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【対談】星龍太×清水誠也(フウガドールすみだ)

 今回のほし日記は、フウガドールすみだのチームメイトである清水誠也と、色々なことを話した様子をお届けします。

 普段僕たちがどんなことを考えているのか。試合では見ることのできない姿や、僕たちの考えていることを知ってもらうきっかけになればいいなと思います。

■今回対談しようとと思った理由


星 誠也と対談しようと思った理由は、フウガから一度他のチームに移籍して戻ってきた選手だったから。もうひとつは、同じセットを組んでいるから。今日は、そのあたりの話ができたらいいなと思っていたんだけれど、同じセットだったのに裏切られちゃったからな……(笑)

誠也 あれは俺じゃないですよ。荻さん(荻窪孝監督)です! そういうのよくないですって!(笑)

 でも、現実的なことをいうと、次の対戦相手を見て、当てたいピヴォとフィクソがあるんじゃないですかね。

 中断期間もあるから色々と試すのかもしれないね。

だけど、俺の知らないうちに、誠也が離れていっちゃったからさ……。

誠也 俺も知らなかったんですよ! 監督と話した和也(清水和也)から、この組み合わせでいくって聞いたんですよね。


■移籍したからこそ、身に付いた視野の広さ

 ということで、今日は色々話せたらいいと思っているんだけれど、誠也はフウガに戻ってきて約4ヶ月経ったけれど、どうなの?

 実は俺はまだ、慣れていないんだけれど……。

誠也 いやいや(笑)。もう4ヶ月ですよ! そろそろ慣れてもらわないと! 

 龍さんは、どんなところで慣れてないなと感じるんですか?

 チームの体制だけではなく、プレーの面でもまだ噛み合わないなと感じるところがあるかな。

 フウガに来て3ヶ月、4ヶ月、誠也と同じセットで戦ったのは、オーシャンカップ後だから、約2ヶ月ちょっとくらい。少しずつ、噛み合ってきている印象はあったんだけれど、違う選手とやるときにまたズレが生じることがあったりするかな。

誠也 それは僕たち2人の関係性というよりは、3人目、4人目で上手くいかないというイメージですよね。

 簡単にいうと、フットサルの基本じゃないですが、ピヴォがいないんだったらそこのスペースを誰が使うんだという話だと思います。

 空いたスペースを誰が使うのかという意識が、フウガは低いと思っています。

 それは、以前フウガにいた時より、北九州(ボルクバレット北九州)から戻ってきた後の方が、より強く感じるの?

 というのも、北九州には馬場さん(馬場源徳監督)っていう、フットサルの戦術に詳しい監督がいるから、そこで勉強したことで視野が広がったのかというのは気になるところだね。

誠也 そうですね。最初にフウガにいた時は、気がついていなかったです。多分、気にも留めていなかったんじゃないかな。
 
 それはもちろん、自分のことで精一杯だったというのもあります。試合に出てアピールすることが最優先だったので、後ろ3枚のことは知ったこっちゃないから、とにかくボールをくれよみたいなところはありましたね。

 そんながむしゃらな状態で移籍した先が、馬場さんというフットサルの戦術に長けた監督がいるチーム。そこで、後ろ3枚の構築を理解した部分がありますね。

 フットサルをしていたら当たり前のことですが、そういう部分を改めて整理してインプットできました。なので、フウガに帰ってきてから、より考えることが多くなったなと実感します。

 北九州は自分で仕掛ける選手も多かったので、そうなるとピヴォの動きもまた変わるので。

 なるほど。それでいうと、オーシャンカップの時は、誠也が出ていたセットは、自ら仕掛ける選手が多いセットだったよね?

誠也 そうですね。僕が出ていたセットは、どんどん仕掛けていこうぜという雰囲気でした。元気君とかは、縦に仕掛けていきたいタイプだと思うので、空いたスペースを上手く使って、噛み合っていましたね。
 そこのバランスが上手くとれないと、自分たちで自滅してしまうのかなって、色々分析はしたりしています。

 北九州ではそのバランスを上手く取れるようなやり方を教えてもらったの?

誠也 要は、システムが強かったので、ピヴォ以外の3枚のバランス回復の仕方を教えてもらいました。
 ピヴォに上手くボールが当たらなくて、ピヴォが下がるパターンもあったので、ピヴォが下がった方向によってどっち側のスペースを埋めるか。

 北九州では、認知系のトレーニングが、すごく多かったですね。他には、ローテーションの練習もすごく多かった印象があります。

 それは、練習で全員の体に染みつくくらいやっていたのか、それともその都度頭で考えながらやっていた?

