松籟社note

図書出版・松籟社の新刊情報を発信。関連読み物も随時掲載、ためし読みもできます(予定)。

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最近の記事

『吹きさらう風』より

 アルゼンチンの作家セルバ・アルマダによる小説『吹きさらう風』を、宇野和美さんの翻訳で刊行しました。すでに訳者の宇野さんによる訳者あとがきを公開していますが、今回はこの小説から一部抜粋してお届けします。宇野さんは本作品について「大げさな表現を避けて、小声で語られるような文章」と評されていますが、この短い抜粋から、アルマダの声を聞き取っていただければ幸いです(第1章と、第7章の一部を公開します)。 ---------- 『吹きさらう風』より セルバ・アルマダ著/宇野和美訳

    • 『吹きさらう風』訳者あとがき

       近年、ラテンアメリカの女性作家の活躍が目立ち、日本でもマリアーナ・エンリケス(『わたしたちが火の中で失くしたもの』安藤哲行訳・河出書房新社、『寝煙草の危険』宮崎真紀訳・国書刊行会)やサマンタ・シュウェブリン(『七つのからっぽな家』 見田悠子訳・河出書房新社、『口のなかの小鳥たち』松本健二訳・東宣出版)の翻訳紹介が進んでいます。  アルゼンチンのセルバ・アルマダも、国際的に注目されている作家の一人です。このたび、宇野和美さんの翻訳で、この作家の『吹きさらう風』という作品を刊行

      • 『ダリオ・フォー喜劇集』訳者解説

         現代イタリアを代表する劇作家・俳優であるダリオ・フォー。その数ある作品群から精選した喜劇7編を高田和文さんが翻訳、『ダリオ・フォー喜劇集』として弊社から刊行されました(2023年7月)。  ダリオ・フォーは1997年にノーベル文学賞を受賞していますが、残念ながら日本での知名度はまだあまり高くありません。そこで、まずはこの稀代の演劇人のことを知っていただくために、『ダリオ・フォー喜劇集』の訳者解説を公開いたします。  フォーの演劇人としての歩み、その作品をイタリアの人々はどう

        • 『火葬人』訳者あとがき

           2012年末にシリーズ「東欧の想像力」の一冊として、ラジスラフ・フクス『火葬人』日本語版を刊行しました。  おかげさまで、刊行から10年近くたった今も、根強いご支持をいただいています。この本がさらに多くの読者の方と出会うことを願って、訳者・阿部賢一さんによる「訳者あとがき」を公開します。 ---------- 訳者あとがき 「最も起源が古く、最も強烈な人間の感情とは、恐怖である。そして最も起源が古く、最も強烈な恐怖とは、未知なるものへの恐怖である」と述べたのはH・P・ラ

        『吹きさらう風』より

          『平井呈一 生涯とその作品』序文

           ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)のさまざまな作品の訳者として、また『ドラキュラ』はじめ英米怪奇文学の訳者としても著名な平井呈一(本名・程一)という英文学者がいます。その生涯はこれまであまり詳しくは知られていませんでしたが、2021年5月に刊行しました『平井呈一 生涯とその作品』(荒俣宏さん編纂、紀田順一郎さん監修)により、前半生から晩年に到るまでの平井の足跡と仕事の詳細が明らかになりました。  今回、本書の巻頭に掲載されている、評論家・作家の紀田順一郎さんによる序文を公開い

          『平井呈一 生涯とその作品』序文

          「ノヴォグラドのカトリック教会」──バーベリ『騎兵隊』より

           2022年1月に刊行しましたイサーク・バーベリ『騎兵隊』日本語版(中村唯史さん訳)より、収録作のひとつ「ノヴォグラドのカトリック教会」を公開いたします。 ---------- ノヴォグラドのカトリック教会 イサーク・バーベリ著/中村唯史訳  私は昨日、報告書を携え、主が逃亡した司祭館に宿泊している軍事委員に会いに行った。イエズス会付きの家政婦エリザさま[パニ・エリザ]が炊事場で出迎え、琥珀色のお茶とビスケットでもてなしてくれた。狡猾な果汁と香ばしいバチカンの憤怒を含ん

