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スクワットで鍛えられる筋肉や膝の痛みなどに対する考察(後編)

前回に続き今回では膝の痛みなどに対する考察と対策について解説をします。今回も長くなりますがもう少々お付き合い下さい。

解説前に注意事項

早速解説に移…る前に、注意事項だけあります。

それは僕たちが口出しを出来るのはあくまで筋肉を原因とするコリや疲れ、痛みなどの症状に対してのみであるということです。

というのも、今回解説する膝についてもそうなのですが、例えば靭帯の損傷や骨折などは専門外であり、そのような大きな怪我を現在も治療されている場合は医師の診察に従ってください

また、あくまで個人的な経験や知識での見解もあり、例えば実際にお会いして、

その症状がどのようなタイミングで何をしたときにどこが痛むのか?おそらくこの筋肉が硬くなっているから靭帯(あるいは腱)が骨と干渉して痛みを起こしているのではないか?ではここの筋肉をストレッチや筋膜リリースをして改善するかやってみよう。

といった具合に実際のセッションで改善に繋げていくならともかく、あくまで膝の症例に対する考察とアプローチしか出来ません。

さて、前置きが長くなりましたが解説を始めていきます。

膝の症状について

ではまずは代表的なものから、膝の症状の代表的なものに膝前面のジャンパー膝、外側のランナー膝、内側の鵞足炎等があります。

1つずつ説明していきましょう。まずはジャンパー膝についてです。

ジャンパー膝

その名の通りバレーボールなどのジャンプを行う頻度の高い競技者に多く現れやすい症状です。

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骨と靭帯を除く大腿四頭筋以外を非表示にした3D画像。真正面を通過する腱と靭帯に主に症状が現れる。

これは膝蓋靭帯炎(しつがいじんたいえん)大腿四頭筋腱炎膝蓋腱炎(しつがいけんえん)の総称でもあり、それぞれ膝前面でも症状の発生箇所が異なってきます。

ただこれらで基本的に共通するのがオーバーユースによる炎症です。頻繁に膝を屈伸させる為にこれら靭帯への負担が過大になっていくためですね。

基本的にスポーツ中に痛みなどは感じてもパフォーマンスに支障が出ないレベルであれば、ウォーミングアップとケアを行う事で対処できますが、動作中、あるいは常日頃から痛みを伴い運動に支障が出るレベルであれば、悪化を避けるためケアを行い安静にするべきです。

これはこの部位に限らず例えばBeatSaberのプレイヤーではよく散見される手首の腱鞘炎などでも同様です。致命的な損傷をしてしまわないよう、何度も言いますがケアを施し安静にしましょう

少し話が反れましたが解説に戻ります、このジャンパー膝の方はおおよそ前回の記事で說明した大腿四頭筋が固くなっていることが殆どです。

この筋肉は膝を伸ばす動作の主力筋であり、例えば階段を登る際や名前通りジャンプ時に膝を瞬発的に伸ばしたり、スクワットの挙上動作時でも強く働きます。

筋肉は基本的に適度に動かさないと次第に衰え固くなっていきますが、筋トレやスポーツなどで酷使しても固くなっていきます。運動後のストレッチなどのケアが推奨されているのは、疲労を残さない為の他にも酷使した筋肉が疲労して固くなるのを防ぎ柔軟性を損なわないようにするためという理由もあります。

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大腿四頭筋は4つの筋肉がそれぞれ膝前面の膝蓋腱外側側副靭帯内側側副靱帯に繋がり最終的に膝蓋骨下の膝蓋靭帯へと至るため、これらの筋肉が固くなる事でも膝前面の症状が現れる可能性もある。

膝前面の靱帯に付着する筋肉はこの大腿四頭筋のみの為、膝前面に動作中に痛みがある方はこの筋肉のストレッチやフォームローラーを用いた筋膜リリースでのケアを行いましょう。

また、スクワット動作のフォーム解説において絶対に膝を内側に入れないようにすると說明をしましたが、この内側側副靱帯が膝の捻れにより過剰に伸ばされることで痛めてしまうからです。

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スポーツなどで十字靱帯や半月板と合わせて損傷しやすい内側側副靱帯ですが、スクワットやジャンプ時にニーインしながら着地をしたりなどでも傷める危険があるため要注意!!

