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川上未映子「黄色い家」

川上未映子さんの作品は何作か読んだことがあります。
リズムのいい文章に、濃密な内容。
川上未映子さんの書く文章は、文字で大きな絵を描いているような、
「書く」って自由でいいんだと、気付かせてくれる文章です。

そして今回読んだこの「黄色い家」はお金がテーマ。
お金。
お金は生きていくのに必要なものだということは、
一人暮らしを始めて実感しました。

お金がなければ住むことも、食べ物を食べることもできない、
友達と遊ぶこともできない、
子どもを育てることも難しい。
何かするのに、お金がかかることの方が、最近は多いように思えます。

自分の口座に入っている金額を見て、
「もっと欲しい」「どうすれば増える?」と思う人もいれば、
その日を暮らしていくのに精一杯で
自分のお金を守るのに必死な人だっています。
私自身、月収が多いというわけではないので、
自分のお金は大切。

怖いのは、そもそもお金と言うのは人が勝手に決めた価値なのに、
いつの間にかそのお金に脅かされ、追いかけられているということ。
ただの印刷物なのに、「お金」と言われれば、
その印刷物は「お札」になる。
別にお金は刃物を持っているわけでもないし、
言葉を発するわけでもない。
けれど、常に私たちの傍にいます。
それは例えばお給料日であったり、買い物をするときであったり、
少し大きな買い物をするときなんて真横にぴたりと、「お金」が私の真横にいる気がするのです。
ただの数字かと思えば、一線を越えるとそれは大きなブラックホールのような、沼に変わり、中毒性があるものにさえなりうる。

最近はキャッシュレスも進み、大金は口座に入っているのが当たり前になりました。
だからなのか、自分の目で「お金」そのものを見る機会が減り、
ますます「お金」が、姿が見えない大きなものとして思えてきます。

そしてお金には「汚い」といわれるお金もあります。
でも、お金は巡り巡って、世の中に回っているものじゃないの?生きていくのに必死で、お金の「汚い」「綺麗」を気にする暇なんてなかった。生きるのにお金が必要で、それを私は、自分で、考えて、動いて、獲得しただけ。
そんなことも訴えてくるのが今回の主人公の花でした。

読み終わった後、久しぶりに混乱をしました。
この本は「お金」に対する根本的な疑問をぶつけてくれています。
ぜひ、読んで欲しい一冊です。

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