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世界は、あなたの輪郭で出来ている。

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過去に、世界は二つ存在していた。
一つは、あなたが生まれる前の世界。もう一つは、あなたが生まれてから今に至るまでの世界。生まれる前の世界が、あなたにとって想像上のものだとしても、それは極めて現実的である。なぜなら、あなたという存在を産み落としたからである。

人は自分の存在証明を自ら行うことはできない。たとえ戸籍や身分を証明するものを持っていたとしても、それがあなたのものであることを100%証明できるとはかぎらない。

“この世に完全なものなど存在しない”という、数学者・ゲーデルが証明した「不完全性定理」によって、神の“不在”までもが証明されてしまったように、あなたの存在も文字や数字だけで表すことは不可能に近い。

あなたという存在を証明できる唯一確実的な方法は、あなたの“輪郭”を誰かに語ってもらうことである。

東日本大震災から10年が経とうとしている今も、まだ身元が特定できていない犠牲者の遺体が1月末時点で宮城県で6体、岩手県で48体もあるという。そんな胸が痛くなるような事実を突きつけられたとき、人は初めて自分という存在の輪郭を意識するのだと思う。

我々をいつも待ち受けているもの、それはあなたとわたしがこの瞬間、どんな魔法を使ってもノートに描けないものである。皮肉なことに、不完全性定理によって、未来の悲劇を躱(かわ)せる完全な教訓など存在しないということを我々は学んでしまっている。

けれども、それは“未来は過去を再現するために存在するものではない”とも解釈できる。二つの世界が過去に存在し、そして未来という三つ目の世界が存在する。

人は“なりたいような自分”にしかなれない。それは、望む未来ではなく“望む未来のあなた自身”である。その差は、砂粒と宇宙の大きさほど違う。なぜなら、前者にはあなたという輪郭が存在しないからである。

時間は常に未来から過去に流れていく。今晩の夕食も、未来に献立を投げ込むからこそ出来るのであり、たまたま買い物かごに入ったものだけで料理をつくることは難しい。できるかできないかの論争より、いかに美味しく、いかに楽しくいただくことが人生の醍醐味だとわたしは思う。

未来は明るい。もちろん、その未来はあなたがいる未来である。今日も、感謝と祈りを込めて。

2021年3月11日。

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