僕一人では何もできない

瀬戸内市役所に入庁して、最初の3年間は産業振興課で「鳥獣害対策」を担当しました。

「鳥獣害対策」は、イノシシやシカなどの野生動物からどのように田畑の農作物を守るのかを、住民や猟友会と一緒に考える仕事です。

瀬戸内市では、ここ数年のうちに、特にイノシシによる農作物被害が増加傾向にあって、最近では自動車などとの衝突事故も発生しています。



イノシシ対策は、「人里に寄せ付けない対策(里山・耕作放棄地の整備)」「田畑に入れない対策(防護柵の設置)」が基本で、それでも人里や田畑に執着するイノシシは「捕まえる対策(駆除)」を講じることになります。

イノシシの生態を知り、事前に正しく対策ができれば被害を防ぐことは可能ですが、なかなか農家の方々も被害に合うまで対策をしようとしてくれません。

なので、とにかく地域に出向いて、現地調査や出前講座を通して住民の方に正しい知識を伝えていこうと考えました。

僕が誰よりもイノシシ対策に詳しくなれば、瀬戸内市のイノシシ被害は収まる」と考えたのです。



僕は鳥獣害対策担当をしていた3年間で、「瀬戸内市で一番イノシシ対策に詳しい人」になれたと思います。

だけど、イノシシ被害は減るどころか、年々増えていきました。

どれだけ僕が詳しくなったところで、どれだけ僕が農家さんに知識を伝えたところで、実行に移してもらえなければ被害は収まりません。

また、多くの人が正しく対策していても、一部の人が畑に防護柵を設置していなかったり、収穫残渣を農地周辺に残していたりすると、集落へのイノシシの出没は収まりません。

集落みんなが正しい知識を持ち、みんなが足並みをそろえて対策を実行しなければ、被害はなかなか収まらないのです。

僕一人では何もできない」ということを痛感させられた3年間でした。




その後、危機管理課に異動となり、防災対策の担当となるのですが、鳥獣害対策担当の経験がとても活きていると感じています。

防災対策こそ、誰か一人が頑張っても救える命は限られています。

住民の方や様々な地域団体の方を巻き込み、「顔見える関係」を築きながら、お互いに知恵を出し合って地域防災力の向上を目指していければと思います。

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