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絶望の向こう側で得たもの

とてつもない鬱が襲ってきた

悲しくて堪らなくなって

いつ泣き出してもおかしくなかった

今すぐにでもここから逃げ出すしかない

でも本当に逃げていいのだろうか

そんなことを考えながらなんとか堪えて

今日一日を生き延びた

やっと仕事を終えて家に帰り

暗闇の中で休んでいると

一つの対極的思考が芽生え始めた

それはとても楽天的で

根拠もないのに安楽的で

でもとてもおおらかで癒しがあって

何より余裕があって心地良い考え方であった

なんとかなるだろう

なるようにしかならないだろう

自分ならなんとか出来るだろう

有り体に言えばそういう状態であったが

そんな生やさしいものではなかった

地獄にて目醒めた破戒僧のような境地であった



以前に世間で前向き思考として有名な女性が

貴女はなぜそんなに前向きなのかと尋ねられ

こう答えていたのを思い出した


そうしないと生きていけなかったから



世間一般では前向きな思考が良いものとされる

前向きになるための自己啓発本もたくさん出ている

しかしそれらは結局のところ

前向きな人間を演じるための技術が記載された

そうした方が良いと推奨している本でしかない



しかし今の私は違う

より良い幸福の為に自己啓発したのではない

私が生きていく為には狂気を得る他に無かったのだ

私が死なずに生きる為には

安楽的で楽天的で狂気的になるしかなかったのだ



あのままでは死ぬしかなかった私の心を

生物としての私が死なせないようにと

半ば強制的且つ本能的に導いたのだ


これは自己研鑽や選択により得たものではない

地獄で生きる為に必然性をもって会得した思考なのだ



私は本当に運がいい

私はすっかり壊れてしまったが

飛び散った破片は悍ましく綺麗な形であったのだ

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