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「体にいいだろう」ということを、頑張り過ぎていないですか?もっと簡単に気分転換する方法

先日、「子どもとヨガ」について教育関係者や親御さん方とお話する機会がありまして、「ヨガって集中力向上や記憶力定着にどうやらいいらしいけど、子どもにヨガをしてもらうのは難しくない?」という結論に至りました。

たしかに、難しいと思います。実際に、僕がヨガを始めたのが12歳の時だったのですが(当時は何も感じませんでしたが、実家の隣がヨガスタジオだなんて、恵まれた環境で過ごしていたなぁと)、その頃は75分間のクラスに参加することが長くて長くて苦痛でした…。スタジオの壁に掛かった時計をチラチラ見て、まだ10分しか経ってないのか…とか思ってました。

10代といえば、多くの子どもにとってはエネルギッシュな年代でしょうし、“心を静かに整えて…”というよりも、“発散したいぞ!“という気持ちの方が強いのではないでしょうか。皆さんの学生時代、どうでしたか?

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当時12歳だった僕は、部活に夢中で(陸上部だったので毎日走っていました)、ヨガを”ストレッチ体操”として取り入れようと思っていたんですよね。しかし、当時の僕は「じっとしていられない性格」&「体が硬い(過緊張)」そんな中学生でして、「ヨガ=苦行」だと思っていました…。週に2回、頑張ってヨガクラスに参加していたことを今でもよく覚えています。

これは、単純に“子どもは発散型が多い”ということを言いたいのではなく、大人の皆さんでも「せっかく通い放題の月額料金でジム/ヨガスタジオを契約したんだから、頑張って行かなくちゃ…!」と、ジムに行くことやクラスを受けることが仕事や義務のように感じ始めたら、なんだか気持ちが進まないことはないですか、、、。

子どもも大人も関係なしに、なんだか気が乗らないやりたくないことでも「体にいいから」「集中力向上にいいから」等という情報を優先しちゃうと、続けることがとても大変で難しいですよね。

たとえば、ジム(スタジオ)に向かう途中で「今日は疲れているしどうしようかな…でも、料金は既に払っているし…」等と葛藤したことがある方は少なくないはずです(「うんうん」という声が聴こえてきそうな…)。


最初は「体を動かして、心身共にリフレッシュして、健康になること」が目的だったはずなのに、”それをしなくちゃいけない”という考えになってしまうと、義務感が強まってしまい、しんどいですよね、、、。“そこに行くこと”が憂鬱になっちゃうと本末転倒のような、、、。

まぁ、でも実際にその場所に行ってしまえば、気持ちがスッと切り替わって、「体を動かせたな、気持ちいいな」と思う方がほとんどではないでしょうか。事前の疲れている自分 vs 事後の気持ちよさを知っている自分が道中で葛藤しちゃっても、事を終えれば、気持ちよさが勝りますね。喉元過ぎれば熱さを忘れるなんて言いますが、ジムの扉をくぐれば…かもしれません。

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さっき「ヨガって苦行だよな…」と少年時代に思っていたとお伝えしましたが、ヨガを学んで、お客様にヨガを指導する立場になった今でも、「たしかに苦行だなぁ」なんて思います。

今、「えっ?」って思いませんでしたか?「いやいや、ヨガって気持ちよさが求められるんじゃないの、、、?」と。

実際に、皆さんが行っているヨガというものは、「苦行」みたいなものなんですけど(って、苦行という言葉が古風でなんだか凄みがありますね…)、それを皆さんが頭の中で「ヨガで体を動かす時間=気持ちいいこと」として処理しているわけです。

・ゆっくり動くこと
・体を伸ばすこと
・バランスを取ること

これらのことって、実は結構なストレスなんですよね。せかせかした気持ちだと、ゆっくり腕を上げたり下ろしたりするのにイライラしてしまったり、体を伸ばして皮膚や筋肉の突っ張りを感じたり、グラグラするような格好でバランスを取ろうとすることって、大変じゃないですか。

でも、それらの「少し大変なこと=ちょっとしたストレス(苦行)」を、ヨガをされている最中の皆さんが「気持ちいい」と思うから、体に良い時間だと感じられるわけです。

ちなみに部活動真っ盛りの中学生の僕は、「体は柔らかいほうがいい」と頭の中では分かっているつもりでしたが、「筋トレした方が効果的じゃないか」と考えていたので、余計にヨガの時間のストレス度が高く感じていたと思います。あと、競争心が強かったので「ヨガのポーズができない自分」に対して、もどかしさがあったんですよね(“うおぉぉ、できない…!体が硬い自分なんて…!”という気持ちです)。

