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矛盾することになぜ怒るのか? 【悩みをなくす論理思考2.0 第1章 part5】

これまでこのシリーズでは、「許せない」という怒りのストレスを避けるため、「〜であるべきだ」と自分が思っているのはなぜなのかを考え直す、ということをご提案してきました。

今までの内容を踏まえ、「許せない」例の1つとして、「矛盾していることを言っている人が許せない」というケースを今回は考えていきます。

相手の矛盾を直すためのポイント

「相手の言っていることが矛盾している」という状況になった時、たいていの人がイライラしたり、怒りを覚えたりします。その時に怒りに任せて文句をたくさん言ってしまうと、相手も感情的になり、結果的に解決しなくなってしまうことがあります。冷静に状況を分析してから対応していきましょう。

以前のnote記事(同じ状況に怒る人と怒らない人の違いは?)のように、事実判断「〜は事実である」当為判断「〜べきである」に分けて考えましょう。「相手の発言は矛盾している」が事実判断であり、「相手の発言は矛盾するべきではない」が当為判断です。

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当為判断「〜べきである」は、その人の価値観によってなされるものなので、人によって結果が異なり、ズレを直すのが難しい傾向にあります。そのため、当為判断ではなく、事実判断「〜という事実がある」の方からズレを直していきましょう。

矛盾を直すときに避けたいスタンス

「事実判断がズレている」ということは、あなたは「相手の発言は矛盾している」が事実だと思い、相手は「自分の発言は矛盾していない」が事実だと思っている、ということになります。

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この状況では、「自分の発言が矛盾している」ということを相手に気づいてもらう必要があります。その時、下記のようなスタンスを取るのは避けた方がよいです。

避けたいスタンス
・「矛盾は弱点である」
・「矛盾は間違いである」
・「矛盾を指摘することは正しい」

このようなスタンスで矛盾を指摘することを「論破」と呼ぶことがあります。このような「論破」は相手が不機嫌になり、逆に相手が矛盾を認めてくれなくなる可能性があります。あまり有効な手段ではありません。

「矛盾が弱点である」「矛盾は間違っている」「矛盾を指摘することは正しい」というスタンスは、どれも「相手が発言は矛盾するべきではない」という当為判断から生まれる考え方です。前述した通り、当為判断より事実判断を優先した方が良いため、このようなスタンスは取るべきではありません。

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「発言は矛盾するべきではない」という当為判断は、当たり前で疑う余地がないものだと感じる方も多いでしょう。多くの人がそう思っているので、「発言は矛盾するべきではない」は当たり前の常識として認めた方が良い、と思われるかもしれません。しかし、「矛盾すること」そのものは特に法律などで禁止されているわけではありません。「悪影響が何もない場合は、矛盾していても問題なし」とした方が、禁止事項を減らし、許容範囲が広くなり、ものごとをスムーズに進めることができるようになります。

例えば、「私はすべての魚が大嫌いであり、マグロは大好きである」という発言などは、「矛盾しているが悪影響がない場合」に該当します。この人と同じお店で食事することになっても、あなたはあなたの食べたいものを食べ、矛盾した発言をした人もその人自身で選んだものを食べることができます。あなたに対する悪影響は何もありません。

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どのような場合では矛盾が許容できて、どのような場合ではできないのかは、その矛盾の程度や、人の価値観によるところです。一概には言えず、ケースバイケースになります。

どのようなケースであっても、「矛盾するべきではない」という当為判断はなるべく避けて、「矛盾が弱点である」「矛盾は間違っている」「矛盾を指摘することは正しい」というスタンスは取らずに、事実の確認のみに集中するようにしましょう。

事実の確認方法

それでは、当為判断を避けて事実の確認を進めるには、どうしたらいいのでしょうか?

例えば、「上司の昨日の発言と今日の発言が矛盾している」というときには、「昨日の発言」と「今日の発言」が何であるか、というのが重要です。これを確認しましょう。「昨日は〇〇とおっしゃっていて、今日は△△とおっしゃっていましたが、どちらが良さそうでしょうか?」というような聞き方が好ましいです。「私の記憶違いだったら申し訳ないのですが」という言葉を前に付け足すともっと良いでしょう。

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この言い方の利点は、「昨日と今日で言っていることが違う」という事実についての確認をしながら、「そうであるべきではない」という当為判断を伝えずにすむことです。あくまでも「どういう聞き方だと事実をすんなり確認できるか」という観点が重要なので、「昨日の言ったことは何か」「今日言ったことは何か」「どちらかを選ぶとしたらどちらになるか」ということを聞きます。「矛盾が弱点である」「矛盾は間違っている」「矛盾を指摘することは正しい」というスタンスは含んでいません。

これはあくまでも「すぐに事実判断のズレを直す」ということを優先するための手段です。矛盾することにイライラしているあなたの気持ちは、この確認方法ではおさまらないかもしれません。

怒りを相手に伝えることは、ケンカのようになってしまいがちなので、できるだけ避けた方が良いです。ただ、だからといって我慢しすぎるのは、あなた自身の心の健康上の観点からは、良いことではありません。相手に文句を伝えることが許されるかどうかは、相手とあなたがどのような関係性にあるかによります。相手との距離感をうまく測りながら、適切に対応していただければと思います。

事実確認のみをして怒りを伝えない場合…
┗メリット
  物事を先に進めることができる
┗デメリット
  イライラは減らない
 
事実確認はせずに怒りを伝えるのみの場合…
┗メリット
  イライラが減る
┗デメリット
  相手も怒り出す可能性あり
  物事が先に進まない可能性あり

人には「矛盾に怒る」という性質がある

人には「矛盾に怒りや不快感を覚える」という性質があり、それは心理学で「認知的不協和」と呼ばれています。

認知的不協和は誰でも持っている性質ですが、強く感じる人もいれば、弱くしか感じない人もいます。認知的不協和の感じ方が弱い人は、矛盾に対しての怒りの感じ方も弱くなります。

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「あなたの言っていることは矛盾している!」と誰かに言われると、認知的不協和により、ムッとしてしまうものです。意図していなかったうっかりミスだと心の中では思っていても、ムッとしてしまって素直に謝る気分になれなくなってしまうこともあります。

「矛盾していることにイライラする」というのは、人の性質として、しかたのないことです。だからといって相手に「矛盾していてダメだ!」と感情的に怒りをぶつけてしまうと、相手の認知的不協和を呼び起こしてしまい、怒りが事実を隠そうとして、混乱を招いてしまうかもしれません。それであなたが困らなければそれでも良いですが、もしそれで困ることがあるなら、あなたのストレス軽減のためにも、怒りをガマンした方がいいかもしれません。

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他人の矛盾を発見したときや、自分がうっかり矛盾してしまったとき、人は認知的不協和によってイライラしますが、「ああ、今イライラしているのは認知的不協和のせいだ」と自分を客観的に見ることで、少しイライラを抑えることができるかと思います。

大事なのは矛盾を強い口調で直すことではなく、「その矛盾によってあなたの生活にどんな悪影響があるのか」ということです。悪影響がなければ、そもそも矛盾した状況を直す必要はありません。そのまま放っておきましょう。悪影響があれば、この記事の内容を参考に、解決をはかっていただければと思います。


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