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【FREE】そもそも金融所得倍増計画の前に必要なこと

金融所得倍増計画というお話がぶちあがっているのですが、投資に回す貯蓄が十分ない世帯が多いってのは現役世代ではかなり多くいるのは実体です。そもそも金融所得というのは、手元にある金融資産の運用によって生じる所得を指します。これを倍増させようというお話なのですが、そもそも金がねーというお話が出てきちゃうわけですね。

金融所得を倍増できれば良いことはもちろんありますが、いきなりそんなことが実現されないのはなぜか、解説すると共に、解決に向けて政府ができることについて書いておきたいと思います。

○ そもそも若者は資産がなく、高齢者には時間がない

そもそも若者には運用する資産が十分にはありません。現状において資産がない人は当然ながら一般的に給与所得も高くはありません。9割がサラリーマンの社会において重要なのは、会社員給与の上昇、しかも低所得の人たちの解決です。当たり前ですが、運用資産がなければ、具体的に言えば手元現金がなければ金融商品を購入することはできませんから、金融所得だけを倍増するというシナリオは残念ながら成立しないのです。

それでは資産をそれなりに所有している高齢者はどうか。現状において、個人の金融資産の7割近くを高齢者が保有していると言われています。いかんせん彼らには時間がありません。資産運用の基本は長期分散ですが、彼らにはこの長期というのが成立できないのです。一般的にリスク商品については高齢になれば回避して、債権などにしたり、現金化していく、つまりは手仕舞いするのが合理的なのです。

給与があがらず、手取りはさらに伸びない現役世代。いい時代を経て資産も形成している高齢者。このような構図が今の日本の問題でもあり、ただ単に金融資産運用やりましょう!!!といっても現実として難しいのです。NISAの拡充とかはもちろんマイナスではないですが、もう少し踏み込むべきでしょうというところ。

○ 政府にできること(1)社会保険料の軽減

それでは政府にできることはなにか、といえば結構シンプルで、まずは現役世代の手取り給与を引き上げる仕掛けを作ることです。誰でも知っているように日本において現役世代の平均年収が伸び悩む一方で、社会保険料が引き上げられてきた背景があります。税金を引き上げるときには大変な反対とかが起こったりするわけですが、社会保険料は高齢者には関係ないこともあるのか、しれーーっと平成で引き上げられてきました。

つまりは手取りが全然伸びない。手取りが伸びないで生活がカツカツとなれば、資産形成は遅くなります。

(多くの現役世代の大きな資産は住宅などの不動産になりますが、都内とかであればよいものの、地方部になるとこの住宅自体も将来の資産評価は絶望的に安くなってしまうものでもあとしてはこれはまた別の住宅政策の見直しが必要ですのでまた別の機会に解説します)

政府としては企業に給与を増やせ、分配を大きくという前に、社会保険料などについて見直しを行い現役世代の負担を軽減する決断が必要です。これは財政出動を行って、その分を民間所得に転換し、消費喚起していくという方法をより模索するのが適切です。

○ 政府にできること(2)生前贈与の促進、贈与資産の運用減税、認知症患者の資産移転制度の確立

あとはそもそも日本の資産を高齢者が塩漬けにしているのは大いなる問題です。資産運用する、さらにいえば消費を拡大させるためには、若い現役世代に資産を移転させることが有効なのはずーっと言われながらなかなか行われません。そこを思い切って踏み込むべきです。

そういう意味ではどんどん改悪している生前贈与とかはもっと迅速に行えるようにすべきだし、贈与資産についての運用減税をするとかで若者たちの金融所得運用を積極化させるとかならばわかるのですが、そういうのなしに金融所得倍増といっても厳しいわけです。

さらに認知症患者が増加する中で、本気で塩漬けになってしまい、誰も使えない状態が続いていたりします。認知症患者となった段階で資産について相続を行うなどのプロセスをよりクリアにする必要があります。

認知症の高齢者が保有する資産額を推計したところ、金融資産が 175 兆円、不動産 が 80 兆円で、合計 255 兆円となった。これは日本の家計が保有する資産総額の8%強 にあたる。高齢化の進展と相まって、認知症高齢者の保有資産は更に増加し、2040 年 には 349 兆円、家計資産総額の 12%を超える見込みである。

https://www.smtb.jp/-/media/tb/personal/useful/report-economy/pdf/121_1.pdf

基本は高齢者から若者に資産移転をするというシナリオが大切ということです。現代の金持ちというのはほとんど高齢者なのです。若者世代の所得の高低で所得移転するみたいな発想では限界があるのです。令和の資本主義とかはそういう不均衡の是正から入らないといけないわけで。

このように金融所得を倍増させるには「現役世代の手取りを増やす」と同時に「高齢者の資産を現役世代に移転する」というのが大切ということであります。

そもそもとして年金受給要件に所有資産による資産制限を設けるのが当然なのですが、そういうこともしなければ資産持ちの高齢者に多額の不必要な年金を支給している現実もあるので、そのあたりはもう少しフェアな社会保障にしてほしいところですね…。

○ 昭和の時代は給与所得倍増&金融所得倍増だった

とはいえ、池田勇人の所得倍増計画の時代はなんだったかといえば、給与所得も倍増し、さらに金融所得も倍増していた時代なのです。

実際問題として日本のインフラ不足を補うのに公共投資もバリバリおこなっていたので、それでGDPも引き上げられていました。つまりは所得倍増の影には政府の適切な財政支出も大きく貢献していたのです。つまり単に掛け声ではなく、政府支出も拡大しなければ給与所得倍増も難しいのです。

その財政支出の一つに、財政投融資の仕掛けもあったので、それをテコにして貯金しておけば定期貯金で4-7%みたいな金利がついたりしていたのです。このくらいの金利があれば10-20年で金融所得は倍増しますからね。

このような昭和の所得倍増計画の方法を、令和の時代にどのように置き換えて考えるのか。もう少しわかりやすくやってほしいなと思いますね。やれる手段はそれほど複雑でもなく、選択肢もたくさんあるわけでもないのです。

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