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ヨガはどうしても、リラクゼーションのイメージが先行してしまいますが、「力を抜こうと頑張る」わけではなく、まずは自分の体の力みに気付いてあげることが大事なんです。“適度なストレス(緊張)”を経て、“リラクゼーション(脱力)”がある訳です。

「手から力を抜け」と言われて脱力しようと試みても、“これで本当に力が抜けているのかな…?”と思いませんか。でも、「グッと握りこぶしを作って力を入れて」と言われたらグッと手に力を入れられ、その直後に「握りこぶしをパッと解いて脱力する」と言われたら、フッと手から力が抜けているのを感じませんか。


ヨガクラスに参加されたことがある方は、じんわりと身体を動かした後に、マットにだら~っと寝転がる時間、とても気持ち良くないですか。最後の仰向けの瞬間を気持ち良いと感じる方は、クラスでの“苦行”を“適度なストレス”へと、さらにはその後の”リラクゼーション”へと上手く変換できている証拠ですよ。


「自己消耗」とその対処

自己消耗という言葉をご存知でしょうか?漢字をご覧の通り、疲れている時や気分が乗らない時の状態です。

自己消耗というのは、基本的に、意志力や自制心をすべて使い切った時に起こります。自制心には限界があるので、使えば使うほど早く消耗してしまうものだと信じる心理学者も少なくないとか。

たしかに、ダイエットや禁煙などで「この日までは、○○しないようにするぞ」という気持ちは長く続かないものです…。いやぁ、自分を律することは、精神的にもとても骨の折れる行為ですよね…。

日常生活には常に自分を律せねばいけない機会があり、精神的葛藤が起きています。つまり、誰しもが自己消耗を経験することに。

そこで大事なのが、そのようなときにはどうすればよいか?ですね。

いわゆる気持ちをポジティブにするには、以下の4つの気分要因に対処することが大事であると考えられています。

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身体的要因:

「お昼寝」我慢していませんか?

「昼過ぎになったら眠たい…でも、仕事もあるし、家事も、勉強も……寝ちゃダメだ、昼寝なんて怠惰な証……」とか、思っていませんか。

そんなことありません。睡眠の研究では、私たち人間の「覚醒時間」がある程度決まっていまして、例えば、朝の6時に起きたならば、昼の2時3時には頭の中の覚醒物質が減少するのです。

夜にしか寝ない生き物は、人間やオラウータンなどのごく一部の種だけのようでして、起床から8時間後に覚醒度が低下することから、「もしかして人は昼と夜に2回分けて睡眠を取る生き物ではないか…?」という見方もあるようです。

もし、あなたがお昼寝できる環境にいるのであれば、迷うことなくお昼寝してみてください。お昼寝が後ろめたいですか?全くそんなことありません。だって、人間がそういう風にできているんですもの。


体にいい食べ物しか口にしない教ではありませんか?───好きなものをたっぷり食べる

また、気分は、食べ物からの影響をかなり大きく受けています。昔、ある研究グループが「食べるのが好き/嫌いが関係するのか?」それとも「腸に栄養を届けることが関係するのか?」ということで、被験者の胃に直接、脂肪酸を注入するという実験をしました(すごい発想ですよね…笑)。脂肪酸を注入されると、怒りや悲しみの感情が半減するようで、MRIでもリアルタイムに観測されたようです。

「体にいいものを食べなきゃ…!」と思うあまり、食事することの楽しみが減っていませんか?時には、「心にいい食べ物」を意識して摂られてみてください。チョコレートケーキや、ハンバーガーだって、食べたい時に食べてあげると、心のいい栄養になりますよ。大好きなものを我慢せずに食べてあげることや、大好きな人と一緒に食事する時間を大切にするなど、「美味しいなぁ」「幸せだなぁ」と思いながら食事することで、セロトニンと呼ばれる幸福ホルモンも出て、あなたのストレス値もぐっと下がることと思います。

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感情的要因:

