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山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第12回

ブエノスディアス! 山本粧子です。

しばらくクリスマスと年末年始のお話が続きましたが、今回はミュージアムで食べるお昼ご飯(通称:ミュージアム飯)をレポートしたいと思います。

第8回で少し触れましたが、私が働いているパラカスミュージアムでは、まわりに店が何もない砂漠のど真ん中にあることもあって、事務所にあるキッチンでみんなで食事をつくり、みんなで一緒に食べるのが日課です。しかも、割とキッチリ作って、ガッツリ食べます。
ペルーのザ・家庭的な料理はほとんどここで把握できるんじゃないかなというくらい豊富なメニューのラインナップで、作り方も学べるので嬉しい環境であります。

ちっちゃいジャガイモ? オユコ

まずは、この写真をご覧ください!

是非ご紹介したいお野菜! こちら「オユコ(olluco)」というアンデス原産の根菜です。
一つの大きさは足の親指くらいという感じで、黄色やオレンジ色の皮にピンク色や紫色などの斑点が散りばめられた、カラフルで可愛い野菜です。

最初は 「オユコ」をジャガイモの小さいやつだと思いこんでいました。
というのもスーパーや市場では、ジャガイモエリアに置いてあるし、黄色っぽい皮にところどころ凹凸があって、どうみても小型のジャガイモって感じなのです。
しかし、どうやらジャガイモ(ナス科)ではなく、ツルムラサキ科のイモらしいです。
色鮮やかで、ジャガイモの小さい版みたいなのにジャガイモではないという「オユコ」は、私にとって最も気になる野菜だったのですが、どうやって食べるか謎な野菜ナンバーワンでもあり、自分では買ったことがありませんでした。
ある日ミュージアムの昼食で使うことになり、ついに口にする機会を得たのです。

細く切ってみると、野菜というよりもフルーツのようにみずみずしくフルーティーな香りがしました。やっぱり、根菜だから生のまま噛むとシャキッとしてました。
ただ、この小さいオユコを細かく切るのは面倒くさいため、市場で既に細かく切られたものがビニール袋に入って売っているのをよく見かけます。確かに下準備に時間がかかる野菜かもしれません。

市場ではこんな感じでカットされたものが袋に入って売られています。


オユコを使った煮込み料理、オユキート

この「オユコ」を使って作る料理が、オユキート(olluquito)というオユコの煮込みです。

レシピはこんな感じです。

①まずはオユコとジャガイモを拍子木切りに、玉ねぎはみじん切りにしま す
②玉ねぎ、ニンニク、胡椒をお鍋に入れて炒めます。
③ ①のお鍋にアヒパンカ(あまり辛くない唐辛子)ソースを加えてさらに炒めます。
④余分な水分が飛んだら、小さく切った鶏肉をお鍋に入れて炒めます。
⑤鶏肉にソースを絡ませある程度火が通ったら、オユコとジャガイモをお鍋に入れて混ぜ、
お水を入れてしばらく煮込みます。
⑥煮えるのを待っている間に、パセリを刻みます。
⑦ジャガイモに火が通ったら、味の素と塩で味付けをし、15分ほど煮込みます。
⑧最後にお鍋にパセリをぱらぱらっと振りかけます。
⑨大皿にオユコの煮込みと白米を盛り付けて、いざ食します!

このオユコ、結構白米がすすむんです。わたしが生活しているエリアは米が主食なので毎日米食なのですが、「これはちょっと米が進まないよ~」みたいな料理もぶっちゃけあります。
その点オユコの煮込みは白米と相性がいい料理だなあと思います。
(地域によってことなるペルーの主食については第3回で紹介しましたので、是非そちらもあわせてご覧ください)

アヒパンカ効果も絶大なのかもしれませんが、コクがあって異国情緒な味がやみつきになります。今回は鶏肉を使いましたが、牛でも豚でも美味しく、何のお肉を使っても良いそうです。
元々は、アルパカやリャマのお肉と食べられていたそうですが、この辺りでは鶏肉が一番ポピュラーだと同僚は言っていました。

さらにこの「オユコ」、スーパーフード説も。ジャガイモよりカロリーが低くて、ビタミンやミネラル、カロテンが豊富な非常にGOOD な野菜で、ニキビ改善にもなるとか。
日本でもぜひ入手できるようになってほしい野菜です。一瞬でバズりそうです(笑)

