寮母


朝から怒号が響く。
「さっさと起きろ!飯が冷えるぞ!」
ガンガンガンガン鍋底をお玉で叩いてアラームにする。のそのそとそれぞれの部屋から寝ぼけ眼に恨み節を滲ませた学生たちが出てきた。
「朝早すぎでしょ!なんで五時に起こすんすか!?」
なんて、若いキャンキャンした文句が飛んでくる。
「やかましい!早寝早起き、温かいご飯!この寮ではこれは厳守!自由にやりたけりゃ出て行け!」
強面の管理人がどやして返した。
「あと佐城!部活で泥だらけにした服は他の服とちゃんと分けろって言ったろ!洗いづらいったらない!それに御手洗!夜遊びするのは良いが、服に証拠を残して出すな!次分かったら追い出すからな!」
どかどか進んでいく管理人の大声に、顔が真っ赤になったり、真っ青になったりする人たちがいたが、皆一様に、よくもまぁそんな細かい所を見ているものだと、心のうちでこぼした。
強面なのに家事一般なんでもござれで、寮生たちの尻を蹴り上げる管理人は、寮に住む者たち全員から公認の肝っ玉おかん認定されていた。
とはいえ、多少なりとも親元から離れる寂しさが、見守られているという安心感に紛れるのだから、決して嫌いになれない、なんて心は、誰しも照れくさくて、口にだすことはなかった。

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