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実験記録を本にする「運動ゼロ、カロリーを考えずに“やせる食生活”」

「私たちが実証した、“食べてもやせる”方法を伝えたい」
ある大学教授と管理栄養士からこんな提案を受けました。
 
ダイエットの本は、世の中にたくさんあります。
私も編集者として、何冊か担当したことがあります。
でも、「これは、本にしたい!」と思いました。
 
こんにちは、高橋ピクトです。
池田書店という出版社で、実用書の編集をしています。
今回は、とあるダイエットの本を編集したお話です。
 

どんな人が、どんな経緯でやせたのか?

企画時のお話はこんな感じでした。
 
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・在宅勤務で人生最大の体重になった大学教授が、
外出先で段差につまずき「両足」を骨折。

 ・はじめての入院生活。その間、病院食で2kg減。

 ・食べることが好きな研究者として興味がわき、
退院後は病院食を真似て、ランチョンマットの上にお皿を並べ、
「好きなものを食べてやせる」食生活をスタートした。

 ・同僚の管理栄養士さんにアドバイスを依頼、2人のチャットが始まった。

 ・それから2か月で、さらに3kgの体重減に成功。
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やせるきっかけとなった出来事が壮絶で、まずそこに驚きました。
でも、それだけで出版企画にはできません。私が最も興味をもったのは、大学教授と管理栄養士「2人のチャット」でした。
たとえば、2人のチャットはこんな感じでスタートしました。

大学教授の先生が3食を報告して、
管理栄養士さんにアドバイスをもらっているやりとりです。

大学教授の堀口逸子先生が、管理栄養士の平川あずさ先生に食事を報告し、アドバイスを受けるというのが基本的なやりとりです。
 
でも、さすが研究者のお二人です。だんだんと「どうすればやせるのか」という、ダイエットの本質に迫るやりとりに発展していきます。
 
堀口「結局、1日どれくらいの量を摂るのがいいんでしょう?」
  「難しいのはダメですよ!メンドウだし、私続きません」
 
平川「1日あたりごはん300g、肉・魚・卵300g、野菜300gで
   実践しましょう」
  「大事なのは続けられること、どんな料理でもOK」
  「ハードルが上がる細かいルールはなし!」
 
といった感じで、ルールは「量を把握する」だけ。しかも、「運動ゼロ」「カロリーを考えない」という、普通ならあり得ないようなダイエット法を発見していきます。

え!?いいの?
ダイエットでも食べる!食べる!


そして、2人のやりとりで痛快なのは、ダイエットをしているのに「好きなものを食べる」という点です。以下、2人の言葉を抜粋します。
 
堀口「今日は仕事帰りに買ったトンカツが夕ご飯!」

堀口「平川さん、ヨコイのパスタソースって知っていますか?」

平川「(ランチパックを見て)タンパク質が摂れそうでよいと思います!」

堀口「かわいいクッキー缶!ほしい!食べたい!」
平川「クッキーは個包装ならOK!」
 
というような感じで…
とてもダイエットを目指している人たちの会話とは思えないんです。
正直、お二人のチャットを見て、笑ってしまいました。
 
ちなみに、堀口逸子先生はInstagram(@horiguchiitsuko)で毎食記録していらっしゃるのですが、やっぱりダイエットしている人の食事とは思えないのです…。

堀口先生の、最近の食事記録です(Instagram)。
天ぷらそばにたこ焼き、おいしそうなお肉。
コンビニに外食、お酒。これで体重は維持されているんだから驚きです。 
 

私がこの本を世に出したいと思った理由は、
「食にこだわることは、健康的な食生活に通じる」と伝えたかったからです。ダイエットは通常、食べる楽しみを我慢する行為です。
でも、2人の発見した方法を知れば、“食べることをあきらめずに”やせることができる。

食べるのを我慢して一生懸命やせたけど、リバウンドして、あの苦労はなんだったんだ…という経験、誰にでもあるんじゃないでしょうか?
あの絶望を味わうことがなくなる。
これは、出版の意義があると思いました。

