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お茶のこと。

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ずっと続けてきた茶道から日々感じるたいせつなことたち
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文章と、茶道の神さまのはなし

文章と、茶道の神さまのはなし

ずっと、特別な人になりたかった。わたしがわたしであるためには、かけ算をしなくちゃ。と、たしか14歳のときに、問題児で荒れるど田舎の教室、お昼休み後の眠い5時間目にじんわり考えた。

みんなきらいで、みんな好きだったから、認めて欲しかった。わたしが、わたしであることを。
わたしじゃなきゃできないことを必死で探した。

自然に囲まれた過疎地域で生まれ
日光という歴史ある場所のそばで育ち
こけしみたいな

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〈3月23日〉山里の会で利休の茶杓にであう

〈3月23日〉山里の会で利休の茶杓にであう

突然お母さんから「代わりに行ってくれない?」と電話がかかってきたのは2週間ほどまえ。

なんでも、先生に特別に誘っていただいた貴重なお茶会があるのだけど、仕事が忙しくて(お父さんと喧嘩しちゃって休みを取りにくくて)どうしても行けなくなってしまったんだそうだ。

お母さんと私は、お茶の世界においてはいわゆる「先輩と後輩」。
母娘で同じお茶の先生に師事しており、若干ややこしい。でも、困ったらすぐに相談

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正しいかじゃなくて、とりあえず迷わないつよさ

正しいかじゃなくて、とりあえず迷わないつよさ

軽井沢でのお茶会が日曜日に終わって、今まで張り詰めてたものがすとんと落ちたら体調崩した。笑

終わったからやっと言える。

ほんとに辛かったーーーー!!!

意味があることだと分かってても、毎週3時間もかけて栃木までお稽古しに戻っては泣きながら東京に帰る生活をしておりました。笑

やってもやっても上手くいかなくて他の人と比べてあーあって思うことばかりだったけど、直前のお稽古で先生に言い当てられた「

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これ食うて茶飲め

これ食(く)うて茶(ちゃ)飲め。

仙厓義梵(せんがいぎぼん)という江戸時代の偉いお坊さんの書がある。

ふと、いろんなことを難しく考えてしまうときに思い出すと心がすっとする。

禅の世界で、◯は一円相(いちえんそう)と呼ばれ、とても尊いものとされている。無限の宇宙のような存在と捉えられているって前に何かで読んだ。(うろ覚えでごめんなさい)

なのに、この丸を白いおまんじゅうに見立てて
「まぁ

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「決める」ことができなくて

「決める」ことができなくて

今年最後のお稽古だというのに、お茶の先生にちくりと言われてしまった。

「しおりちゃんが”決めなかったから”こうなってしまったのよ」

その口調に厳しさはなく、居合わせた同世代の子たちにもまるで「他人事ではないからよく聞いておきなさい」と言い聞かせるかのような、苦言だった。

私たちの社中(お茶の世界で1人の先生が率いる教室単位の組織のこと)は、来年2月の中ごろに京都の桂離宮を見学する予定にな

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ただ、いまここ

ただ、いまここ

ちょうど一週間前。私はお茶の師匠とけんかをした。

師弟関係で「けんか」だなんて偉そうにも程があるのだけど、あの様子を形容するふさわしい言葉をさがそうとおもうと、やっぱりけんかだった。



実は今年になって、私は茶道の中伝(ちゅうでん)という階級のお稽古をつけてもらうようになった。

これは、本気でお茶の道を志す人にしか教えてもらえない、難しくて厳しい、それでいてかなり高尚なお点前だ。

中伝

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古いお家に引っ越しました

古いお家に引っ越しました

日本の文化を尊重しつつ、イマっぽく生きるには?ほそぼそと発信している「#ぽん活」ですが、これには自分なりの野望があります。

母がやっていたことがきっかけで、茶道を習い初めて早10年。

お茶を通して学ぶ日本人の精神性も、お茶席に出てくる素晴らしい工芸品も大好きで、感じるたび、触れるたびに心がぎゅーと締め付けられるようにときめきます。

言語化しにくいこの感情、本当に好きなものにしか生まれないよな

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朝、鉄瓶で白湯をわかす

朝、鉄瓶で白湯をわかす

せっかく和室のある家に引っ越したので、自分が好きな工芸品や日本のものをちゃんと生活にとりいれて暮らしたいって思う。

じゃないと、「日本が好き」も「茶道やってます」もなかなか薄っぺらい。

とはいっても、良質だからこそ、工芸品はそれなりに値が張る。
26歳フリーランスの収入はそんなに潤沢じゃない。

でもこんなとき、「日本の古いものが好き」ってけっこうラッキーなのだ。

実家から、宝の持ち腐れのよ

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雨の日は、雨を愛す

雨の日は、雨を愛す

金曜日のよる、映画『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)を観てきた。

樹木希林さんの最後の出演作となったことで話題だけれど、お茶を習っている自分としてはそれ以外でもとても気になっていた映画だ。

原作は森下典子さんの同名エッセイで、茶道を習い始めてからの二十五年間で見えたあれこれが綴られている。

***

「あれは貴方のための映画よ」
私よりも先に映画館で観てきたという先生は、お稽古のときそん

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