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フードエッセイ『アイスクリームが溶けぬ前に』 #4|かつ榮(裾野)


どうしても、今日食べたい料理がある。


そんな瞬間が、誰にでもあるだろう。


そう思った瞬間、お金がかかるとか、いくまでに時間がかかるとか、一緒に行く人がいないからとか、そういったことは考えない。湧きあがってきた思いにフタをせず、ただそれに従うことにしている。


起床してすぐに、「そろそろかつ丼が食べたいな」という心の奥からのメッセージが、脳内に受信される。そして瞬時に、近隣でカツ丼が食べられそうなお店の検索がはじまる。一番最初に出てきたお店、それが純和風の落ち着いた一軒家のとんかつチェーン店(かつ榮)だった。

ただ、カツ丼が置いてあるイメージが強烈にあったわけではなく、
とんかつ・海老フライ・ヒレカツを売りにしているなら、メニューの中にかつ丼だってあるだろうという見立て。スマホでメニュー表を確認したわけではないが、絶対的な信頼をしてランチの時間がやってきた。


メニュー表を見て、カツ丼の文字がないことに冷や汗を感じるも、
一番右下に、「ロースカツ鍋」の文字と料理の提供写真が。

それを見つけた瞬間、「あ、よかった……」という無言の安堵感が込み上げてくる。ここはカツ鍋スタイルなのねと。


20代半ばに入って、トンカツよりもヒレカツを好むようになったり、糖の吸収を抑えるために千切りキャベツから食べたりと、食習慣のシフトチェンジが増えた。あと、カルビやロースよりも、ハラミやタン塩を食べるようになったのも大きな変化だなぁ。


といろいろ考えている間に、ヒレカツ鍋が湯気のベールに包まれながら登場。ここで、会場のボルテージはマックスに近づく。

ご飯とキャベツおかわり自由」という文字に年々弱くなっています。。
そして、「味噌汁を豚汁に変更もできます」が最近とても嬉しい一言になりつつある。

ヒレカツ鍋の下を見てみると、
うどん入ってるじゃん!」とプチサプライズされた気分に。

さらには、ささがきになっているごぼうを見つけて、かつ鍋にごぼうって相性大丈夫…?とはてなマークが浮かんだり、ご飯のお代わり自由だから、茶碗小さめのタイプなのねと、自分で自分を納得させたり。


なんて考えながらも、かつ鍋は熱々を食べるのが一番だ。

次なるカツ丼との出会いに胸を膨らませて、冷めぬ前にいただきます。




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