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思い出を書き換える

 もう2月のことになるが、親友αが初彼女と冬の風物詩といえるような某イベントに行ってきたと報告してきました。親友αは、30歳を超えるまで彼女がいたことがありませんでした。はっきり言って私以上に不器用で、関わる女には、毎回、たかられて、むしられて、やめておけばいいのに、貢いでいました。

 私をはじめとした友人たちが見かねて、それを忠告しても、女に夢中になっているときには聞く耳を持たず。どうしたらいいものやら、と思う機会ばかりが繰り返されていました。そんな彼に、突然、彼女ができました。本当に親友として嬉しいできごとでした。

 数年前、親友αは、ある子(=N子)と恋仲になりたい為、私に協力を依頼してきました。何を依頼してきたか。それは、「(冒頭に書いた)某イベントに行きたいが、二人っきりで行くのは難しい。それで、N子に友達を誘ってもらって、おれは、お前を誘う。そして、おれ(親友α)とN子とお前とN子の友達(M子)の4人で行こうと思う。付き合ってくれないか?」という内容でした。

 簡単なことだし、N子もM子も顔見知りです。気軽にOKしました。最初の方は、楽しく4人でイベントを満喫していました。しかし、突然、親友αが一人で消えてしまいました。そして、私とN子もM子の3人で探すはめになりました。探すはめ、と言っても、携帯電話を持っている時代の話ですから、簡単に見つかりました。この出来事のせいでイベントの序盤は、いい雰囲気だったのもダメになってしまいました。それから、この失敗を挽回すべく、親友αは、N子に対して、仲良くなろうと頑張っていました。しかし、結果は、親友αは、さんざんたかられて、むしられた後に「あなたになんか興味ないの!」とN子から言われ、彼の恋路は終わりました。

 それ以来、親友αは、冬が来ると「某イベントを思い出す、つらいよ。さっさと忘れたい。」と言うのです。親友αが突然いなくなった理由は、後から聞かされました。親友αがいなくなったのは、まずかったですが、攻める気持ちは全然起こりませんでした。

 話は、この某イベントの前に戻ります。実は、この出来事の半年ほど前に、親友αと私とN子にとっての共通の大事な友達(=親友β)が亡くなりました。その亡くなった親友βは、私と親友αにとっても親友です。突然の出来事でした。そして、親友αの気になるN子は、実は、親友βの元カノでした。元カノと言っても、最後に付き合っていた人ではありません。

 親友αは、親友βの遺影を見るたびに、親友βの表情が怒っているように見えるといいます。その理由を聞くと、元カノのN子と仲良くしているからなのかな、と言うのです。要するに、親友βが亡くなったことがきっかけで急接近する自分に対する後ろめたさなんだと思いました。私はそのように想像がついたので、親友αに「親友βにありがとうって言えるような関係になれたらいいじゃん」と言いました。この会話の数日後に彼から某イベントに行くのに協力してほしいと言われました。

 その某イベントで突然いなくなった理由を親友αは、次のように言った。「親友βが死んだのにもかかわらず、おれたちはこんなことして、楽しんでいていいのかな?しかも、おれが手を出そうとしているのは、親友βの元カノなんだぞ」と言いました。自己嫌悪に陥っていたのです。

 親友αが彼女と某イベントに行ってきたと報告してきたのは、N子との思い出を書き換えられた、ということなんだろうなって思いました。しかし、よくよく考えてみると、想像ですが、親友αにとっては、「某イベントを思い出す、つらいよ。さっさと忘れたい。」というのは、N子とのことだけではなく、「親友βを利用しようとして、自己嫌悪に陥った過去の自分」も含まれているんじゃないかな?と思いました。まぁ、聞くわけにはいきませんね。それに私の勝手な想像ですしね。

 親友αは、間違いなく、一歩一歩、幸せに向かって彼女と歩いているように思います。親友α、いい人と出会えてよかったな。ある時期から、仕事すらも、安定していなかった親友の姿を見ると嬉しくなりますね。

 おれにも、親友α、親友βに「幸せになれたぞ」って一緒に報告できる日が来てほしいよな。


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親友βは、下記の記事の方です。


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