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【architect】谷口吉生に学ぶ

谷口吉生氏という建築家をご存知だろうか?

建築を生業としている者として「谷口吉生氏をごぞんじだろうか?」などと容易く口にしてはいけないような、日本を代表する大御所の建築家である

これまた巨匠建築家である故谷口吉郎氏を父親とするサラブレッドでもある

以前私のnoteでも実作を紹介させて頂いたことがある

上野にある法隆寺宝物館



金沢にある鈴木大拙館


今回は新たに2014年に完成した
『京都国立博物館 平成知新館』を見てみたい

場所は京都では有名な三十三間堂の向かいに位置する

敷地は非常に広い
受付があるエントランスは、どこか神社にある門や鳥居のような役割を担っており、遠くの本館が額縁の中にあるように見える

そこから一直線に伸びるアプローチを抜けて本館へ向かう

谷口建築お決まりの水盤がある
「ここから写真を撮るとインスタ映えしますよ!」と言わんばかりの位置に水盤が設けてあるのはお得意の手法だ

そして外観は、ボックスとそれに付属する縁側的なピロティである
細長い柱と水平に長い庇
水平垂直の直線美が美しい

内部は障子を思わせるような柔らかな乳白色のガラスから優しい日差しが入ってくる
下部は水盤を眺めることができる

展示スペースは基本的にはボックスの箱に収められて、光の空間と展示スペースを行ったり来たりしながら鑑賞する


巨匠相手にたいへん恐縮なのだが、この建築でも目新しい突飛なデザインは見当たらない
素材にしても形態にしても今までの谷口氏の建築に見られる手法を扱っているように思う

建築は土地という唯一無二の条件があるため、絶対に同じものはない
この建築においても、この博物館ならではの独自の試みやシステム、最新の設計があることだろうし、新たなデザインが多々なされていることだろう

だが根本にある谷口氏の建築の要素となるものは変わっていないように思う
先にも書いたように以前にも見たような手法は多数見られる

例えば谷口氏の有名な建築で『ニューヨーク近代美術館本館』ではフレームを組んだ形をしている

香川の丸亀にある『丸亀市猪熊弦一郎現代美術館』でも同じくフレームを組んだ外観が使われている



(写真はこちらのサイトから引用)


同じような事は建築家の安藤忠雄氏にも言えるだろう

毎回コンクリート打放しの建築である
水盤やガラスや鉄との組み合わせ
幾何学による設計
それぞれコンセプトや用途、手法は異なるが根本にあるものは揺らいでいない
「またこのデザインやってるわ!」
と思うこともある


で、何が言いたいかと言うと

“優れた建築家は同じことを繰り返すことを恐れない”

と言うこと

新しいことをしようとするあまり、奇抜な路線に邁進してしまう建築家がいる一方で、基本に忠実に最適なデザインを何度でも繰り返すのが優れた建築家だ

ある建築で体験したことを、別の建築で採用したとしても、同じことをしたと思っているのは設計した本人だけで、そこを訪れる人からしたらはじめての経験であることを忘れてはいけない

同じことを繰り返してはいけないと言うのは建築家のエゴであり、業界内の外野のヤジであって、一般の純粋にそこを訪れる人には知ったこっちゃないことなのである

もちろん同じ手法であっても優れた建築家は、その場所、その用途によって寸法や色味など微調整は欠かさない
だからこそ恐れずに同じことを繰り返すことができるのだ


また建築家は他の優れた建築家のデザインを真似ることを恐れる必要はないように思う
むしろドンドン真似るべきである
表層をペロッと舐めた程度のモノマネは、つまらないものになってしまうが、しっかりと考えて応用することは決して悪いことではない
真似てはいけないと言う先入観をなくして、良いものは良いものとしてそれが広まれば建築の質も上がるはずである

建築家は、自らの建築が世の中のためになるようなデザインとなるように設計しているはずである

ならばもっと真似ることはその建築家にとっては喜ばしいことだろう

繰り返すことを恐れずに、良いものはしっかり学んで真似る

これでいいと思う!

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