『違国日記』ヤマシタトモコ

もっと早く会いたかった、と新しい巻を読むたびに思う。
学生時代に出会えていたら、と想像する。想像して、やっぱ、なんか違うな、と思ってやめる。書きかけたノートを消しゴムで消すみたいに。 わたしも、日記は書けない。

物語や刺繍が「かくまってくれる友人」だということばは、ピンとくる人が多いと思う。(実は「3月のライオン」より先に読んだので影響を受けた。単純なのだ。)漫画やアニメもそう。わたしも、ずっと小さな頃から、本を読んでいるときだけ、安心して学校にいられた。友だちがほしいと思ったことも、自分を疑ったこともなかった。わたしは学生たちが多少羨むような特技(?)があったので、中学に上がった頃わたしの周りにはミーハーな女の子たちがたくさんいて、なにかをするとキャーキャーもてはやしてくれた。学校という場所は極端に狭く、退屈で、なんでも娯楽になったんだろう。驚くほどいろんなことがあった。残念ながらわたしは、レズビアンじゃなかったし、モテたい男の子でもなかったので、やっぱり休み時間に黙々と本を読んでいた。いろんな世界を知って、いろんなことを忘れ、忘れたことも思い出せないほど次から次へと読んでいた。

今はもう、あんなに読めない。

わたしは多分13.4歳の頃から、「早くに死のう」と決めていた。わりと最近まで同じことを思っていた。がむしゃらに働いて、結婚もせず、40歳か50歳くらいでピンピンしたままコロッと何かで死にたいと思っていた。できるなら今すぐ、存在ごと消滅してもいい、と思ったりした。

そんな風に思っていた頃は「可愛いは正義」とか「まともな大人」とか「こうしなければ」といった自分の感情や周囲の圧力に苛まれ続けていて、でもその頃には長い小説を読めなくなってしまっていたので、漫画ばかり読んでみたり、仕事から帰ってぼーっとご飯を食べながらぼーっと綺麗な風景の映画を、夜中じゅう観たりしていた。

そういう頃にこの漫画を読んでいたら、わたしはきっと泣いてしまって泣いてしまって、翌日会社や学校を休んだと思う。

わたしとあなたは別々の人間で、別々の感性を持ち、別々のことで傷つき、別々に眠り、別々の夢を見る。

わたしは、ちょっともてはやされた経験から自分が有能だと思っていたので、一生懸命ほとんど存在しない「ふつう」を無理して演じたりしてしまい、たったこれだけのことに気がつくのに随分遠回りしてしまった。
きっといろいろな人を傷つけてきたに違いないけど、そんなことを考えてしまうと気が滅入るので無視する。
いいんだ、わたしだって散々傷つけられてきたんだから。決して一方的ではない。

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今年から久しぶりに読書を再開しました。本を読んで、考えたことや思い出したことを書きます。ネタバレは多分ときどきします。なんでも読めるようになりたいです。