誠也 多分馬場さんの理想は、最終的には体に染み付いていて欲しかったんじゃないかなと思います。だけど、選手それぞれにキャパもありますよね。
 
 どちらかと聞かれたら体に染みこませることを目的としたトレーニングが多かったと思います。良し悪しはあると思いますが、そのくらい徹底して言われていましたね。

 Fリーグができて15年くらい経つんだけれど、その前に地域リーグの時代があって、レジェンドたちが引退していって、自分の中での感覚は3週目くらい。そういう話を聞くと、育成段階でそういうことができるのが理想だなって思うんだよね。だけど、トップリーグの選手ですら、それができていないのが現状。
 
 他のチームもそうなのかなって気になるところではあるよね。リーグ全体として、このチームはできているけど、このチームはできていないよねっていう、チームとしての差に繋がるのかなというのは思っている。

 自分も、府中(現立川アスレティックFC)と名古屋(名古屋オーシャンズ)とフウガしか知らない。府中時代は、若手だったからがむしゃらにやって、試合になれることに精一杯だったから、どんな思考で、どんなシステムがあってというよりは、試合に絡むことを意識していた。

 今はベテランになったから、基礎知識とか、フットサル選手にとっての当たり前が、意外と疎かになっているなと感じることが多くなってきた。自分たちの時は、育成とかがなかったので、自分で気がつかなければいけなかった。だけど、フウガに来て育成年代とも関わるようになって、どうやってアプローチしていったらいいかを考えるようになったのも、そういうことが気になり始めた理由なのかなって思うんだよね。

誠也 難しいですよね。僕が馬場さんから学んできたことというのは、フットサルをやっている人たちにとって当たり前のことなんですよね。その当たり前を、一から説明してもらって、教えてもらうことができた経験というのは、すごく大きいなと思います。

 個人的には、自分たちで気がつくことに限界はあるんじゃないかなと思っています。ただ、これを伝えるというのも、大変だなと感じています。伝えていく大変さを感じると、自分も移籍して成長したんだなと思うし、伝えていかなければいけない立場になったんだなと思いますね。

 やっぱり話をしていて、自分もそうだったけど、チームや監督が変われば、戦術も変わるから、チームを変えることで色々な戦術が身につくんだなというのは、シンプルに思うことだよね。

 フウガにずっといる選手たちが、フウガのスタイルを貫き続けているというのはすごいことで、そこに強みがあるんだけれど、それで対応できない相手が出てきた時の修正、対応がまだまだなのかなとも思う。

 昨シーズンの結果だけで見てしまうと、8位。まさにそういうところに出てしまうのかなと分析したりしているかな。

■自ら環境を変えることで得た学びの機会

誠也 確かに、自分たちのスタイルだけではなく、色々な戦術を選択肢として持っているというのは、大事なことかもしれないですね。

 名古屋では、色々なチームから選手が集まるから、それぞれ持っている戦術も違うし、外国からくる選手もいる。そこで学びがあったけれど、自分や誠也みたいに移籍をすることで、学びを得ることも出来るわけなんだよね。

 育成が上手くいっていない日本では、自分たちで環境を変えるというのは、一つ成長するための手段ではあるのかなと思うよね。

誠也 シンプルに自分の視野が広がるというのは、自分でも体験したことですね。知らない世界を知るというのは、大切なことだと思いますね。

 誠也は何歳で移籍したの?

誠也 25歳になる年に移籍しました。

 フウガは何歳から?

誠也 バッファローズに入ったのが19歳です。その後5年くらいかけて、やっとトップに上がることができたけれど、1年でダメだったので……。そこで須賀さん(須賀雄大)から移籍を提案されましたね。

そういう流れで北九州に移籍をすることになりました。

 移籍は結果的に正解だった?

誠也 そうですね。残っていたらというのは分かりませんが、今振り返ると、自分の中では正解だったなと思います。

正解だったなと思いたいので、今シーズン結果が出せるかというまだ途中の段階です(笑)

 そうだよね。正解にするには、結果を出さなければいけないからね。

誠也 そういうシビアさというのも学びましたね。馬場さんは、スペインという国で、プロという非常に厳しい環境でプレーをしていました。
最初は手伝いから成り上がった監督だったので、選手の価値をあげるというのは、どういうことかというのを教えてもらいました。

 それがすごく、個人的に響いたなって思っています。

■チームの最終着地点を再確認する大切さ

 自分もそういうマインド的な部分は、フットサルの技術、戦術以外にもすごく大切だと思っているんだよね。

 北九州とフウガだと、チームも選手も違うけれど、仕事をしながらフットサルを続けているという意味では、環境は似ていると思う。2チームを比べて、そういったマインド的な部分で違いを感じることはある?

