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コロナ禍で難聴の妻が出産したときの話

昨日6/14に妻が出産しました。体重3078グラムの女の子。予定日より4日遅れましたが、無事産まれてくれてとてもほっとしています。

ここ半年、世間ではコロナウイルスが大流行。そんな中での出産、妊婦生活は気が張り詰めて、ストレスフルな毎日でした。とりわけ、うちの妻は難聴の為、コロナ禍での出産は人一倍苦労をしたのではないかと思っています。

マスクされると会話がわからない

難聴には、音が小さく聞こえるような「伝音性難聴」と音そのものの判別ができなくなる「感音性難聴」の2種類があります。彼女は後者で、普段は口を読みながら人との会話をしています。これが何を意味するかというと、コロナ禍でみんながマスクをしている状況では、周りが何を言っているのか一切判別ができなくなっちゃうんですね。

よくマスクをしながら大きな声で伝えようとしてくださる方もいるのですが、「感音性難聴」の彼女はこれを一切理解できません。しかし、そんなことは関係なく、「大きく言ったから伝わっているだろう」と誤解されたまま会話が進められていくのはよくあることでした。

みんなが私を見て会話をしてくれない

病院での出来事。

・都内をお腹がでてる妻一人で移動させるのも不安
・コロナ対策で病院で診察できる時間も限られてしまっているので、聞き逃しがないように
・大前提として私も行きたい

これらの状況から、私は毎回付添という立場で、診察にいってたのですが、とある日妻に言われたのが「みんな私を見て会話してくれない」の一言でした。

個人的には全面的にサポートするつもりで、診察後に言われたことを妻に伝えようと聞き役に徹してたつもりなのですが、私がヒアリングしようとするあまり、だんだん関係者の方々が私を見てしか会話をしなくなっていったのです。

リアルタイムで思っていることが伝えられず、しかも自分を見て会話をしてくれない状況は妻にストレスをかけ、とある日に大爆発を起こすことに。

その時は私も気が張っていたので、大喧嘩となってしまったのですが、冷静に考えると、周りが何を言ってるかわからない中で、会話が進められていくのは心細いものがあっただろうと理解できます。

その後病院には状況を伝え、しっかり妻の側をみて話しかけてもらうようにしました。

余談ですが、国際結婚をしている夫婦でも、多くのシーンで、「日本人の方しか見てしか話しかけてくれない」ことなどはよくあるそうです。何かを伝えるときに効率性だけ考えず、人の存在を認めた上で語りかけるのは想像以上に大事なことなんだなぁとこの歳になって気付かされました。

ツールを使えばいいだろうという誤解

マスクが取れない今回のお産ではGoogleさんの展開する「音声文字変換」に大変助けられました。このアプリは話した言葉をそのまま文字変換してくれるアプリで、特にお産の時に短い期間で、大事なことを伝えるツールとして重宝しました。

一方で、妻は途中までこのアプリを使うのをずっと嫌がって、筆談を希望していました。というのも、彼女は仕事の現場で、このアプリを使おうとして、うまく翻訳できずに仕事にならなかった経験を重ねていたからです。

このアプリの実際の翻訳精度に驚く人は多いですが、例えばリモートの会議でほとんど声は聞こえているけど通信が遅くてすこしずつ会話がとぎれたり、ときに会話が一切聞こえなくなるようなシーンをイメージしてみてください。実際音が他にある環境だとそんくらいの精度です。これらの状況で会話が成立しづらいのはなんとなく想像していただけるかと思います。

しかし、そんな状況は想像せず「これ超便利!難聴の人も使えるじゃん!これ使えば理解できるよね?」となり、ひたすらアプリに話しかけ、翻訳が間違ってるのに会話をすすめられることがよくあります。私もそのうちの一人でした。

本人にとってベストなのは「しっかり本人に伝ったことを確認できて、次の会話に進んでいること」です。話しかけるのはアプリに対してでなく、人に対して。人は便利なツールがあるとそれに頼って他者への配慮を忘れがちになります。

ただ、緊急度の高い状況では筆談をする余裕もない為、解決策として、原則会話のときは「音声変換アプリ」を使うが、「伝える側と本人が一緒に文字起こしした結果を見て、間違いがないことを確認した上で次の会話をすすめる。正しく翻訳されない状況が続けば筆談に切り替える」というルールを敷いた上で利用するようにしました。(このルールを聞いてくれない方もいて今も苦労しているけど)

このお産を振り返って私自身、とても多くのことを学びました。人の苦労とかを想像するのが苦手なタイプなのですが、それでも実際に妻のリアルな悩みに一緒に向き合って解決策を考えていく中で、人として少しだけ成長させてもらったのかなと思っています。

産まれてきた赤ちゃんの名前

赤ちゃんの名前は「あかり」です。コロナの情勢で先が見えない中、そしてあなたのお母さんは周りがもごもごして何いってるかわからん中、あなたの存在が私やお母さんにとってはちょっとした未来を照らすあかりのようなものでした。

そして、これから生きる未来があかるくなりますようにという願いをこめて。

あと、お腹にいるときずっと「あかちゃんあかちゃん」と話しかけてたのでちょうどいいとも思いました。あなたは「あかちゃん」です。漢字はこれから決めます。

素敵な一生を過ごせますように。

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