ストレッチの方法などに関しては後々動画で紹介をします。

ランナー膝(腸脛靭帯炎)

2つ目はランナー膝、またの名を腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)と呼ばれる症状についてです。名称通り、マラソンランナーなどに多く見られる症状です。

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青く表示しているのが腸脛靭帯大腿骨・外側上顆と呼ばれる、ももの骨の外側の出っ張り部分のすぐ横を通過し、すねの骨の外側の出っ張りの、脛骨・外側顆へと至る。

このランナー膝は上記の說明にある腸脛靭帯が、大腿骨・外側上顆と触れて擦れる事で痛みを伴う炎症を起こします。

そして、大腿四頭筋と同様にこの腸脛靭帯も大腿筋膜腸筋と呼ばれる筋肉がつながっているものである他、お尻の筋肉の大殿筋とも合流しています

これらの筋肉が固くなると当然密接に繋がるこの腸脛靭帯も引っ張られたゴムのように緊張して、その状態でランニングなどの膝を屈伸させる動きで腸脛靭帯の横にある大腿骨・外側上顆と擦れていく結果、炎症を起こすというメカニズムになります。

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上方から見下ろした3Dモデル。青く表示した腸脛靭帯が大腿骨の出っ張り(外側上顆)の直ぐ横を通過しているのが分かりやすい。

また、腸脛靭帯は大腿四頭筋の1つである外側広筋とも筋膜で繋がりをもちます。そのためこのランナー膝の症状のある方は、お尻の筋肉の大殿筋と大腿筋膜腸筋、大腿四頭筋の外側広筋をストレッチなどでケアをしましょう。

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青く表示した腸脛靭帯と繋がる大腿筋膜腸筋大殿筋外側広筋。これらが固くなることで腸脛靭帯は引っ張られ緊張すると考えられる。

固くなったこれらの筋肉を伸ばすなどケアをすることで、繋がりをもつ腸脛靭帯も緩みます。大腿四頭筋と共にこれらの筋肉もストレッチ等で緩めましょう。

鵞足炎

さて、最後に膝の内側にある靭帯である鵞足(がそく)と呼ばれる部位の炎症についてです。

これは鵞足が覆い被さる位置にある滑液包と呼ばれるものが炎症を起こす事で痛みなどの症状を伴うものです。

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画像中央の3つの筋肉の腱が覆い被さっているところに青く表示してあるのが鵞足包。この関節包がこの筋肉の腱が固くなり干渉することで炎症を起こす。

この鵞足炎は上記2つの炎症と少々違い、靭帯ではなく関節包に炎症を起こします。ただし、直接的な外傷や変形性膝関節症など以外の原因は、概ねこの覆いかぶさっている3つの筋肉の固さによるものが多く、それぞれの筋肉を

縫工筋(ほうこうきん)・薄筋(はっきん)・半腱様筋(はんけんようきん)

と呼びます。そして、これらの筋肉は停止(筋肉が骨や靱帯に付着する末端部分)は共通の場所ですが、反対に起始(筋肉の始まりが骨や靭帯に付着する部分)はまったく異なる位置についています。

つまり、それぞれの筋肉の走行と担う働きもまったく異なり、スポーツや日常生活でどの動作をしたときに痛みを伴うかが重要になると考えられます。

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 それぞれの筋肉の起始は縫工筋が身体の前面にある腸骨上前腸骨棘薄筋恥骨結合半腱様筋が後面の坐骨結節と呼ばれる箇所から始まります。

3Dモデルを見て分かるようにそれぞれ骨盤の異なる部位から始まるため、前述のように役割も異なります。

鵞足炎に対するアプローチはこの3つの筋のどれが影響を及ぼしているか(或いは複数)を探る必要があります。

まずこの3つの筋肉に共通する動作は膝を曲げる膝関節屈曲です。3つとも共同で働くためこの動作で仮に痛みが出る場合は3つとも炎症を起こしている原因の可能性があると考えられます。

ではそれぞれの筋肉の担う動作は?

まずは縫工筋ですが、この筋肉はももを挙げる股関節屈曲の他、股を外に開く股関節外旋、足を横に挙げる股関節外転の動作を担います。膝関節屈曲と合わせてこの動作を全て行うと、あぐらをかく姿勢になります。

つまり、仮にあぐらをかく姿勢で膝の内側が痛くなる場合、この筋肉の固さが原因であると考えられます。日頃あぐらをかく事が多い人は、ひょっとしたら鵞足が痛くなる事があるのかもしれませんね。

この筋肉は大腿四頭筋のストレッチを行うことでともに伸ばすことが出来ます。

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縫工筋︰あぐらをかく姿勢で最も働く筋肉であり、昔は縫工職人がこの姿勢で仕事をしていた事が多かった事が名前の由来とされる。人体最長の筋肉。