誠也 今の北九州の状況はわからないので、自分が所属していた時の話になりますが、最低限の仕事がないと生活はできません。働きながらフットサルをするということに抵抗はありませんでしたが、馬場さんからはよく「選手としての価値を上げろ」という話をされていました。選手としての価値を上げることで、自分の生活が豊かになるということを教えてくれました。

 自分が結果を出せないと、その交渉の場にすら立つことができません。僕はそう解釈していたので、とにかく一年、一年結果を出す。目に見える数字だけではなく、チームにどれだけ貢献しているかという部分もちゃんと評価してくれる監督だったので、北九州でそういったマインドを学びました。

 チームとしては、プロを目指していた?

誠也 そうですね。プロを目指してやっていました。みんながそこに向かっていましたね。

 逆にフウガに来てから、僕自身のマインドは変わっていませんが、和也(清水和也)が来て、龍さんが来て、昇吾君(檜山昇吾)が来たことで、チームとして良い方向に向かっていると思います。

 ですが、仕事をしながらフットサルをするということが当たり前になってしまっているので、今後どっちにシフトチェンジしていくのか。このままの環境で続けていくのか、プロ契約を作っていきたいのかが分からない。

 みんなそれぞれが考えていると思いますが、そこを今一度チームとしてはっきりさせる方が、チームとして目指す方向を作りやすいのかなとは思います。

 それはそうだよね。仕事があって、フットサルがあって、そのどちらにも優劣は付けがたいことだと思う。仕事には仕事の面白さがあるわけだから。

 だけど、プロ化していこうというマインドがチームにあるなら、みんなの意識を統一するという意味で、やりやすさはあるよね。

誠也 今は、プロを目指している選手と、仕事の楽しさも大切にしている選手がいるので、難しい部分ではありますよね。

 もちろん、それぞれの選手の考え方によって、チームに求めるものも全然変わってくると思います。そうなると、バラつきというのが、どうしても出てしまうのかなというのは思いますね。それぞれの考え方があっていいと思いますが、よりクリアにする方がチームを強固にしていくという意味でも、大事なのかなと思います。

 もちろん賛否両論はあると思うけど、フウガに来てからより自分自身が、チームスポーツの難しさを感じている部分があるんだよね。

 名古屋は全員がプロ契約。全員が自分たちの役割を果たすためにプレーをしている感覚。

 フウガは、もちろん全員から「勝ちたい」という意志は感じるけれど、その「勝ちたい」の度合いにバラツキがあるのかなって。

 これは自分自身か感じていることだけど、何をして勝ちたいのか。勝つために自分を捨てられるのか。自分はドリブルをしたいけれど、ドリブルよりもパスを選択した方が勝利への確率があがるといった場面で、自分のやりたいプレーを捨てて、勝ちに繋がるプレーを選択できるのか。

 そういう場面での、選手それぞれの考えたかたの違い。どれだけ勝ちに対して執着できるのか、身を捧げられるのかという部分での差があるのかなと思っている。

誠也 そうですね。

星 そこの意識の統一はしたいなって個人的には思っているかな。

 それ以外の、最終的なそれぞれの目標。例えば、日本代表になりたいなのか、Fリーガーになるなのか、それは人それぞれ違う訳で、それを統一するのは難しいと思う。

 自分自身は、せっかくやるなら全員が日本代表を目指してほしいと思うけれど、仕事へのやりがいを感じながらやっている選手もいる。それぞれの目標の終着点は違うはずだけど、勝ちへの執着心という部分はもう少し統一できるのかなと思うし、合わせていかなければいけない部分だなと思う。

 そこの意識を統一することができたら、もっとパワーが出るチームだと思っている。他にはない一体感を持っているので、そこの部分はやりながら合わせていきたいなと思っているかな。

誠也 それぞれの選手が何を大切にしているのかは、話さないと分からないですもんね。

 そういう部分のコミュニケーションは、もっと取っていけたらいいかなと思うよね。

■これからのフットサル界を担う若手選手に想うこと


 誠也がバッファローズにいた時は、月謝を払ってプレーをしていたの?

