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#07 どんな過去の出来事も今の問題に紐づけられる - 解決志向アプローチ -

この記事では「解決志向アプローチ」の考え方について、一緒に学んでいきたいと思います。数回に分けて書いていきますが、前回は「問題の原因に囚われない力 (Problem Disengagement)」を身に付けるために「原因追及しても意味がなかった」「問題の原因とは全く違うところに解決があった」という事例にいっぱい触れていこうというお話でした。

今回も「原因を追及しても、あんまり意味ないな」と思えるようになるために知っておくとちょっぴり役立つことを一緒に学んでいきたいと思います。


人は今の問題と過去の出来事を紐付けたがる

僕たちは問題を抱えているとき、「なんでこうなってしまったのか?」と過去の原因ばかりを追及したくなる生き物です。そして、「あっ、これかもしれない」「いや、これかもしれない」と幼少期の辛い経験から最近あった嫌な出来事まで、今の問題と全て関係付けて説明しようと試みます。

「今、自分が内気な性格なのは、小さい時にいじめられたから」
「今、彼女とうまくいかないのは、これまで経験人数が少ないから」
「今、うつになったのは、幼少期に親に甘えることができなかったから」

などなど、過去を振り返ると結構、それっぽく理に叶うような「原因」を見つけて説明ができてしまいます。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

小さい頃にいじめを受けた人が皆、内気になるのでしょうか?
経験人数が少ない人は皆、彼女とうまくいっていないんでしょうか?
幼少期に甘えることができない人は皆、うつになるんでしょうか?

人間は「関係づけ」の名人である

僕たちは、今、うまく行っていないと、過去に目を向け、つじつまが合うような原因を見つけて説明しようとします。白か黒かと説明できるとスッキリします。モヤモヤな状態は脳がいっぱい働かないといけないから嫌なんです。もういっそのこと、「それで説明できるからいいじゃん」と思いたくなるんですが、過去の出来事の被害者にならないためにも、一点、知っておいてほしい人間ならではの特徴があるんです。

それは、僕たち人間は、「関係付けの名人」であるということ。僕たちは言葉を用いて、全く関係ないものでも関係づける力をもっています。

例えば、適当に例を挙げてみると、、、

「パソコンのマウス」と「ボールペン」ってどんな繋がりがあると思いますか?どんな状況で一緒に使いますか?

おそらく、「仕事で使うもの」等、なにかしら関係付けることができるんじゃないでしょうか。

では、「ボールペン」と「アイスコーヒー」はどうでしょう?

例えば、カフェでメモを取っているような状況で一緒に使ってそうな光景を思い浮かべた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?

それでは、「アイスコーヒー」と「サボテン」は?

いきなり、「サボテン?」と思われた方もいらっしゃるかと思いますが、例えば、「カフェの植木鉢にサボテンがあり・・・」みたいなイメージを思い浮かべた方もいるかと思いますし、因みに僕は、コーヒーはコスタリカなどの中米で採れて、サボテンはメキシコにありそうなイメージだから、「二つとも中米にある」みたいな感じで繋げることができました。

これ、一見、「確かに繋がりあるね!」と思いますよね?でも、ぶっちゃけ「アイスコーヒー」と「サボテン」なんて全く関係ありません。そうなんです、僕たち人間はこんなデタラメなものでも関係付けちゃうことができるんです。

どんな過去の出来事でも今の問題と紐付けることができる

人間にはこのような特性があるため、僕たちは「今の問題」に対して「過去のネガティブな出来事」が例え関係ないことでも繋げちゃうことができます。(これを「関係フレーム理論 (Relational Frame Theory)」と呼びます)しかも、過去の出来事って、もはや記憶であり、本当に正確なものかどうかも分かりません。

人の記憶も確かなものかどうかわからない。
関係ないことでもつじつまが合うように関係づけることができる。

僕はこのことを知ってから、今の問題を過去の様々な出来事に結びつけて、「今の問題を解決するためには、まずは過去の原因を特定して・・・」という当たり前のようにやっていたアプローチに違和感をもつようになりました。そして、「原因追及しても意味ないかも」と思うようになってきたのです。

勿論、過去に経験したネガティブな出来事が今に影響している可能性もあります。しかし、それが僕たちの人生を決定づけるものではありません。

No matter how terrible the trauma is, it is not the only significant experience in the client’s life. If we respond as if it is, the client becomes the victim of our treatment and the traumatic event. - Yvonne Dolan
トラウマ的な出来事がどれだけ悲惨であろうと、それだけがクライアントの人生において重要な経験ではない。もし我々がその出来事をそう扱ってしまったら、クライアントは我々の治療とトラウマ的な出来事の被害者になってしまうだろう。

もし、皆さんが今、問題を抱えていて、「原因は過去のあれだ」と分かっている。でも、「わかったところで、どうすることもできない」といったような状況でしたら、ぜひ、一旦、このつじつまが合うように関係付けた「繋がり」を、少し疑ってみてほしいなと思います。また、ぜひ、他の出来事とも色々、関係付けてみてほしいなと思います。もしかしたら、「原因ってなんなの?」「ああ、もう、わかんなくなってきた」「原因追及って意味ないかも」と思えてくるかもしれません。

最後に、

「フィリピン」と「緑茶」ってどんな繋がりがありますか?

これに答えられたら、あなたはどんな出来事でも関係付けることができるでしょう。

ここでは、「解決構築」のプロセスに必要な「問題の原因に囚われない力」を養うために、人間は無関係なものでも関係づけることができるという特性について学んできました。本記事と前回の記事を通して、「問題を追及しても意味ないかも」という考えがちょっとでも自然なものになっていたら嬉しいです。次回は「自分の強みやリソースに気づき、それを活かす力 (Resource Activation)」について、一緒に学んでいきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
Barnes-Holmes, Y., Hayes, S. C., Barnes-Holmes, D., & Roche, B. (2001). Relational frame theory: a post-Skinnerian account of human language and cognition. Advances in child development and behavior, 28, 101–138.

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