セコ・デ・ポヨを作ってみよう

日本ではなかなか見かけないオユコのレシピだけじゃちょっと誰得状態になってしまうので、もうひとつ、日本の食材で簡単に作れるジャガイモを使ったペルー料理を紹介します。

Seco de pollo(セコ・デ・ポヨ)は、鶏肉のコリアンダー煮込みで、ペルーやエクアドルで伝統的に食べられているそうです。
20世紀初頭、エクアドルで石油事業に従事していたイギリス人が、スープの次に提供される二番目の料理を「セカンド!」「セカンド!」と呼んでいるのをエクアドル人が聞き、この鶏肉の料理もセカンドだなと思い、「セカンド」から「セコ」へちょっと変形して、「セコ・デ・ポヨ」と名付けたという説があるそうです。
「セコ・デ・ポヨ」は直訳するとドライチキン(乾いた鶏肉)なので、正直、「全然乾いてないじゃん! どうしてこんなネーミングよ?」と思っていたのですが、こんな逸話がありました。

それではレシピの方にいきましょう。

①まずは鶏肉をぶつ切りにします。

余談ですが、パラカスではお肉が日本のスーパーのように部位ごとにきれいに切られてそのまま使えるような形では売っておらず、鶏もも肉は、もみじまでちゃんとついた、鶏の足そのまま状態で買います。

脚つきの鶏もも肉
丸鶏をこわごわ持ち上げる筆者

パラカスで生きていくには鶏のさばき方をマスターしないと鶏肉が食べられません(笑)

②ニンジンとジャガイモを適当な大きさに切り、玉ねぎはすりおろします。
また、コリアンダー(パクチー)をミキサーにかけ、ペースト状にしておきます。
③フライパンに油を注ぎ、鶏肉を揚げ焼きにしていきます。
焼きすぎると硬くなるため、軽く火が通ったらお皿へ一旦あげます。
④深めのお鍋に、鶏肉を焼いたあとの油を注ぎ、玉ねぎとニンニクパウダーを炒めます。
玉ねぎがあめ色になったら、コリアンダーペーストを加え、そこへクミンと塩と胡椒も入れます。
⑤火が通って緑色が鮮やかになってきたら、鶏肉とニンジンとお水をお鍋に入れ、
さらに5分ほど煮込みます。
⑥ジャガイモを鶏肉の上にかぶせる形でおき、さらに煮込みます。
今回はピンク色のジャガイモ、パパ・ロサーダ(papa rosada)を使いました。
⑦同僚のホセのレシピでは、ここで隠し味としてレモンをふたつ絞って加えます。
でも、別にレモンは必須ではないみたいです。さらに15分煮込みます。
⑧お米と一緒にお皿に盛り付けて完成です!

一言でいうとコリアンダー風味の鶏肉じゃがです。優しい味で、ほっこりする料理です。
元々は鶏肉ではなくヤギなどの肉を使っていたようです。こうしてペルー料理について調べてみると、鶏肉って案外モダンな食材なのか? と感じることが多々あります。

***

ここ数回はすっかりジャガイモから離れていたので、久しぶりにジャガイモ料理を紹介いたしました。

それではこの辺りでアディオス!

~編集Oが選ぶ今週の一枚~


〈プロフィール〉
山本粧子(やまもと・しょうこ)
神戸市生まれ。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻芸術学コース卒業。卒業後、国境の街に興味があったことと、中学生の頃から目指していた宝塚歌劇団の演出家になる夢を叶える修行のため、フランスのストラスブールに2年ほど滞在しながら、ヨーロッパの美術館や劇場を巡る。残念ながら宝塚歌劇団の演出家試験には落ち、イベントデザイン会社で7年半、ディレクターとして国内外のイベントに携わる。また、大学時代より人の顔をモチーフに油絵を描いており「人間とはなんだ」というタイトルで兵庫県立美術館原田の森ギャラリーや神戸アートビレッジセンターにて個展を開催。趣味は、旅行の計画を立てること。2016年からは韓国ドラマも欠かさず見ている。2023年秋より南米ペルーのイカ州パラカスに海外協力隊として滞在し、ペルーとジャガイモと人間について発信していく予定。