          「ノヴォグラドのカトリック教会」──バーベリ『騎兵隊』より

          「ドルグショフの死」──バーベリ『騎兵隊』より

           1920年代のロシア文学界で一世を風靡したユダヤ系作家イサーク・バーベリ。その代表作のひとつ『騎兵隊』日本語版を、2022年1月に中村唯史さんの訳で刊行いたしました(この本は以前、木村彰一さんの訳で中公文庫から出ていましたが、今回は中村さんによる新訳版です)。そこに収録されている短編のひとつ「ドルグショフの死」を公開いたします。 ---------- ドルグショフの死 イサーク・バーベリ著/中村唯史訳  戦闘のとばりは、街へと向かっていた。正午ごろ、黒い袖無外套をまと

          「ドルグショフの死」──バーベリ『騎兵隊』より

          「支線」――クルジジャノフスキイ『瞳孔の中』より

           2012年に刊行した、シギズムンド・クルジジャノフスキイというウクライナ出身の作家の作品集『瞳孔の中』から、短編「支線」を公開いたします。翻訳は秋草俊一郎さんです。  秋草さんには、2013年に同じくクルジジャノフスキイの『未来の回想』を訳していただいています(「訳者あとがき」を公開しています。そちらもどうぞご覧ください)。 ----- 支線シギズムンド・クルジジャノフスキイ 作 秋草俊一郎 訳  レールの継ぎ目が、軌道のスタッカートを刻んでいた。壁のフックにつばをか

          「支線」――クルジジャノフスキイ『瞳孔の中』より

          クヴァドラトゥリン

           2012年に刊行した、シギズムンド・クルジジャノフスキイというウクライナ出身の作家の作品集『瞳孔の中』から、短編「クヴァドラトゥリン」を公開いたします。翻訳は秋草俊一郎さんです。  秋草さんには、2013年に同じくクルジジャノフスキイの『未来の回想』を訳していただいています(「訳者あとがき」を公開しています。そちらもどうぞご覧ください)。 ----- クヴァドラトゥリンシギズムンド・クルジジャノフスキイ 作 秋草俊一郎 訳 1  外からそっとドアをたたく音がした。コ

          クヴァドラトゥリン

          『未来の回想』訳者あとがき

           2021年9月に、旧ユーゴ出身の作家アレクサンダル・ヘモンのエッセイ集『私の人生の本』日本語版を、秋草俊一郎さんの翻訳で刊行いたしました(「訳者あとがき」をこのnoteで公開しています)。  秋草さんには、2013年にシギズムンド・クルジジャノフスキイという作家の『未来の回想』を訳していただきました。今から90年以上前に書かれたタイムトラベルSFです。今回はその「訳者あとがき」を公開いたします。 ----- 『未来の回想』訳者あとがき  秋草俊一郎  ここに訳出したの

          『未来の回想』訳者あとがき

          『私の人生の本』訳者あとがき

           旧ユーゴ出身の作家アレクサンダル・ヘモンのエッセイ集『私の人生の本』日本語版を刊行いたします。  刊行に先立って、翻訳をしていただいた秋草俊一郎さんによる「訳者あとがき」を公開します。 ----------        『私の人生の本』訳者あとがき    1  本書はアレクサンダル・ヘモンによるThe Book of My Lives(二〇一三)の邦訳である。本書は著者はじめてのノンフィクションとして、各媒体に発表してきた散文をまとめたものだ。以下にそれぞれの初出

          『私の人生の本』訳者あとがき

          『プラヴィエクとそのほかの時代』訳者解説

           2019年11月末に、シリーズ「東欧の想像力」の最新刊として、オルガ・トカルチュク『プラヴィエクとそのほかの時代』日本語版を刊行いたします。  刊行に先立って、訳者・小椋彩(おぐら・ひかる)さんによる「訳者解説」を公開します。 ---------- 訳者解説──万物の共生の物語  オルガ・トカルチュクは、いまや世界でもっとも読まれ、訳され、愛されているポーランド語作家だ。一九八九年の民主化を経て、厳しい検閲も、西側の翻訳文学への制限もなくなり、あらゆる本があふれかえ

          『プラヴィエクとそのほかの時代』訳者解説