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スティーヴン・キングの中編集「恐怖の四季」について

 Different Seasons


 先日、地上波で映画「スタンド・バイ・ミー」が放送されていて、懐かしかったので、原作の方を紹介したいと思います。


 原作はスティーヴン・キングの『The Body
 1982年に発表した中編集「Different Seasons」の中の一篇です。

 今でこそ、キングの小説をたくさん読んでる自分なのですが、読み始める前のスティーヴン・キングのイメージは

① ホラーの帝王(怖い)
② 厚い(長い)本が多い
③ そもそも作品数が多すぎる

 と、いった感じで、面白いんだと思うのですが、手を出すには勇気が必要な状況だったのです。

 でも、安心してください!

 そんな当時の私と同じようなイメージを持たれてる方にとって、この中編集「Different Seasons」は、最初に読むキングとしては最適な本なのです。

 ということで、今回は、この「Different Seasons」について ”note” していきたいと思います。


■ □ ■ 中編集「恐怖の四季」 ■ □ ■


 「Different Seasons」は、日本では「恐怖の四季」と題し、収められた4編を春夏編と秋冬編に分けて1987~1988年に刊行されました。
 まあ、”恐怖の” と題されていますが、気味の悪い部分はあっても、決してホラーではありません。

 ホラーの帝王と呼ばれていたキングの小説なので、本来「それぞれの異なる季節」みたいに訳すべき原題を、大人の事情で変更しただけと思われます。
 なので、ホラーが苦手な方も、安心して手に取ることができるのです。

 本来は、春→夏→秋→冬の順なので、春夏編が先なんですが、映画「スタンド・バイ・ミー(1986)」が話題になったこともあって、日本では原作の含まれる秋冬編から刊行されました。(これも大人の事情です。)
 どちらから読んでも差し支えありませんが、原著の順番で読みたい方は春夏編から読まれることをお薦めします。


 では、収録されている4編を紹介していきます。


〜春は希望の泉〜

『刑務所のリタ・ヘイワース』

 Rita Hayworth and Shawshank Redemption (Hope Springs Eternal)

 無実を主張しながらも、妻とその愛人を殺した罪で刑務所入りしたやり手銀行員アンディ。刑務所内でも、腐らず職員の確定申告など合法的な節税方法を教えたりしながら、独自のポジションを築き、刑務官や囚人たちと交流を深めていた。
 やがて、アンディはさらなる奇跡を起こすことになるのだが____

 タイトルの ”刑務所” について、原題には ”ショーシャンク” とあります。
 これは、キングの小説によく出てくる ”ショーシャンク刑務所” を表わしているのです。
 映画好きの方なら気づかれると思いますが、この中編は、映画『ショーシャンクの空に』の原作だったりするのです。

 大人の事情的に言うなら、映画は1994年なんで、もう少し早く映画化されていたら同じタイトルになっていたかもしれませんね。

 キング原作映画の中でも傑作とされる『ショーシャンクの空に』ですが、原作の方も傑作なのです。


〜転落の夏〜

『ゴールデンボーイ』

 Apt Pupil (Summer of Corruption)

 明るい性格の頭の良い高校生だったトッドは、ある日、古い印刷物で、町に住む老人がナチ戦犯であることに気づく。正義感から、昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い始める…

 原題の ”Apt Pupil” は”優等生”みたいな意味なのですが、”ゴールデンボーイ”というタイトルになっています。

 実は、この中編が、一番、気味の悪い物語かもしれません。ただ、読み始めたら、ぐいぐい引き込まれていくとこは、ある意味、キングらしい仕上がりの中編になっています。
 少しずつ、落ちていく主人公の結末がどうなっていくのか、そこはサスペンスたっぷりなんですよね。

 ちなみに、この中編も、同じタイトルで映画化されていますが、まあ、興味のある方はどうぞ... ぐらいの出来栄えで、原作の方が数倍面白いです。


〜秋の目覚め〜

『スタンド・バイ・ミー』

 The Body (Fall From Innocence)

 森の奥に子供の死体がある──噂を聞いた4人は死体探しの旅に出た。もう子供ではない、でもまだ大人にも成りきれない少年たちの冒険が終ったとき、彼らの無邪気な時代も終ったのだった……。

 ”秋の目覚め” という副題が付けられた中編のタイトルは『The Body』。
 訳すれば、森の奥にある子どもの『死体』を指しているタイトルです。
 これを映画に合わせて『スタンド・バイ・ミー』というタイトルに変更したわけなんですが、個人的には意味は図りづらいけど『スタンド・バイ・ミー』ってタイトルで良かったと思っています。(『死体』ってタイトルはストレートすぎますよね)
 映画では遠回しなんですが、4人の子どもたちの背負っていたものは、それなりに重たいんですよね。それがあるから、ラストがシミジミするのです。

 また、この物語は、”キャッスルロック” という、キング小説ではお馴染みの架空の町が舞台となっていて、映画ではキーファー・サザーランドが演じた不良役の ”エース” なんかも、”キャッスルロック” を舞台とした別の小説で登場してくれます。


〜冬の物語〜

『マンハッタンの奇譚クラブ』

 The Breathing Method (A Winter's Tale)

 年老いた医師エムリン・マッキャロンは彼の若かりし頃のとあるエピソードについて話しはじめる。それは経済的問題、社会的非難にも関わらず非嫡出子を出産することを決意したある妊婦の話であった 

    収められている4篇の中では、一番、地味な作品なのですが、唯一、スーパーナチュラルな現象の出てくる話です。

    奇譚とついているので、怪談っぽい話なのですが、根底にあるのは、人間の思い、母の強さなのです。

   何年か前に映画化の話が出てたんですが、その後、どうなったんでしょうね。(知ってる人がいたら教えてほしい💦)


*


     と、以上の4編なのですが、名作映画「ショーシャンクの空に」と「スタンド・バイ・ミー」の原作も収録されているし、分冊なんで、片方から(または、片方だけ)読むのもよし!  と、言うことなしの中編集なので、スティーヴン・キング未体験の人にもお薦めなのです!



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