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Howではなく、Whyについて語ろう

こんにちは! 米田 @ マーケティング変革実行中です。

仕事で、プライベートで、人に何か頼む際に「ああしてくれ」「この方法でお願い」等、具体的な方法論について述べてしまうことがよくあります。しかし、特にコンテキストを共有していないメンバーからは「なぜそれをする必要があるのか」と反発を受けることもあります。この記事では、社内メンバーへの、顧客へのコミュニケーションにおいて、より相手を説得しやすくするための手法について記載します。


5W1Hの中のHowとWhyに注目、人はHowで語りがち

物事を語るには5W1H (Why, What, When, Where, Who, How)を特定して伝達する必要があります。このうち、What, When, Where, Whoの4Wはお題を決めた時点で伝える側も伝えられる側も明確に意識する内容です。しかし、問題はWhyとHowです。多くの人は、4Wを語った後に、すぐにHowの話をして、そのままWhyに触れずに終わってしまいます。

Whyを伝えなくてもHowさえ伝われば、お題について日頃からよくコンテキストを共有している仲間であればWhyを察して作業をしてくれるかもしれませんし、それがなくてもHowさえ知っていれば作業に移ることは可能なので、理論上仕事をすることは可能なはずです。しかし、Whyの情報がないと、伝えられる側には納得感がなく、共感をしないまま作業だけ行ったり、ときには伝える側に反発してくる可能性があります。

これを避けるには、Whyの情報をきちんと伝える必要があります。しかし、時には伝える側もこのWhyはよく考えていない、もしくは知らないという状態があります。すると、そのお題やそれにまつわる作業は実は無駄だったということも起こってしまうわけです。大抵の人は、自分が関わるお題には、自分がかける時間や労力に見合う意義や理由があってほしいと思うものです。つまり「人が行動を起こすには、それをやる意義や伝える側の信念 (=Why)を伝えることが重要」なのです。

これは、仕事で組織内や顧客に語りかけるときにも、プライベートで家族や友人に語りかけるときにも意識的に行うべき重要なことです。

ゴールデン・サークル理論

この問題提起は、2009年にマーケティングコンサルタントのサイモン・シネック氏がTED Talks 『優れたリーダーはどうやって行動を促すのか』の中で提唱したゴールデン・サークル理論と呼ばれるものの中で行われています。サイモン氏によると、優れたリーダーや組織では物事を「Why」⇒「How」⇒「What」の順で伝えており、これにより共感を生むことができるということです。それとは逆に、多くに人や企業では「What」⇒「How」(⇒「Why」)の順で伝えています。

また、このことはゴールデン・サークル理論が有名になる前から、いろいろなところで様々な形で言われてきている教えと同じです。例えば「上級管理職になるほど、部下の管理や作業方法の指導 (=How)ではなくビジョンを語る (=Why)ことにフォーカスすべき」とか、「顧客提案の際は製品紹介 (=What)から入るのではなく、市場環境や顧客課題 (=Why)の説明から入れ」などです。Whyを先に語るほうが共感が得られやすい、ということは昔から様々なリーダーにより様々な形で語られています。

※ 物事を伝えるときは Why → How → What の順番ですが、物事を思考・整理するときは Why → What → How の順番で行うのが良いとされています。つまり、思考・整理の時は How と What の順番が入れ替わります。これは、仕事を行う際には Why と What は決められていることが多い一方、How は方法論であり人それぞれの任意性があるため、How を最後に整理することで思考・整理が行いやすくなるためです。

日常での具体例

我々はどこかでこれらの理論や教えを聞いたことがあるかもしれませんが、日常生活ではついついHowやWhatを語ってしまいます。これは前述のように、HowやWhatよりもWhyのほうが本質的に難しいためで、我々は無意識のうちにWhyを語ることを避けているのかもしれません。

また、仕事やプライベートで意見が合わずに啀み合っている時は、たいていHowの違いを話していて、Whyに立ち戻って考えると意外と譲歩できたり解決できたりするものです。(ある人の近くにいる人はやり方 (=How) は違っても大抵同じ目的 (=Why)を共有しているはず)

私も自分がHowを語るだけに陥らないように普段から注意するようにしているものの、時にWhyを忘れた話をしてしまった時は後で反省するようにしています。それだけ気をつけないと、人はついつい安易なHowだけを語る方に流れていってしまいます。

以下、「Howではなく、Whyについて語る」べき具体的なシーンをいくつか挙げてみることにします。

顧客への提案プレゼン

顧客と営業との関係性は会社や組織によってさまざまな形があります。日頃から決められたルートを回って決まった取引をする形から、顧客側から声をかけてもらったことを一生懸命実現する形もあります。しかし、特に法人営業の世界においては最近は「チャレンジャーセールス」型の営業が求められてきています。営業は、顧客のビジネスに深い理解を持ち、顧客の価値について洞察、言われたことに縛られない視点を持ち、顧客や上司に物おじせず働きかける事ができる人材であることが求められます。

そして、顧客に提案をする際には、営業が理解している顧客価値をもとに、「顧客が気づかなかった、顧客が市場で戦うための知見 (=Why)」をまず提供して共感を得るという方法を取ることが良いとされます。

セミナーやデジタルでのコンテンツ

マーケティングが用意するコンテンツにおけるストーリーの構成として、プロダクトアウト型の話をするのではなく、顧客が関係している市場状況や課題 (=Why) を示し、それを解決することで顧客がより強力に市場で戦うことができることを説きます。それにより、顧客の共感を得て、その後のソリューション紹介のストーリーに引き込みます。ロジックとしては、前述のチャレンジャーセールスと同じ構成であるといえます。

社員総会での社長のスピーチ

社長が全社員の前でスピーチをする際には、「ああしろ」「こうしろ」といった枝葉末節を説くのではなく、会社としての方向性、自分の信念などのハイレベルなビジョン (=Why)を語ることに終始し、Howについては自分では語らず部下を登壇させて代わりに語らせることが良いとされます。シニアリーダーにはシニアリーダーの役割、現場リーダーには現場リーダーの役割があり、それらをきちんと分業してメッセージを発することで共感を得やすくなります

これは部門総会で部門長が語るときも同じであり、また、聞き手が社員でなく外部の顧客であるとき (=会社のマーケティングイベントなどのキーノート) も同様です。

部下への指導

あなたが管理職である場合、部下に指導をする際には具体的な方法論 (=How) の説明をする前に、必ず理由 (=Why)から説明するようにします。上級管理職の場合は、理由やビジョンの説明に徹し、Howは現場の管理職に任せるようにします。

同僚とのディスカッション

同僚とのブレインストーミングやディスカッションを行う際に、Howのレベルの話をする前に、必ず何故これについて論じるのか、何を解決したいために論じるのか (=Why)などを明らかにしておきましょう。Howのレベルでは人によってやり方が異なってくる可能性があるため、Howの話だけをしても越権行為になったり話がまとまらなかったりする結果になりがちです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。まさに日常の至る所で「Howではなく、Whyについて語る」べきシーンがあることにお気づきになったのではないかと思います。メンバーひとりひとりがこのことを日頃から実践していくことで、部門全体の仕事の仕方をより高いレベルに引き上げることが可能になるでしょう。あらゆる組織でリスキリングの題材のひとつにもするべきお題だと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!それでは、また!

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