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【AIと戦略】トレードオフを処理する力が必須!?『予測マシンの世紀 第四部』#18

こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。

AIとの共同に関して、『予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済』をまとめていきます。推理小説のようで、ドキドキワクワクです。

目次
はじめに―機械知能
安さはすべてを変化させる
第1部 予測
第2部 意思決定
第3部 ツール
第4部 戦略
 第十五章 経営層にとってのAI
 第十六章 AIがあなたのビジネスを変容させるとき
 第十七章 あなたの学習戦略
第5部 社会(AIと人類の未来) 

いよいよ第四部、戦略です。どう戦略に組み込むか、一番大事な部分です。先日の記事は以下。

■あなたの学習戦略
AIは人間と同じで、とにかく早く導入して学習をさせた方が良いです。ただ、昨日見たようにトレードオフがあります。本では特に以下二つが取り上げられています。

1.人はどの程度の誤差を許容するか?
2.実世界でのユーザーデータの取得がどれほど重要か?

1に関して昨日議論しました。Google InboxのようなAIは、予測が間違っていた場合に生じるコスト(提案を提供したり、画面の領域を無駄にしたり)も、構成や入力の手間を軽減するメリットの方が大きいです。しかし、自動運転の場合はそうはいきません。予測を間違えた場合のコストが大きいためです。人間が許せる誤差範囲は極めて小さくなります。

では、2を見ていきます。

2.実世界でのユーザーデータの取得がどれほど重要か?
まずに自動運転のことが議論されています。

テスラは、トレーニングには膨大な時間がかかることを理解した上で、すべてのモデルに自律走行機能を搭載した。この機能には、環境データと走行データを収集する一連のセンサーが含まれており、これらのデータはテスラの機械学習サーバーにアップロードされる。テスラでは、ドライバーの運転を観察するだけで、短時間で学習データを得ることが出来る。テスラの車が走れば走るほど、テスラのマシンはより多くのことを学べる。

この辺りは以前取り上げました。人間の判断自体をAIが学習するわけです。

しかし、これだけだと十分ではありません。この学習のやり方は、運転がうまい人の運転方法を初心者が見て学んでいるようなもの。運転がうまくなるには、実際に運転をしなければなりません。

しかし、人間がテスラを運転しているときに受動的にデータを収集するだけでなく、自律システムがどのように動作しているかを把握するためには、自律走行データが必要だ。そのためには、車を自律走行させて性能を評価するだけでなく、存在と注意が必要な人間のドライバーが介入することを選択した場合の分析も行う必要がある。テスラの究極の目標は、副操縦士や監督下で運転するティーンエイジャーではなく、完全な自律走行車を作ることだ。そのためには、実際の人間が安心して自動運転車に乗ることができる状態にする必要がある。

ここにトレードオフがあるそうです。わかりますか?私はわからずでした。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓

ここには巧妙なトレードオフがある。テスラは、より優れた性能を実現するために、実際の状況下でマシンに学習させる必要がある。
しかし、現在の自動運転を実際の状況に置くということは、比較的若くて経験の浅いドライバーを顧客に提供するようなものである。
SiriやAlexaがあなたの言ったことを理解しているかどうか、あるいはGoogle Inboxがメールに対するあなたの反応を正しく予測しているかどうかのベータテストよりも、はるかにリスクが高い。SiriやAlexa、Google Inboxの場合、ミスはユーザー体験の質の低下を意味する。自律走行車の場合、ミスは人命を危険にさらすことになる。

自動運転車の能力を上げるには、現実の街で運転して学習を進める必要があるが、学習中に事故を起こして人命を危険にさらす可能性があると。今、議論されていますね。

自動運転に乗ってその性能をテストする人間は、かなり怖い経験をする?した?そうです。

高速道路を無断で降りたり、地下道を障害物と勘違いしてブレーキを踏んだりする。緊張したドライバーは、自律走行機能を使わないことを選ぶかもしれない。その結果、テスラの学習能力を妨げることになるかもしれない。仮にベータテスターになってもらうことができたとしても、その人たちはテスラが求める人たちなのか?結局、自律走行のベータテスターは、一般的なドライバーよりもリスクを好む人かもしれない。その場合、企業はマシンを誰に似せるように訓練するのか?

現実世界で自動運転車を試す必要がありますが、危険をはらんでいます。また、テストする人間がリスクを取りたがるひとか保守的な人かでも、AIが学習する内容が変わります。この本が2017年時点なので、2021年現在、テスラはこのあたりをうまく解消したのでしょう。

マシンはより多くのデータを得ることでより早く学習し、マシンが実戦投入されるとより多くのデータを生成する。しかし、現実の世界では悪いことが起こり、企業ブランドに傷がつくことがある。早めに製品を投入すれば、学習速度は速くなるが、ブランド(そしておそらく顧客)を傷つけるリスクがある。遅めに投入すれば、学習速度は遅くなりますが、社内で製品を改良する時間が増え、ブランド(そしておそらく顧客)を守ることが出来る。

こう考えると、AIファーストでいく、という宣言はかなりの勇気が必要ですね。まずはGoogle Inboxのような、リスクの低いものから、自社でも始めるのが良いかもしれません。

Google Inboxのように、パフォーマンス低下のコストが低く、お客様の使用状況から得られるメリットが大きい製品では、トレードオフの答えがはっきりしているこの種の製品を早期に実世界に展開することは理にかなっている。しかし、自動車のような他の製品の場合、答えはより明確ではない。機械学習を活用しようとする企業が業種を問わず増えれば増えるほど、このトレードオフをどう処理するかという戦略が重要になってくる。

このちから、どう磨くかです。

また明日。


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