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名前貸します。⑤/全6話【創作台本・世にもになるまで書いてみた・102作目】

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○ 主人公の実家・和室

 主人公 土下座しながら懇願している。

主 お願いします! 俺の名前を変えて下さい!!

 主人公が頭を下げていたのは両親。
 母 かなり呆れた表情。
 父 腕を組んだまま険しい表情。

母 久しぶりに帰ってきたかと思えば、何を言ってんのこの子は・・・
  変えるわけ無いでしょ! 大体アンタって子は自分の名前を・・・
父 (重い口を開き)母さん。一度太郎と2人きりにさせてくれないか。
母 お父さん・・・
父 いいから。母さんは出なさい。
母 ・・・わかりましたよ。

 母 渋々和室から出て行く。

父 ・・・・・・まず、親に言うことがあるんじゃないのか?
主 ・・・・・・名前を雑に使ってごめんなさい。
父 (ため息)父さんも母さんも驚いたぞ。
  変な芸人のギャグになってたり、訳分からん歌手の曲になってたり、逮捕されてたり・・・
  事あるごとに息子の名前を目にする親の気持ちにもならんか。
主 ・・・はい。
父 で、改名させてくれと。
主 (再び頭を下げ)父さん! 
  「太郎」って名前だけでも変えて欲しいんだ!
  こんな特徴の無い名前なんてもううんざりなんだよ!
  だから・・・ 頼む・・・!! この通り・・・!!

 主人公 父に深々と頭を下げる。
 室内は重い空気。

父 (再び重い口を開く)・・・・・・なんで「太郎」って付けたかわかるか。
主 ・・・・・・わかりません。
父 そうか・・・ お前に話していなかったか。
  お前を「太郎」と名付けたのはな・・・

○ 産婦人科・病室

 約20年前。主人公誕生の数日後。
 両親 主人公の名前について話している。

母 ねぇ、この子の名前どうします?
父 ・・・・・・太郎。
母 え!? そんな昭和チックな名前・・・
父 いいんだ! 
  日本一多い名字に太郎だぞ!?
  すぐ覚えて貰える上に、親しみもある。だから「太郎」だ!
母 ・・・女の子ならどうしてたのですか?
父 そりゃ「花子」に決まってるだろう!
母 はぁ・・・
父 それに「太郎」には理由があってだな・・・

 父 「太郎」と名付けた理由を話し続ける。
 母 父の頑固さを知っていたのか、「太郎」と名付けられると勘づいた様子。そのまま父の話に耳を傾け続ける。

○ 主人公の実家・和室

 主人公 真剣に話を聞いていた。

父 いいか? お前の名前には色々な願いが込められているんだ。
  これを聞いても改名したいのならすればいい。どうする?

 主人公 心に響いたようで、何も言葉が出ない。

父 それともう一つ。
  確かに今の広まり方は良くない。俗に言う「悪名」になってしまった。
  だがな。今後の生き方しだいで、イメージなんていくらでも変えられるぞ。
  改名なんてバカなことは考えずに、自分の名前にもっと誇りを持て。
主 ・・・・・・はい。

 主人公 頭を下げたまま小さく頷く。目にはうっすらと涙を浮かべている。
 主人公のナレーション。

主 この瞬間から「サトウタロウ」という名前に誇りを持って生きることに決めた。
  どんな悪いイメージが付いたっていい。付いたなら俺が塗り替えてやる。そう心に誓った。
  そして時は流れ数十年後・・・


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