誠也 そうですね。最初は月謝を払っていました。コートも、千住の外コートの他に、昔はお台場のコートで夜の9時から11時まで練習していました。

 その時代を経験しているので、環境の違いは感じます。今でも室内で練習することができていますが、さらにフルコートの新しい施設ができるので、昔みたいなハングリーさが欠けていくのではないかというのは危惧していますね。

 飢えじゃないけど、そういうのは大切かもしれないね。自分たちも環境の形成とともに、メンタルが形成されてきたと思うんだけど、それをそれぞれ育った環境が違う選手に伝える難しさというのは感じている部分ではあるかな。

誠也 そうですね。その時代のことが分からないから、言葉では伝わらないというのはありますよね。僕ですら、環境に恵まれていた方に入ってしまうと思いますが、過去の話をしても昔話をしているくらいにしかならないような気はします(笑)

 みんな怒ることがないよね。自分も試合中は怒るけど、練習では怒らない方だと思う。だけど、練習から怒った方がいいのかなとか考えることはあるよ。

誠也 でも怒る人がいないからこそ、怒られることへの耐性がない気はするんですよね。

 当然、龍さんもそこへのアプローチはし続けてきたと思いますが、良くも悪くも、和也が帰ってきたことによって、その辺りの熱は上がっているのかなと思います。
 
 和也は試合に勝ちたい気持ちが一番溢れていると思うんですよね。僕自身、厳しい環境でやってきた人の言葉って全然違うなというのは感じています。そこは自分には出せないなと思っています。

 そういう意味で、新しい視点が自分の中に出てきていることが、すごく楽しいんですよね(笑)。

 昇吾君とかも、練習終わりに結構よくなかったことを言ってくれたりするじゃないですか? そういうのを言わない人なのかなと思っていたので、環境が違う人たちが集まって、新しい視点が発見できるのが楽しいです。

 昇吾は寡黙なタイプだからね。

誠也 全然吠えるタイプではないので、ちょっとビックリしつつ、楽しんでますね。

 試合中も後ろからすごい声をかけてくれて、色々な情報をたくさん伝えてくれるんですよね。

 そういう意味では、自分も入りやすかったかな。

 ベテラン勢も抜けていってフウガが変わっていく中で、若い選手にもチャンスが回ってくる。他のチームから加入した選手も、今まで以上に多いはずだったから、入りやすさがあったよね。

誠也 僕が前にフウガにいた時よりも、空気感が変わったなというのは感じています。

 俺が加入した当初は、ほぼみんなフットサルの話をしていなくて……。

誠也 そうですか?

 練習が終わった後とかに、そんなにフットサルの話をしていない気がしていたんだよね。

 そこでもっとコミュニケーションをとっていこうというアプローチをしていたんだけれど、そういう意味ですごくいい方向に変わってきているなというのは感じるかな。これからは、そのコミュニケーションの質をあげていかなきゃなと思っているんだよね。

誠也 例えばどんなところですか?

 特に今シーズンは、誠也、和也、昇吾、俺とか、他のチームを経験してきた選手がたくさんいるので、若手の選手とどんどん話して経験を還元できたらいいのかなと考えているかな。

 今までのフウガスタイルにさらにプラスして欲しいんだよね。分からないことがあれば、どんどん聞いて欲しい。自分がその年齢だった時は、分からないことだらけだったから、分からなくて当然だと思う。分からないことがあれば、遠慮せずにどんどんどんどん聞きにきて欲しいと思っているよ。

■これからのフウガで楽しみなこと

誠也 龍さんはこれから楽しみなことはありますか?

 9月が楽しみかな。新しいアリーナができるからね。そこから今度は、クオリティ面でチームを変えるチャンスだなと思っているよ。

 今は、思考の部分で考えることが多いけれど、今度は広いピッチで練習できるようになるから、質の部分を変えていくチャンスだなと感じている。

誠也 そうですね。紅白戦でも白熱することがあるじゃないですか? それが、大きいピッチになったらより再現性というものが出てくるのかなと思っているので、楽しみですね。質の高い上位のチームに食らい付いていくと言うのは、熱量を持ってやっていくとかそう言う部分が大きく関係していると思っています。

 戦うって口で言うのは簡単ですけど、それをピッチで体現できているかと言うことを問われると、まだまだだと思っています。

 自分自身の戦いもそうですが、チームとしてどれだけ上位陣に食らい付いていけるのか。もっとシビアにやっていきたいですね。

星 失点につながるミスをなくしつつ、自分たちの良さを全面に出していければ、平均値で負けていてもチームスポーツなので勝てるチャンスはいくらでもあるよね。

 コンビネーションや一体感で上回っていけばどうにでもできるから、そこを意識して、中断期間はコミュニケーションをとってやっていきたいね。


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