2つ目の薄筋は主に足を内側に閉じる股関節内転の働きを担う筋肉群である内転筋群の1つです。

あまり足を内側に閉じる動きを日常生活ですることはないかもしれませんが、サッカーのインサイドキックのような動作はももを僅かに挙げる動作と組み合わさってこの筋肉が強く働くと考えられ、この動作で鵞足が痛くなる場合はこの筋肉が原因であると考えられます。

ストレッチでは、膝を伸ばした開脚で伸ばすことが出来ますが、この筋肉が固い人は前述の鵞足付近に嫌な痛みを感じることがあります。

あまり強く伸ばさず出来れば毎日伸ばすなど頻度を多くして少しずつストレッチをしましょう。(これはどの部位でも言えることではありますが…)

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薄筋︰文字通り(長く)薄い筋肉。膝を伸ばした開脚のストレッチで効果的に伸ばせる。

最後は半腱様筋と呼ばれる筋肉です。この筋肉は腿裏の大腿二頭筋半膜様筋らと纏めてハムストリングスと呼ばれる筋肉です。

これら3つの筋肉が共同で主動筋となって足を後ろに伸ばす股関節伸展と、膝を曲げる膝関節屈曲の動作で主力筋として働きます。

また、半腱様筋は骨盤の後ろに位置する坐骨から膝の内側にかけて付着するため、ももを内側に捻る股関節内旋の動作を担います。

つまり、内股で足を後方に引きながら膝を曲げる動きをした際に鵞足が痛くなる場合は、この筋肉が原因である可能性があります。

この筋肉をストレッチで伸ばす場合、通常の前屈に足を少し外に開き膝を外側に向けて伸ばしましょう。裏腿の中央や外側より、内側に特に強い伸び感を感じるはずです。

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半腱様筋半膜様筋大腿二頭筋とともに裏腿の筋肉であるハムストリングスを形成する。

まとめ

さて、長くなりましたが今回のまとめに入ります。

ジャンパー膝膝前面の症状。ケアは大腿四頭筋のストレッチ、外側広筋と内側広筋はフォームローラーなどを用いた筋膜リリースでほぐしましょう。

ランナー膝膝の外側の症状。大殿筋と大腿筋膜腸筋のケアを行いましょう。大殿筋は伸ばしやすい筋肉ですが、大腿筋膜腸筋はセルフでは難しいためフォームローラーがあると効果的。

鵞足炎膝の内側の症状。3つの筋肉のどれか、或いはともに原因をもたらしている可能性がある。それぞれの筋肉が異なる動作を担うため、動作チェックを行った際、どの動作で痛みを伴うかで原因筋を探る事ができると言える。

とはいえいずれにしても3筋ともにケアをするに越したことはないため、縫工筋、薄筋、半腱様筋ともにストレッチで伸ばしやすいためしっかりケアをしましょう。

最後にもう1つだけ

最後に過去に膝の靭帯の損傷や断裂を経験し、その後治療によって完治されたものの、膝が弱くなっいる方についてです。

おそらくはかかりつけの先生から診察で何かしらの助言を頂いておられているかと思いますので、基本はその指示に従うようにしましょう。

ここからは僕個人の意見ですが、最初は素早い動きを伴う屈伸運動や過剰なウェイトトレーニングを避けて、スロースクワットなど動作がゆっくりで負荷をかけやすいトレーニングから始めます。

そして徐々にスピードを戻していき、ジムなどに通われているならば、ウェイトも無理のない範囲で少しずつ増やしていって筋力を強化していきましょう。

靭帯や腱などの結合組織は筋トレなどの筋肉の強化によってともに強化される説があり、また余談ですが骨は筋トレなどのメカニカルストレスによって強くなることが分かっております。

今回の記事でストレッチなどのケアがとても重要であることが分かっていただけたかと思いますが、同じぐらい筋トレなどの運動も重要です。

それとBeatSaberの話になりますが、譜面によっては素早いしゃがみ動作を要求されるため、膝に症状を抱えている方はハンディキャップで壁を消してプレイされる方もいるでしょう。

今回の記事でもしかしたら自分はこれかもしれない…、というものがあるけど確証が得ないや、何か疑問に思うことがあればコメントやTwitterの方でご質問をしていただければと思います。

とても長い記事となってしまいましたが以上で解説は終わりになります!それでは(*´艸`*)ノシ

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