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この家どうするの?(34)葬儀屋さん今昔12「押し入れのふとん」

 亡き父の年金手帳と預金通帳を探しださねば。どこに隠した?空っぽの実家でドタバタと。
(今回も葬儀屋さんが出てきません)
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1248文字)



2階のどこかに

 ちいさな一軒家。父は足腰も弱くなっていて、日々のせいかつは、1階で。
2階は、ほぼほぼ物置小屋と化していました。


70歳をすぎ、転倒やら、あちこちぶつけてケガだらけ。なのにワシは若いがクチぐせ。社交ダンスだのしてた割には……年相応。



押し入れという空間

 2階には本棚があり、下の引き出しには書類がわんさか。パラパラパラ、祖母の葬祭費用の領収者を発見。興味深い「紙ものコーナー」だ。パラパラ、強制終了。


こんなベタなところには、ないだろう。天袋など頭上の位置もないだろう、しぶんで隠したことを確認しづらいから。
だろう、だろうの推定がつづく。父と娘の会話のなさが露出する。


父は、2階のカバンを掛ける五つ並んだフックに、いつもショルダーバックをかけていた。
財布・診察券・保険証・免許証。それで、こと足りる独居老人の生活。携帯電話も持っていない父だった。


押し入れ、お布団の下かも。
立ったままで確認でき取り出しやすい。妙な態勢は、しんどい。上下左右の可動域をひろげると、体幹は、たまったもんじゃない。筋力のおとろえ、それは還暦まぢかの娘のわたしも実感しているのだ。



客用ふとん3セット

 押し入れの圧迫感。テーブルクロスみたいな厚さの、じょうぶなビニール袋に入ったまま積んである。
たぶん、わたし・オット・娘の3人分。電気毛布も3枚。一軒家は冷えるのだ。


むかしの布団は、もっこりと厚くて、かさばる。うすい布団は「せんべいぶとん」。貧乏人の生活品。
真綿のぷっくり、ふかふかで重い布団。ふとんというより布団。布のダンゴだ。戦前世代の贅沢品もしくは、おもてなしなのだろう。
布団の上げ下げは重労働でした。


綿の布団は経年劣化で、つぶれたり、片寄ったり。ふとん屋さんで修繕をして永年使っていたと思う。たしか「打ち直し」そんな、なまえ。



むかしの布団

 押し入れから布団を落とす。持ち上げるのも重たい。気持ちも重い。
いちども使うこと、泊まりに来ることもなかったから。
大量の未使用、袋にはいったシーツ・カバー類も、すべって落ちる。
目から汗もすべった。


ぼた ぼた ぼた


父は、ストックを忘れて買いつづけたのか、それとも。押し入れの奥に落ちてたり、ふとんセットに挟まって。
父は、奥歯にも押し入れにもモノが挟まっていたのだ。とりのぞく術は持たなかったのだろう。


わたし掃除や片づけは、きらいだ。


床には布団の山ができた。押し入れをカラにしても探し物はありませんでした。
こんな調子では、見つかるはずない。押し入れを、ひろげたままだが次へいこう。


虫干しだと、ごまかして。
無視干し、ごめんなさい。



   (不謹慎ながら続きます)

毎週金曜日は
「親の持ち家」の日

いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに 


さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。

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