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映画『さがす』~あなたがこの物語の先に見つけたものは何ですか~

2月3日木曜日に、池袋シネマロサで観てきました。監督は片山慎三さん。主演は佐藤二朗さん、伊東蒼さん、清水尋也さんです。この映画は現在は、東京では4館のみの上映となっておりますが、非常に評価が高く、これから公開規模を広げていくのではないでしょうか。

私は、『セブン』や『パラサイト』、『ジョーカー』のようなミステリー、サスペンス、スリラー映画が大好きで、『さがす』は予告やあらすじを見た時から「これは観なきゃな」と思っていました。そして観た結果、バッチリ自分の好みに合っていました。日本サスペンス・スリラー映画の傑作です。

この映画の特徴は3つあると思っています。

主要登場人物3人がそれぞれ魅力的であるということ、実際に起きた嘱託殺人事件が背景にあること、物語の先を読ませない脚本構成であることです。

今回私は、『さがす』の物語の先を読ませない脚本構成に注目して、感想やお薦め文を書いていこうと思います。

ネタバレは避けますが、特徴的な物語の展開方法に触れることになります。

(見出し画像参照 https://twitter.com/sagasu_movie

あらすじ

大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかしその翌朝、智は煙のように姿を消す。
ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。
失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。そこには、日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった。(あらすじ参照 https://sagasu-movie.asmik-ace.co.jp/ )

私の感想

私は、この映画を観終わって、韓国のサスペンス・スリラー映画の要素を強く感じました。近年でいえば、ポンジュノ監督の『パラサイト』のような。ユーモアがあって、バイオレンスがあって、そして全く物語先が読めない。

片山慎三監督は、ポンジュノ監督の『母なる証明』で助監督を務めた経験があるということで、まさにそれは納得がいきます。片山監督は、韓国と日本の映画作りの違いについて、「お金、志、脚本」のレベルの高さが韓国映画にはあるとおっしゃっています。

片山監督にとって商業デビュー作ということもあって、「お金」の部分では苦労したことが予想できますが、「志と、オリジナルである脚本の強度」の部分では絶対に負けないぞという気概が『さがす』には感じられるのです。

観ている人が「こうなるだろうな」という予想を、いかに裏切っていくか。

特に印象に残ったシーン

『さがす』の物語は、明確に過去に遡る2回のツイスト展開が掛かります。

最初は失踪した父を探す楓の視点で始まり、次は父の名を借りた謎の男の視点で進み(1回目)、最後に失踪した父の視点(2回目)で結末が来ます。

特に、清水尋也さん演じる謎の男の視点に突如移り変わる海辺のシーンは、「娘が父を探す物語から、いったいどんな物語に変わっていくのだろうか」という胸がゾクゾクする感覚に襲われました。

私は、脚本の学校で物語の書き方を教わった経験があります。初心者がまず教わることの1つは、現在形で物語を書き進めるということ、回想を挟まないということでした。安易に回想を入れると、観客の物語を観ているリズムが乱されるからです。それだけ過去に遡るシーンはリスクがあるのですね。

『さがす』は、どうして父が消えたのかという謎が、大胆に時間を巻き戻す物語構成で、解き明かされていきます。回想、過去の扱い方が巧いのです。

どんな人に見て欲しいか

私がこの映画を観て欲しいなと思う人は、自分以外の他人って一体何を考えているんだろう、それを知ると自分は一体何を思うんだろうという、そんな疑問を抱いている人です。

日常では本当に相手のことを知りたいと思っても、なかなか分かりません。ただ『さがす』の伊東蒼さん演じる楓が、本当の父のことを一生懸命に探す姿を観れば、自分も思い切って相手を知ろうという行動を取ってみようかなと思えるかもしれません。

この映画を観て、自分や相手のことをさがす旅に出てはいかがでしょうか?

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