味」を考えていきます。


お金をもらうことで、品質を向上できる

当たり前のことなのですが、お客さんはお店の雰囲気とメニューを見て、飲みたいもの・食べたいもの「だけ」を選んで注文してお金を払ってくれます。逆に言うと、店の雰囲気が悪く、気にいるものがメニューになければ、最低限しか注文されません。また、それが美味しくないと、残念な顔をされたり、ちょっと残ってたり、あまりにひどいと怒られたりします。

これがとても大事で、そのハードルを乗り越えて、もう一度訪れてくれて、もう一度頼んでくれるということは「本当に気に入っているお店」の可能性が高いということになります。

お金をもらわずにいたら、どうでしょう。友達の実家で出してくれる大量すぎるのごちそうと同じで、断る事が難しいですし、あまり好きではないものも、せっかく出してくれたので、無理に食べすぎてしまいます。そして、最後に少し引きつった笑顔で「どれも美味しかったです」といって帰宅します。

個人経営の飲食店でやりがちな、こだわりを詰め込みすぎて、何が正解かわからなくなるとき、この「お金をもらってサービスを提供する」という行為は大事になると思っています。

ここでもう一つ大事なのは、「原価で提供することは、タダにしているのと一緒」ということです。「お金が目的じゃない」という理由で仕入れ価格をそのまま価格にすると、他店に比べて著しく安いため、品質ではなく安さを理由に来店するようになってしまいます。

お金をもらうことで、お客さんと気持ち良く対等になれる

カフェを開いていると、色んな方がお店に訪れてくれます。カナダから傷心旅行で観光に来た方、忙しない仕事の途中でちょっと休憩したい方、冷蔵庫が壊れたけど業者搬入できなくて落ち込んでコーヒーを飲みに来た方など。

この人たちに、私がコーヒーとケーキを無料で出したら、どうでしょう?多分感謝はしてくれますが、その時関係性は私のほうが微妙に、少しだけ「上」にならないでしょうか。そして、ちょっとだけ窮屈な思いで、その時間を過ごすのではないでしょうか。これが『カフェから時代は創られる』で指摘されている富豪のサロンが継続しなかった理由です。カフェという業態では、「注文して、お金をもらう」ことで、スッキリとした対等で継続的な関係ができるのだと思います。

親戚・親友・上司・後輩からお金をもらうべきか

ここで、私が死ぬほど悩んだのは「兼業でカフェをやっている店主が、近くに住む親戚・親しい仕事仲間・親友・後輩・学生が来店したときに、どうするべきか?」です。正直、親しい人からお金はもらいにくいですし、次も来てもらいたいので、「今日はタダでいいよ!」と心の底から言いたくなります。このとき、私はどうするべきでしょうか?

やはり現時点の答えは「心地よい関係で、継続して来てもらいたければ、親しい関係であっても、ちゃんと正規にお金をいただく」です。タダにしているやり取りを普通のお客さんが見るのも嫌ですし、訪れる側も(本当に親しい人であればあるほど)応援したいと思ってきてくれているので、タダにされるのを望んではいません。東京03のコントにもありましたが、逆にサービスされすぎると、次に来にくくなるのが常連さんの心理でもあります。

カフェ経営に興味がある学生さんが来店してくださって色々ご質問をいただいたとき、話を聞いてもらった満足感から瞬間「タダでいいですよ」が頭をよぎりました。その時、思った以上に心を鬼にして、ちゃんと請求したことを思い出します。どうしても難しい場合は、営業時間外で、プライベートなゲストとしてのおもてなしをすることで切り分けるのが大事かと思います。

最後に

これはあくまで個人経営カフェを運営する場合、無料のサービスでは目的がずれてしまうということを言っています。企業の無料サービス、行政のセーフティネットなどは、別の目的を達成されるために、しっかりと運営されていると思っていますので、否定する意図はありません。(なんでもすぐに、「XXカフェ」とつける風潮は、ちょっと少なくなってほしいですが…)

次回は、お金の話の最終回。「始めるお金、続けるお金」について書いてみたいと思います。個人経営カフェとして、初期費用・運転資金をどう考えるかです。


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