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【MR】『竜とそばかすの姫』が想像以上に良かった話

 先日、細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』を観てきた。


 彼の作品は表情豊かなキャラクターや美しい背景描写が魅力的で、今作もとても楽しみにしていた。とはいえ、前作『未来のミライ』は正直面白いと言えるものではなかったので、期待値は最高潮というわけではなかった。

 しかし『竜とそばかすの姫』は最高としか言えない。これから細田作品でどれが一番好きかと聞かれたら『竜とそばかすの姫』と答えるであろう。不動の一位であった『おおかみこどもの雨と雪』がついに二位に転落した。


 さて、ここからはネタバレを含みながら「ここが最高だった!」と思えるところを紹介していきたい。まだ観ておらずネタバレを見たくない方はブラウザバックをお願いしたい。


アバン

 「ようこそUの世界へ」
 OZを彷彿とさせる冒頭だが、同時にmillennium parade×Belleの『U』が大音量で流れ始め、一気に自分たちもUの世界に惹き込まれる。

 そして、クジラに乗ったBelleが登場。

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 まずこのクジラ! デザインが最高過ぎる!

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 今回の画像は全て『U』のミュージック・ビデオからスクショしているのだが、残念ながら目的のクジラが綺麗に写っているシーンがあまりなかった。自分の言葉で補完していけたらなと思う。

 このクジラはおそらくザトウクジラなのだろうが、ザトウクジラって背中にぼこぼこみたいなのがあるのは皆さんも知っていると思う(ぼこぼこの名前は知らない)。そのぼこぼこがなんと巨大なステレオになっているのだ!! あまりにもカッコ良すぎるデザインだと思う!

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 次にクジラに乗ってるこのBelleの衣装!
 めちゃくちゃこの赤いドレスの衣装のデザイン好き。めちゃくちゃ性癖に刺さる。

 Belleは歌姫として今作の中で何度も色んな衣装の姿で登場するが、この衣装が群を抜いて好き。とにかく好き。

 今、ドレスを着るキャラクターが出る物語を書いているのだが、この衣装を着せたいと思ってしまった。

 好き。

 (好きしか言ってない)

鈴の家のシーン

 母親を水難事故で亡くしたBelleこと鈴は心を閉ざしてしまっているわけだが、その『失った母親』という欠けた心を欠けたコップや片脚のない犬などで表現されていた。ちょっと露骨な気がしなくもなかったが、案外このくらいわかりやすい方がいいのかもと好印象だった。


美女と野獣

 既に観た方はもうどのシーンかわかるだろう。
 どう見てもあの名作のあの名シーンにしか見えないこのシーン。

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 きっとパクリだなんだという批判が多いのだろうが、それは一旦置いて映像が美しい。とにかく綺麗。この竜とBelleが一緒に踊るシーンが一番好きだ。

 オマージュという言葉は便利すぎるので使いたくない。

 けどパクリにしてはあまりにも『美女と野獣』とわかる。竜でありながら作中で彼が『The Beast』と表記されているあたり、パクリでもオマージュでもなく、明らかな意識が洗わされている。もしかしたら根底に『美女と野獣』の物語があるかもしれない。ヒロインは「ベル」だし。


 竜のお城のデザインもとんでもなく好きだが、城の特にどこが好きかというとこの薔薇。

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赤、白、青の薔薇。

 Belleの名前がフランス語で「美しい」という意味から名付けられているあたり、フランスを意識してるのかなとも感じた。「美女と野獣」の舞台もフランスだったはずだし、間違いなく意識してると思う。


追記:公式Twitterで「美女と野獣」への尊敬の念があると明かされてました。

Belleの名前

 Belleの名前の話題が出たのでついでに語りたい。

 主人公の本名は「鈴」なのでユーザーネームは「ベル」なのかと思っていたが、よくよく考えたらベルの綴りはBellだ。

 しかしそこは劇中で説明がなされた。

 正しく音楽を学んできていないが故に曲に粗がある→不完全
 しかし魅力的で美しい。


完璧な状態(スペル)Bellではなく、余計なもの(欠陥)eがあるが美しい(Belle)と。


 いやあすげええええっ。よく考えられてる、と大興奮。

作品を彩る美しい音楽

 歌姫が主人公なだけあって、劇中歌が多かった本作。

 オープニング曲『U』、メインテーマ『はなればなれの君へ』はもちろん、やはり美女と野獣のシーンの『心のそばに』が好きだ。

 これは語るよりももう劇場で聞いてほしい……。

 もし行けないならストーリーを把握した上で曲だけでも聞いてほしい……。

AI

 竜の城ではAIたちが竜に仕えているのだが、そのAIたちは後半であっけなくやられてしまい「所詮はAIだ」と吐き捨てられる。

 細田守作品のAIと言えば『サマーウォーズ』のラスボスLOVEマシーンだが、かつては強敵として描かれたAIが今回はモブ扱いされているのはAIが日常生活に浸透してきたことを示しているのかなとも思った。

果てして『竜そば』のテーマとは

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 鑑賞前はやはりSNSの闇や匿名性をテーマにしているのかと思っていたが、おそらくこれはサブテーマだったようだ。

 舞台がSNS世界なだけでメインテーマは心に穴を持つ主人公・鈴がその穴を埋め自分に自信を持っていくところだと思う。

 『U』がその人の内に秘めてるものを引き出すというSNSなので、塞ぎ込んでいた鈴を世界へ引っ張り出すという感じだろうか。

 竜も竜で傷を抱えており、鈴の鏡のような描写をされており、全体的にわかりやすいテーマだった。

最後に気になったところ

 キャラは立っているものの、脇役が脇役過ぎる。

 鈴の家族への深掘りがあまりされなかった。お母さんが大事な役を担っているにも関わらず、描写が少なく感じた。

  あと、竜が竜に見えない。野獣。Beast。

 最後に竜がどうなったのか。ラストシーンからしてBelleが竜をサポートし、竜も不条理な世界に立ち向かおうとしているのだが、アンヴェイルされたのか否かなどが不明瞭だった。ここは別に受け手の想像に任せると言う演出ならそれはそれでいいのだが。

 小説版には劇中になかったシーンも含まれているらしいので、読んでみたらそこらの疑問も解決できるかもしれない。





 とにかく最高な映画だった。なんならもう一回観に行きたい。

 そしてBelleにライブをやってほしい。

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