「ある意味、実験記録です」


これは堀口先生の言葉。
そうなんです。二人のやりとりは研究者の実験のようだったのです。
「報告→アドバイス→実践→報告」の繰り返し。二人のチャットの文字数は半年間で50万字を超えていました。ものすごく貴重なテキストですが、このままだと二人のやりとりの面白さや実用性を感じ取ってもらうには、時間がかかってしまいます。
 
どんなふうに本をにしようか?
考えて出した結論はマンガ実用書でした。
 
マンガの執筆をお願いしたのは、「いこまん」「たまごかけごはん」(徳間書店)などで、食へのこだわりをお話と絵に落とし込むのが抜群にお上手な木村いこさん。

木村いこさんのマンガ。
キャラクターはかわいいし、食事もおいしそう。骨折痛そう…。 
 

「食べることが好き」という気持ちが
チームをひとつにした


お話してみると、木村さんも食べることが大好きなことがすぐにわかりました。堀口先生、平川先生、木村さんと私の4人で行ったシナリオ打ち合わせでは、堀口先生にオススメのお取り寄せを紹介してもらったり、それぞれに好きな食べ物や、お店の話をしたりと、お腹が空く打ち合わせでした(苦笑)。
 
でも、この打ち合わせを何度か行うことで、お二人の実験記録が、堀口先生の「ダイエット記録と食エッセイの中間」のような、かわいらしいマンガになっていきました。
 
ただ、今度はマンガだけではお二人の研究者として伝えたいことが伝わりきらない。お二人が伝えたいのは、エピソードだけでなくダイエットの原理原則です。ということで、文章による解説や、写真や図で解説するページを設けました。
 
デザインは相原真理子さん。実用書をデザインするのがお得意なのもありますが、今回は新しいものを作りたいという気持ちが強かったので、本音で話し合えると思い依頼しました。何度もお仕事をご一緒しているので、気心も知れています。
 
本格的な情報を、読みやすく、信頼性を損なわずに紙面に落とし込んでくださいました。

マンガの後には、堀口先生の「やせるコツ」や
平川先生の「実践的な栄養知識」の解説が掲載されています。

今回の本には、マンガ、解説のページのほかに、写真のページも設けました。なぜなら、堀口先生の実際の食生活を伝えたかったからです。撮影はカメラマンの原田真理さんにお願いしました。
原田さんには「豪快バーベキューレシピ」というアウトドアレシピ本や、「食トレ」「新しいタンパク質の教科書」のような栄養解説本の撮影を依頼していて、食べ物や料理の撮影ではいつもお世話になっています。

器を選び、料理をおいしそうにもりつけ、秤に乗せ、撮影。
1枚の写真にいろいろな試行錯誤があります。

 今回はダイエット本なので料理をおいしそうに撮ることはもちろん、わかりやすく撮ることも大事。その工夫を一緒に考えてくれたおかげで、理解しやすい紙面をつくることができました。
 
大学教授の堀口先生、管理栄養士の平川先生の2人の実験記録は、
マンガ家、デザイナー、カメラマン、編集者によって無事に本になりました(下画像)。皆の共通点は、食べることが好きなこと。お互いの知識も、経験もバラバラですが、そこ一点でひとつになれた気がしています。

帯には「200日で-7kg」とありますが、
堀口先生は、約1年で10kgのダイエットに成功したそうです。今では、飲み会が続いたり、帰省しておいしいものを食べたりしても、体重が維持できるとおっしゃっています。
イベント事が続く、これからの時期にピッタリかもしれません。
 
食べるのが好きな方に読んでほしくて、
食べる喜びを大切に、皆で作った本です。
よろしければ、お読みください。
 
文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しい腸の教科書』『コリと痛みの地図帳』などの健康書を中心に担当。「生活は冒険」がモットーで、楽しく生活することが趣味。ペンネームは街中のピクトグラムが好きなので。
今回、久しぶりに編プロさんが不在の中で編集をしました。実用書の編集実務は本当に大変ですね…。堀口先生、平川先生、木村さん、スタッフの皆さん、編集部の皆にも協力していただきたがらの作業となりました。ご協力いただいた方々、本当にありがとうございました。

Twitter @rytk84

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