「黄金比」とは

「黄金比」とは、下図をもとに説明すると、2本の線分間で短いほうの線分(bc)と長いほうの線分(ab)の比が、長いほうの線分(ab)と2本の線分の合計(ac)の比と同じになる場合の比率のことである。

計算式であらわすと「bc/ab=ab/ac=0.618」になる。

「黄金比」は人間にとって最も安定して、美しく感じられるとされ、一般的によく知られている「１：1.618」の比率になる。

自然界や意匠に内在する「黄金比」

自然界や創造物には「黄金比」が内在している。
自然界で言えば、ひまわりの種や野菜のロマネスコ、貝殻やハリケーンの衛星写真、人間も含め多くの動植物は「黄金比」で構成されている。（図1）そのため、無意識のうちに美しいと感じられる美的嗜好なのかもしれない。

（図1）黄金螺旋
「黄金長方形」にあるすべての正方形の角から対称する角まで曲線でつないでいくと、渦巻き状の「黄金螺旋」を描くことができる。

建造物では、古代ギリシャの彫刻家ペイディアス（紀元前490年頃 - 紀元前430年頃）が初めてパルテノン神殿建設時に「黄金比」を用いたと言われている。（図2）

（図2）『パルテノン神殿』
ギリシャ共和国、紀元前438年完成。底辺と高さの比率が「黄金比」になっている

以降、芸術、建築などあらゆる分野の意匠に「黄金比」が取り入れられている。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画作品にはよく「黄金比」が使われており、『モナ・リザ』は、顔の縦横比を1：1.618にしたと言われている。弦楽器製作者のストラディバリは、ヴァイオリンの寸法に「黄金比」を利用している。パリの凱旋門、シャルトル大聖堂、サグラダ・ファミリア大聖堂、唐招提寺金堂は、全て「黄金比」を示している。

現代においても写真やプロダクト、広告、ウェブサイトのデザインなどでも「黄金比」を利用することで、より魅力的なビジュアルを生み出している。その一部を紹介する。

Appleのロゴマーク

Appleのロゴマークの「かじられたリンゴ」のデザインは手書きで作成されたが、後にブラジルのデザイナーThiago Barcelos氏によって「黄金比」で構成されていることを発見し解明した。（図3）
ロゴを制作したRob Janoff氏はフリーハンドで描いたのだが、美しいと感じたバランスが結果的に「黄金比」だったと言うのは興味深い。

（図3）Appleのロゴマーク
1976年　ロブ・ジャノフ（Rob Janoff）

Twitterの小鳥ロゴマーク

Twitterの小鳥ロゴマークは、フォルムのすべての要素が円の大小に沿って描かれており、それぞれの円の比率が1：1.618の「黄金比」で構成されている。（図4）

（図4）Twitterの小鳥ロゴマーク
2012年に変更されたデザイン

Googleのロゴマーク

Googleのロゴマークは、大小２つの○で構成されており、その直径はほぼ1：1.618で作成されている。（図5）

（図5）Googleのロゴマーク
2015年に変更されたデザイン

賛否両論の「黄金比」説

「黄金比」は、本当に人の潜在意識の美的嗜好に訴えるものなのか、根拠が曖昧として否定的な意見もある。1997年に国際経験美学会誌の黄金分割特集では、この実験結果を「永遠に葬るもの」とする見解が掲載された。

しかし、感覚的なものに根拠を見つけ証明するのは難しい。先に述べたAppleのロゴの「黄金比」は偶発的な産物だったが何故この形になったのか。創作したRob Janoff氏は何らかの直感が働いたはずだ。直感とは不確かなものだが過去の経験の蓄積がなせる技だ。自然界に内在する「黄金比」を無意識のうちに見聞きし、脳に潜在記憶として蓄積されていたとしたら、何らかの影響を受けてもおかしくない。

私たち身体の造形も例外ではない。レオナルド・ダ・ヴィンチは、『ウィトルウィウス的人体図』を理想的なプロポーションとして描いており、中心の男性の手足が円と正方形に接しており、円の半径と正方形の辺の長さの比が「黄金比」であると言われている。（図6）もはや、身体に刻まれた本能的な感覚なのである。

（図6）『ウィトルウィウス的人体図』
ドローイング　1487年頃　
レオナルド・ダ・ヴィンチ（Leonardo da Vinci　1452- 1519）

「黄金比」は、美的基準のひとつとして今でも賛否が分かれるが、いずれにしても、過去から現在そしてこの先の未来までデザインに影響を及ぼし続けていることは間違いない。

参考サイト
黄金比 - Wikipedia
自然界にある美しいデザインの法則「黄金比」
デザインに黄金比を取り入れる ヒントをお届けします！
デザインを美しくする「黄金比」について理解しよう！（身の回りにある黄金比）
まとめ：黄金比が使われている有名アート１５選
レオナルド・ダ・ヴィンチと黄金分割　ルネサンス絵画が目指した理想美
印刷いろいろコラム
世界に愛されるアップルの｢ロゴ｣はこうして生まれた 
Twitter - Wikipedia
Googleの新ロゴのデザインの完成度がとてつもなく高い件について