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「よさそう」から「絶対いい」 にするための価値検証

2019年1月23日のUX JAM 28 新年会スペシャルのLTで発表した内容を公開します。

当日の様子

— 以外発表内容 —

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こんにちは、佐野大河といいます。クックパッドでデザイナーをやっています。2017年に新卒入社し、今は投稿開発部という部署でクックパッドのレシピ投稿周りのサービス開発を担当しています。

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さっそくですが、2018年の2月に「クックパッドMYキッチン」というアプリをリリースしました。ユーザー数を増やそうとPRしているものではないのであまり認知されていないと思いますが、こちらはレシピ投稿者向けにクックパッドの体験をリデザインしたアプリになっています。

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基本的にはみなさんがよく知るクックパッドアプリと同じような機能を持っているのですが、主にレシピを書いて投稿するユーザー向けの改善や新機能を試すことを目的とした、いわゆるBetaアプリのようなものです。

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ではなぜこのようなものを作ったのかについてお話します。

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よくあるサービス開発のフローとして、何かしら企画等アイデアを思いついたらモックなどを作って試し、そこで良さそうとなれば実際に動くもの目指して開発、みたいな流れがあると思いますが、この「良さそう」から、開発して検証するまで多くのハードルがあると思います。

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一部機能を変更するだけでも、他の機能への影響はないかとか、入会数は減らないかとか、大胆なアイデアだったり大規模なサービスであればあるほど多くのことを検討しなければなりません。

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で、長期間を経てリリースしたけど「ダメそう」なんてことも全然あります。

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そこで、開発と検証のスピードを上げるためにクックパッドアプリから切り離し、少人数で意思決定を早くできるように。また、一部機能的な制約を受け入れる代わりに実装を早くできる環境を整えました。

具体的にはフレームワークにReactNativeを用いて(技術的なことは割愛しますが)Reactの知見でアプリ開発ができるというのと、UIの実装に関してはマークアップの記法に似ているというのもありデザイナーでも比較的手を加えやすく、ネイティブ開発に比べればかなりプロトタイピングの敷居が低くなります。

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ではこのアプリを使ってどのような改善を行なったのか一部紹介します。

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まず一つ目として、アプリ全体の構造を変えてみました。今のクックパッドアプリは主にレシピを探しにくる人向けの機能が表に現れ投稿者向けの機能の多くが奥まった箇所にあるのですが、これを、アプリ全体を2つのモードに分けて、左下のボタンで切り替えられるようにし、片方を自分の投稿コンテンツに集中できる場にすることで、レシピ投稿者はよりアプリを使いたくなるのではという考えから、実装しリリースしました。

こういった、いざ本番で行うにはリスクが大きい大胆は検証でも、ガッと作って実際のユーザーに当てることができました。

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他にもちょっとしたデザインやレイアウトを変えて試してみたいとき、デザイナーがコードを修正してそのままデプロイすることもしました。例えばレシピの詳細画面のデザインをこのように変えてみたりしました。

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また、codepushという仕組みを使って、slackからコマンドを叩けばストアの審査を待たずとも変更が反映される環境をチームの強いエンジニアが整えてくれて、新しいデザインをその日の夜から実際に使ってみる、なんてこともできました。

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(こちら公開されていないものなのでモザイクがかかっていますが)既存機能の改善だけじゃなく、新機能の追加を試すこともしました。

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こういった改善を素早く試せるようになったことと合わせて検証の精度も上がりました。例えば、改善した機能を実際に使ってみた人をインタビューに呼ぶことで、実体験に基づくエピソードを聞くことができました。通常開発中のプロトタイプをユーザーインタビューで当てるときは、その場で触ってもらい、そのときの反応や内容から判断するしかないのですが、実際に使いましたか?とか、使ったならそれはいつどういう状態だったのか?とか、想像ではなく事実を深ぼって聞くことができました。

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また、自分たちで日常使いすることで実体験をもとに課題や仮説を語れるようになりました。

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またこれは投稿周りの検証をしたいときのあるあるなのですが、自身の投稿コンテンツを扱いたいとき、静的なプロトタイプだと実感がしづらく想像で補完するのに限界があるのですが、こういった課題も解消されました。

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そういった感じで、アイデアを思いついて「よさそう」となってから「絶対いい」あるいは「やっぱだめそう」という判断を素早くできるようになりました。

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良かった点ばかり述べましたがもちろんデメリットもあり、開発環境の整備、学習コスト、ユーザー集めなど、初期段階の頑張りは必要です。また、検証の目的やフェーズに合わせた選択が大事で、実際に動かせずとも静的なモックで足りたり、そもそもアプリ以外で検証できる場合もあるので、その見極めは必要です。

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このように、自分たちで実際に使ってみる、またはユーザーに実際に使ってもらうことでアイデアの良し悪しに確信が持てるようになります。今回のやり方はあくまで一例で、何もフルスクラッチでベータアプリを実装するまでいかなくても、アイデアを素早く形にするための仕組みづくりが大事だと思っています。

ご静聴ありがとうございました。

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