悲しいから泣くのか、泣くから悲しいのか───

泣ける映画を観たり、感動する本を読むことで、涙を流し、感情を一度出してあげることも気分をスッキリさせてくれるテクニックのひとつです。泣いた後って、なんだか視界がクリアになったり、とてもお腹が空いたりすること、ありませんか。別に悲しい気持ちではない時でも、モヤモヤしていたり、ずっと考え事をしていると頭が煮えたぎってしまい、なかなか副交感神経がオンになってくれません。大人になったら我慢することばかりで大変ですが、時たま、人前では出せぬ感情を出してあげることによって、たったそれだけで気分転換になるかもしれませんね。

徳を積むと相手にも自分にもいいことが

私たち人間は、常に人と人との関係性を大切にしながら生きています。人から感謝をされて嬉しくない人はいないと思いますが、最近、誰かの為に何かをしたことはありますか?ボランティアや寄付など、いわゆる“良いこと”をするだけで、私たちの脳は快楽を感じるといわれています。これって凄くないですか。慈善を行った相手が喜んでくれるだけでなく、自分も幸せを感じるんですよ。

加えて、「自分の過去の失敗」や「未来の仕事の心配」など、考えすぎてしまって気持ちが落ち着かない時に、「誰かの為に」と、自分ではなく相手に意識が向くことで、気持ちがスッキリすることもあります。もちろん、他人の事ばかり考えすぎてしまうと、それはそれで疲れてしまうのですが…、いい塩梅で「誰かが喜ぶこと」を生活に取り入れると、とても良さそうですね。


環境的要因:

旅に出よう、きっとモヤモヤが小さくなるから───

普段、どれくらいの頻度で移動していますか?また、新しい場所へ足を運んでいますか?休みの日も、通勤のときと同じ電車に乗ったり、同じ行動パターンだと、なんだか休みなのに仕事のことをついつい考えちゃったりと、気が休まらないですよね…。

いっそのこと、普段の生活圏から出てしまうのをおススメいたします。休みの日には、好きな場所に行きましょう。温泉、レストラン、本屋、ご自身が行くだけで満足感を得られるような場所があると、とても効果的な気分転換テクニックになりますね。体が移動するだけで、一気に感度が変わり、普段見慣れない景色や人や物に意識が向きませんか。遠い地から、普段の自分の生活圏を客観的に見てあげると、今までモヤモヤしていたことも「ふーん、なんだ、そんなことか」と思えるかもしれませんね。

また、移動が難しい場合でも、ネガティブな情報を避けてあげることが、とても有効的です。テレビやスマホで流れてくるニュースや、悲しくなりそうな音楽をなるべく遮断したり、苦手な人の顔を見ないようにしたり(これが出来れば職場からそもそもストレスが無くなりますよね…!)。

なにとなく繰り返してしまう自分の行動パターンを、ちょっと変えるだけで、多くの発見がありそうですよ。


行動的要因:

いつも身近にいる5人の人間が、私というものを表している───

好きな友達、恋人、家族と会いましょう。そして多くの時間を過ごしましょう。よく笑う友達や、幸せな人の近くにいるだけで、なんだか元気になっていくような経験は、誰しもがあるのではないでしょうか。ずっと一緒に居る友達の癖が自分にもついてしまうように、私たちは自然と相手とシンクロするようにできています。

ミラーニューロンって聞いたことありませんか?目の前の相手の行動を、あたかも自分が行っているように頭の中で錯覚するんです。大笑いしている人を見て、つられて笑った経験があるんじゃないかなと思います。なんだかよく分からないけど、目の前で爆笑されたら、思わずこっちまで笑っちゃいますよねぇ。

また、人との繋がりで繁栄してきた人類にとって、孤立する時間が長ければ、全く運動をしないのと同じくらい良くないようです。ちょっとした世間話をするだけでも、脳は活性化されます。話すという行為自体が、他人との協調作業になり、脳にとってはワクワクすることなのです。話す人がいないなぁ…という時でも、珈琲を飲みに出かけたり、猫や犬と触れ合うだけでも効果があるようですよ。

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以上、皆さんがちょっと疲れたな…という時に、少しでも参考になれば幸いです。


※「自己消耗」に関しましては、こちらの記事を一部参考させていただきました。この記事、とても面白くて役に立つことを書かれておりますので、どうぞご覧ください。(参考:「嫌な気分になった時に試してほしい、今すぐ気分を持ち上げる方法|原題 How to Use Your Mood to Work Better」Andrea Ayres(訳:的野裕子))

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