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読書感想文

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読書感想文:紙の動物園

読書感想文:紙の動物園

欲しい本があるときはネットで購入する方が早いけど、ランダムに本を手に取りたいときは本屋に足を運ぶようにしています。

ぴぴっと気になる本を見つけられるときもあれば、文庫本の棚を3周くらいしても全然食指が動かないときもあって、そういう時は仕方なしに著名な作家のまだ読んだことがない作品を選ぶんだけど、ちなみに最近"とりあえず買った"『高い城』の男はいまひとつで・・。

同じ日に、ケン・リュウの『紙の動

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読書感想文:一千一秒物語

読書感想文:一千一秒物語

初めて稲垣足穂を読んだときの記憶は、それ自体が宝物のような懐かしさとピンボケした輝かしさと共にしまわれています。

と書けば、サマになるのですが、実際には社会人1年目に一人旅した際のお供に親の本棚から持ち出して、夜行バスを放りだされた早朝の倉敷駅前で読んだけだし、なんならレトロ喫茶でもなくスタバで。

その後も数年おきに何度も読み返していましたが、足穂の出身地である神戸に足を運んだタイミングで改め

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読書感想文:BUTTER

読書感想文:BUTTER

社会人3年目の夏に、英文科のゼミの教授と友人とご飯に行ったとき、教授からおすすめされたのが柚木麻子の『ナイルパーチの女子会』でした。

「きっと、20〜30代の女性はこういうのが刺さるんじゃないかなぁ」とかなんとか、文学部の教授らしからぬ説得力のない推薦文つきで。

結局、その夏は「男受けが悪い」と友人が言っていた『ドグラ・マグラ』を読み、一体これは誰受けの本なのか・・?と混乱したのを覚えています

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読書感想文:処女連祷

読書感想文:処女連祷

今まで書いてきたnoteのアクセスログみると、意外にも『ペスト』紹介を細々と読んでいただけていることに気がつきました。
おすすめすぎる小説だけど、旬でもないし、海外作品だし意外!

非常に読みやすく、何度読んでも楽しめる読み応えがあるのが世界的名作たるゆえんですね。

前置きが長くなりましたが、今回も5本の指に入るくらい好きな小説、
『処女連祷』です。

〜あらすじ〜
卒業を間近に控えた女子大生仲

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読書感想文:熊嵐

読書感想文:熊嵐

凶暴な動物に肉食獣に襲われるパニック映画は人気ジャンルのひとつで、名作と言われる映画もありますよね。

今回、紹介する『熊嵐』は大正時代に起こった日本最大の羆による獣害事件を追ったドキュメンタリーです。

もう大丈夫だろう、と一安心して緊張の糸が途切れたタイミングで急に羆が再襲してくるくだりなんか、映画の演出の教科書にでてきそうなシーンでぞっとしました。「事実は小説より奇なり」を地で行く惨事で、読

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悪と戦うストーリーに食傷気味なときに読む本

悪と戦うストーリーに食傷気味なときに読む本

「お前の全生活にはデケイした面白みがあるよーお前は敗滅していく人間だからね」

梨木香歩の『家守綺譚』を読んで、風雅に描かれたな明治時代へのノスタルジーが募り手に取った佐藤春夫の『都会の憂鬱』の暗いこと。
駆け出しの文筆家である主人公が定職につかず日がな一日家にいるという設定は同じでも前者は私小説風に幻想的なエッセンスを加えたエンタメ小説であるのに対して、後者は日の当たらない家で神経衰弱になってし

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読書感想文:ペスト

読書感想文:ペスト

今年は読書感想文を書こう!まずは大好きな本から!と思って久しぶりに手に取り、お気に入りの場面を読み返したらどう解釈したら良いのかわからない文章に出くわし困ってしまって、さぁどうしよう!

カミュの『ペスト』ではペストが猛威をふるい封鎖されてしまったアルジェリアの街を舞台として、死と隣り合わせの中、生活する人々が描かれています。
決して楽しい話ではないものの、質実かつ写実性に優れた文章にはぐいぐい惹

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