雲隠れ
そんな術式は
とうに忘れ
それでもどろんと
不意になくなる
姿形をそのままに残し
こちらからあちらへ
物干し竿で渡り
円弧を得る
不時着だとしても
そこにはふくよかな地面があり
穴を掘れば
また隠れることもできる
少し休んだらいい
そのうち元気になるとして
甘い夢でも見ておこう
忘れたわたしを
どこかから探し
結晶化させ紅をうつす

袖を通し
吊るされた分身
よく風になびくから
さぞかし気持ちいいだろう
よく晴れた日のこと
飛ばされそうな時もあって
何だかそこに居たそうな時もあって
仮姿としてそこに附置し
弥次郎兵衛とか案山子とか
現身のそれぞれが
起点を軸に回っている
よくぶつかるが
大抵は大まかに流れ
それなりの解決策で
事なきを得る
はてあのこけしはどこにと
ふと思い出すのは
いつの日か
ありそうもないその日常

ころころ転がり
ぽとんと落ちる
塞がれていない穴を
誰かが埋める
転ばないように
落ちないように
それなりの仕事を済ませ
あとはこっちのもの
まままらない足元でも
その一歩で見渡すのは
現世かそれ以外か
範疇を延ばし
遠心の力で
繋ぎ止める
手放したらいいものの
どれを離せばいいのか
回転の展開で
繰り広げられる偽劇の訓練
土竜も新しいひかりを見つめている