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鼻先が冷え紅葉する葉に包まれる頃に思い出すこと

今の恋人と初めて手を繋いだ日のこと覚えてますか?
わたしは今の恋人と初めて手を繋いだ日のことをとても良く覚えています。
秋から冬に変わる頃の奈良の若草山を登っておりてきたあと、人気がなく鹿たちが集まっている場所があるんですけど、そこで初めて突然手が繋がれました。彼が話してることなどはふよふよと宙を舞い、わたしの体は心臓そのものになりドキドキと脈を打ちながらただただだんまりとして通り過ぎる鹿たちを眺め歩きました。
そのあと手が繋がれたのと同じくらい文字通り突然に、手を振り解かれてびっくりしました。ショックを受けてびっくりすることくらいしかできませんでした。静かに解かれるのかと思っていたら振り解かれたので、どうしてそんなふうに手を離すの?と暗くなった道とまだ交際していない当時のわたしと彼をオレンジ色の街灯がぼんやりと揺れるわたしたちを照らしてくれました。
このときかなしくなったこともドキドキしたことと同じくらい覚えてます。きっと彼は覚えていないでしょうね。「きみはぼくが覚えてないことたくさん覚えているね」なんて言うのでしょう。
あなた、わたしが流星群の夜になる度に夜道を散歩して流れ星を探して見つけては何度も願うほどの人だったんですよ、そりゃあ覚えてますよ。そんなふうに片想いしたこと、初めてだったのでね。

これから好きなひとと初めて手を繋ぐ予定の人はどんなふうに手を繋ぐんだろうね、たのしみだね。『どきどきと ちょこっとかなしみ ひとつまみ、混ぜられたなら あなたの勝ちね』

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