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どんな楽しいこともやり逃さないって約束して〜「ピンヒールははかない」を読んで〜

佐久間裕美子の「ピンヒールははかない」を読んだ。著者がニューヨークでの生活の中で出会った人たちとの交流が描かれたエッセイで、本の中には実に波瀾万丈な人生をタフに生き抜いている女性たちが登場する。文章なのに女性たちがセリフを言うときの表情がカラーではっきりと浮かび上がってきた。ドラマみたいなセリフを堂々と言ってのけるから凄い。
NYって本当に憧れの場所だ。NYの女性ってだけでなんかもう凄そうだし、あそこにいりゃ自分の人生に刺激が多すぎて一皮も二皮も剥けそう。NYマジックって確実にあると思う。全ての言葉や言動がSEX AND THE CITYやプラダを着た悪魔に出てきそうに見えてしまう。

そんなことをずっと思っていた私は大学を卒業したらNYに移住しようとしていた。当時好きだった人に打ち明けたら
「どうせプラダを着た悪魔でも見たんでしょ?君には無理だと思う」
と一蹴された記憶がある。悲しかったがそれすらもNYに行くためのストーリーの一つだと受け入れて躍起になっていた。

結局、お金だの言葉の壁だのなんだのと色々理由をつけてNYには行かず喜多方に行ったわけだが、要はチキンだったのだ。

もし本当に行ったとしてもNYの波に飲まれてずっと宿泊先でマックのポテトでも食べながら頭を抱えていた気がする。

本では著者がNYでの生活を送る中で出会った人達とのエピソードが描かれている。NYの人達、特に女性達は、離婚や失恋、えげつないほどの悲しい出来事にも折り合いをつけながらタフに乗り越えている。NYフィルターがかかっているのもあって、とっても憧れる。こんな女になりたいと思う。

中でもこのnoteのタイトル「どんな楽しいこともやり逃さないって約束して」は著者の元ダンナのお母さんが癌で死ぬ前に著者との最後の会話で発した言葉である。

「Promise me not to miss out on any fun」

きっとこの言葉がなかったらこの本はできなかっただろうし、わたしはこの言葉に出会えなかった。

NYはやっぱりカッコよくて粋な女性に溢れている。

わたしはこの本を読んでかつてNYに憧れていた自分のことを思い出すことができたし、

やっぱりNYに行きたいと思った。

例え、そこが自分の期待通りの場所でなくても構わない。

プラダを着た悪魔の世界に憧れたという薄い理由を恥じたくない。

言いたい奴には言わせておけばいい。

NYに行くこと。

書くことでお金を稼ぎ続けること。

この世に自分を愛せる人を増やすこと。

部屋にピンクの薔薇の花を飾ること。

どんな楽しいこともやり逃さない。

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